乾燥剤の種類と特徴|乾燥剤の成分ごとのメリットとデメリット

2018年8月27日更新

乾燥剤には使用成分ごとにいくつかの種類がありますが、いずれも保管や輸送中の製品品質を安定・維持させるのに欠かせない資材のひとつです。使用目的は食品であったり、湿気に弱い工業製品であったり、防錆や吸湿が求められる製品であったりと多くの産業用途で使われています。

輸送期間が長く、気候のまったく違うエリア間で製品を移動させる貿易では、湿気にまつわる輸送トラブルは意外に多く発生します。曰く、自国の環境では品質に問題がなかったのに相手国に着荷してみたら製品が錆びていた、湿気に起因して品質が劣化していた等の問題です

 

ほとんどの海外取引では売る側が着荷するまでは品質劣化しないよう約束した品質を満たす製品を納入する義務がありますので、湿度変化が想定されていなかったとなれば輸送梱包上の問題であり、ゆゆしき事態です。

輸送中に他の資材と併用しつつ、適切な乾燥剤を用いることで錆などの被害や品質劣化の被害を防ぐことができるケースは意外に多くあります。ここではこうした際に活用できる乾燥剤の成分ごとに特徴とメリット、デメリットについて掘り下げていきます。

乾燥剤の使用環境

湿気を嫌う用途で製品を梱包・封入する際は、湿気、つまり水蒸気やガスなどを通しにくいバリア性能が優れており透過度の低い包装材料を使いますが、それでも完全に湿気の浸入を防ぐことは難しいケースが多々あります。というのも、よしんば製品をうまく包装したとしても、その中身に水蒸気がすでに入っていたり、包装フィルムや外装自体が完全に水蒸気を遮断できなければ、徐々に湿気が製品を蝕んでいくことになるからです。

乾燥剤とは、防湿包装された製品の品質を安定・維持させるために密閉空間で用いられることが原則となります。というのも、その主機能は「吸湿」といわれる湿気や水蒸気成分を吸着する性能となるためで、常時開放された環境で用いた場合、乾燥剤のもつ「吸湿」能力はあっというまに飽和してしまい、それ以上効果を発揮することができません。

まずは以下の2つの環境を満たしてやる必要があります(製品そのものから継続して湿気が出てくるものや寒暖差の激しい地域を行き来する場合は別途対策が必要です)

  • 密閉された包装材料内、それもなるべく狭い空間内で用いる
  • 包装材料は水蒸気を通しにくく、ガスバリア性能に優れた素材を使う

乾燥剤は、一旦包装された内部に入れられ密閉環境に投入されたあとは、主として二つの役割を果たします。

  • (1)包装内に残っていた空気中や製品、梱包資材に由来する水蒸気・湿気を吸着する
  • (2)包装材料を透過して入ってきてしまう水蒸気を吸湿する

このことからもなるべく狭い空間で、水蒸気を通しにくい密閉環境で用いる必要があることがわかります。

選び方|乾燥剤は対象や用途によって使い分ける

使用環境を特定する

乾燥剤を投入したい環境、具体的には密閉環境かそれに近い環境となる場所の容積と、温度、湿度(相対湿度)、効果持続が必要な期間をある程度目安として把握しておく必要があります。輸送コンテナの中すべての湿度を管理する必要があるのか、段ボール箱1箱分の湿気を除去すればよいのかで使うべき量や適切な成分も変わってきます。

湿気を除去したい対象の特徴

食品に使用する場合は、人体に対する安全性もさることながら、食品成分と反応しないことや発熱が少ない、特定のガスなどを発生させない、といったことも求められます。さらにいえば、即効性があり乾燥力も強いタイプのものがよいか、遅効性でじわじわ効果が持続するタイプがよいかも、同じ食品であっても包装する内容によって変わってきますので、選び方が重要となってきます。

投入した後の環境の変動

国際輸送上の多くで問題となるのが、高湿度の地域から低湿度の地域への輸送です。日本の梅雨時に梱包して、気候のからっとした北米エリアへ船便で送った場合、着荷したころには湿度の低い環境になっていることがありますが、乾燥剤の種類や入れ方によっては高湿度エリアでたっぷり吸着した水分を今度は乾燥したエリアで放出してしまい、これが原因で錆びが発生するといった事態になることもあります。こうしたケースでは、水分を放出する可能性の少ない乾燥剤を使うか、乾燥剤以外の方法(防錆紙、防錆袋、防錆剤など)も検討項目となってきます。

また、温度変化ということであれば結露も大きな問題のひとつです。一旦水蒸気が水分となってしまえば、再び高温にでもならない限りこれを輸送中に除去することは難しく、錆びや品質劣化の原因となってしまいます。

低温、高温、低湿度、高湿度、それらの変動があるのかどうか等が重要となる所以です。

温度管理が必要な物品を運ぶ以外ではあまり気にされないこともないですが、コンテナ内の温度やコンテナの天板の温度というのは赤道直下を経由するような船便の場合、想像以上に高くなります。コンテナ船の場合、船倉だけでなく、甲板の上にもコンテナを積んでいきますが、こうしたオンデッキのコンテナは直射日光をそのまま受けますので、内部は50℃から60℃近くまであがることがあります。

また高温となるだけでなく、問題になるのはこれが一日のうちや日がかわるだけで30℃以上もの温度差が発生するということです。

乾燥剤の種類

こうした乾燥剤を用いる環境を踏まえた上で、どのような成分を持つものを選択すべきかについて検討していくことになります。乾燥剤は、単一成分のものの場合、表面積を変えることはできますが、吸湿速度、持続時間のコントロールは主として乾燥剤成分を包む包装材の孔などで行います。

たとえばシリカゲルにしても小さなガラス球状の粒を不織布やポリフィルム等に包んで用いますが、このシリカゲルが入っている袋の微細な穴が吸湿速度のコントロールに使われています。

乾燥剤に求められる性能としては、次の点が主に挙げられます。

  • 吸湿力(吸水力)
  • 吸湿速度(吸水速度)
  • 吸水容量
  • 乾燥力・吸湿性能の復元力
  • コスト(単価と繰り返し使えるか)

以下に多くの産業で使われる一般的な乾燥剤を成分別に列挙していきます。これ以外にも濃硫酸や五酸化リン、水酸化ナトリウムなどの乾燥力、吸湿力の強い薬剤もありますが、これらは取り扱いに危険性が伴う上、扱いも難しいのでほとんど実用には供されていません。研究開発用途等の限定された環境では使われることがありますが、広く包装副資材として輸送・保管のため多くの製品に使うには難があるため、除外しています。

シリカゲル|SiO2

無色透明または吸水レベルがわかるように色づけされた小さなビーズ状の製品です。単なる玉ではなく、多孔質の構造をしており、見掛けより表面積が大きく、これらの微細な孔によって物理的に湿気を吸着していきます。

一定レベルの水を吸うと色が変わるタイプのものも市販されています。これは青い塩化コバルトで着色したものです。一定以上水を吸着するとピンクに色が変わるものですが、EU地域などでは塩化コバルトの発がん性が理由で表示・廃棄などに規制がありますので、輸出地域によっては塩化コバルト付のものは使わないほうがよい場合もあります。

包装用シリカゲル乾燥剤として規定されているJIS規格ではA形とB形の二種があり、それぞれ以下のような違いがあります。

  • A:低湿度において湿気を吸着する力が強いもの
  • B:高湿度において多量の湿気を吸い、吸着容量が大きいもの

メリットはなんといっても吸湿力の強さと即効性です。反面、遅効性が求められるようなシーンではこれがデメリットになってしまうことがあります。

酸化カルシウム|生石灰

吸水速度は、高湿度環境においては速い部類となります。ただし、低湿度環境ではゆっくりとした吸水速度になるため、遅効性を求める場合にも有効です。自己調節型の吸水速度を持つ乾燥剤といわれる所以です。

シリカゲルに比べて安価であり、せんべいや乾物などの食品にもよく使われています。低湿度環境で用いる場合、吸水容量も大きいため、長期間使える特徴があり、これが最大のメリットといえます。

デメリットしては水がかかるような場合、発熱して強アルカリ水溶液となる特性があるため、この点には注意を要します。急激な水分の吸収が起きるような場合には発生する熱が製品含め周辺に影響がないか検討が要ります。ある程度の吸水量を持たせるにはそれなりの容積も必要なため、乾燥剤を入れるスペースを極力小さくというような場合には少々デメリットになってしまいます。

また、飲み込んでしまうと火傷をしたり、目に入ると失明するなどのリスクがある点にも注意すべきです。

生石灰(酸化カルシウム)は吸湿すると消石灰(水酸化カルシウム)へ変化してしまい、再使用は原則できません。酸化カルシウム自体は1000℃程度で加熱すると再生可能ですが、通常の使用環境は困難であるため、使い捨てと考えたほうがよいでしょう。

シリカアルミナゲル系

平たく言えば、「粘土」に水を吸わせるタイプの乾燥剤となります。

主成分は粘土質鉱物を用いた安全な乾燥剤で、シリカゲルに比べると低価格であり、複数の種類がありますが、その大きな特徴としては、次のようになります。最大のメリットは使い捨てではありますが、低湿度環境での高い吸湿性能と廉価であるという点が挙げられます。

  • 吸水しても発熱はない
  • 潮解性もない
  • 吸水すると粘土のように溶けてドロドロになるが周囲を溶解させることはない

高湿度環境では、シリカゲルほどの吸湿性能を持ちませんが、反面、低湿度環境ではこちらのほうが高い吸湿性能を持っています。

モンモリナイト

天然産出される水和粘土であり、モンモリロン石ともいいます。ここから作られる物理的乾燥剤で、モンモリナイトの水分を多く抱え込み、他の粘土と比較しても水分をもっとも吸着するという性質を利用したものです。相対湿度30%以下では吸水容量が多く、これ以上だと少ないとされます。

アロフェン

主成分は水和アルミニウムケイ酸塩で、粘土準鉱物です。酸処理をした包水性の高い非晶性多孔質構造をもつ物理的乾燥剤として知られ、主として錠剤の成形用に使われます。

合成ゼオライト

吸水容量が相対湿度に関係なく一定という特徴を持ちます。また吸湿速度も速い物理的乾燥剤です。成分はナトリウム、カルシウムの含水アルミノ珪酸塩。三次元の網目状の構造をしており、合成品のほうが天然ゼオライトよりも吸湿性能が優れます。水分の吸着だけでなく、各種成分の吸着にも使われます。天然に比べ、価格は高価です。

天然鉱物ゼオライト

結晶性のアルミノケイ酸塩ですが、合成のものに比べると結晶性や吸湿性は劣るとされます。構造は合成ゼオライトと同じです。ホウ沸石、モルデナイト、クリノプチロライトの3種類が日本では天然ゼオライトとして知られます。モルデナイト、クリノプチロライトが採石されて用いられています。

塩化カルシウム系

融雪剤としての利用がよく知られますが、除湿剤、乾燥剤としても使われます。乾燥剤のなかでも潮解性をもつ塩類となります。生石灰と同様、水分の急激な吸収により発熱し、なおかつドロドロになってしまいます。単独では使えないため、天然ゼオライトや軽石といった多孔質の無機物に含浸させて使います。

吸湿量は生石灰とほぼ同等とされ、吸水速度、吸水容量は20℃、相対湿度60%でシリカゲルと同等です。メリットとしては中湿度環境では吸水容量が大きく、結露防止に威力を発揮します。またこの湿度域での調湿効果を狙った使われ方をすることがあります。

水分を吸うと溶けてしまうため再利用はできません。欠点である潮解性を起こさないよう、シート状に加工した製品もあり、台紙やクッションがわりに使われることもあります。

乾燥剤のコストと価格

輸送コストや包装コストの低減が叫ばれる中、荷材のコスト低減はどの企業でも大きな課題事項かと思います。こうした中、乾燥剤についても製品あたりに使う個数を減らしたり、複数の種類を使っている場合は一本化してみたり、様々な工夫がなされています。

昨今は、製品の製造拠点が各国にまたがる多国籍化しており、その影響で海外産のさらに安価な乾燥剤を日本に逆輸入して用いることもあります。自社の海外工場との貿易などでは互いの荷材を再利用したり、はじめからリターナブルの梱包材を使ってコストを下げるという方法のほか、こうした現地側の安い乾燥剤を仕入れて用いるという方法もあります。

分野にもよるのですが、工業分野でも最もよく目にする乾燥剤がシリカゲルです。このシルカゲルの量や仕入単価を落とすという方法のほか、より安い価格の乾燥剤を使うという方法もあります。シリカゲルは再利用できる点や安全でクリーン、吸湿能力の高さ等から使い勝手のよいものではありますが、用途により1回だけで捨ててしまうような場合、シリカアルミナゲル系に分類される粘土を用いたものは一つのコストダウンの選択肢となり得ます。

乾燥剤のコスト低減例
低減内容 検討例
乾燥剤の種類変更 使い捨てか、再利用か。低湿度域〜高湿度域のどの領域での使用か。吸湿力、吸水量、持続時間はどの程度必要か
使用量の変更 過剰品質になっていないか。包装の仕方や包装材を工夫して容積を小さく密閉性を上げて少ない乾燥剤にできないか
他の荷材への一本化 目的が防錆ならば防錆袋の単一使用への変更など、目的に応じて他の資材との統廃合を実施

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