KDとパススルー供給の違い|輸出におけるノックダウン品とパススルー品

2016年6月4日更新

自動車業界におけるKDとは、ノックダウン(Knock Down)の略称で、これは車を完成車の状態で海外へ送るのではなく、組み立て可能なある程度の状態にして海外等へ輸送し、そこで組み立てる生産方式のことを言います。どの程度のレベルの組み立てが必要かによって、KDには、SKD(ボルトを締める等の簡単な組み立てのみで完成車に仕上がる程度にバラされている)とCKD(部品ごとに完全にバラされているため、溶接・塗装工程なども必要)があります。

自動車業界におけるパススルー品とは、主に自動車部品メーカーで使われる場合、日本で製造した完成状態の「部品」を、そのまま海外へ送ることを意味します。自動車メーカーの海外工場へ直接納入することもありますが、ほとんどの場合は、自社の現地法人を通じて納入しますが、パススルー品の場合、現地法人・現地工場側では何ら手を加えず、日本から輸送されてきたそのものを荷姿やラベル等だけ変えて現地の顧客へ納入することになります。

昨今、日本の自動車メーカーのほぼすべてが海外に生産工場を持っています。そこで使う自動車部品というのは、コストを抑えるためになるべく現地調達することが求められているため、日本の多くの自動車部品メーカーも顧客とともに現地へ進出し、工場を立ち上げて客先へ直接納入する方法をとっていますが、中には現地の自動車部品メーカーで製造できないケースがあります。

一般的には、量産立ち上げの生産準備が間に合わず、一時的に日本の工場から仕入れて顧客へ納入しなければならないケースや、そもそも現地工場では生産技術的な問題で、はじめから製造が困難なものについても日本工場から製品を仕入れて顧客へ納入する必要が出てきます。

自動車メーカーについても事情は同様で、現地で調達できない自動車部品については日本から輸送しており、自動車部品メーカーはこれをKD品と呼ぶ習慣があります。部品メーカーの営業担当などは、国内完成車に使われる部品とKD部品とを分けて集計・管理するところがほとんどです。KD部品は海外の需要と連動しているためです。

パススルー品か、KD品かというのはつまるところ、現地で製造することができない自動車部品を海外の工場へ納入する際の商流の違いとなります。自動車部品メーカーの立場から見ると、マージンが取れるパススルー品のほうが利益が高くなる傾向がありますが、物量や海外の行き先によっては、自動車メーカーはかなり安いコストで輸出が可能となっているため、自動車メーカーの日本側と海外側のマージンを見ても、KD品で納入したほうがコスト低減になる場合もあります。

いずれのせよ、自動車メーカーの海外法人側から引き合いがある話となるため、パススルーで購入したほうが安いのか、KDで購入したほうが安いのかは現地側で比較検討を行うことになります。

一部、海外の現地側に工場や販売拠点がなく、自力で輸出することも難しい自動車部品メーカーの場合は、おのずと選択肢はKD品となります。ただ、現地に海外法人を持っている部品メーカーの場合、輸出ができないというのは理由としてはかなり苦しい言い訳となります。というのも、現地の工場で生産する場合、製造に使うすべての物品を現地だけで調達できないことは多くのメーカーの知るところであり、基本的には製造に使うもので現地で入手できないものは日本から輸出していることがほとんどだからです。

パススルー品とKD品の違い
パススルー品 自動車部品メーカーが、日本から自社の海外工場・販売拠点へ部品を直接輸出し、現地法人側では加工等を一切行わない形態の取引。自動車部品メーカーの現地法人は、日本から受け取った部品を、顧客の海外工場へ納入する。
KD品 自動車メーカーが、日本で調達した部品を自社の海外工場へ送る形態。物量が多いため、輸送費自体はかなり安いことが多い。

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