デビットノートの書き方とテンプレート|デビットノートを使って請求する

2015年1月2日更新

デビットノートとは、海外へ何らかの請求を行う際に使う支払請求書の一種で、国や取引内容によってはまったく目にしないこともあれば、頻繁に使うこともある伝票の一つです。Debit noteやDebit memorandum、略してDNやデビットメモと呼ばれることもあります。通常、貿易取引や貿易外取引についての請求は、インボイスを使って行います。インボイスで請求するのではなく、デビットノートを使って請求するような状況というのは、下記のようなものが考えられます。

インボイスとデビットノートの違い|デビットノートで請求を行う場合

インボイスの増額訂正

貿易において物品のやり取りが完了しており、それについての請求インボイスも相手へ送っているものの、この単価に間違いがあり、請求を増額しなければならないような場合に使います。

単価間違いのほか、総計の金額が違う、明細が部分的に間違っている等の理由で、相手方に本来請求しなければならない金額が不足してしまっているような場合に、相手に発行する請求書がデビットノートということになります。インボイスとの違いは、通関目的では使えず、あくまで増額修正用の請求や通常取引とは異なる請求を行うための専用書類となります。したがって、物品の貿易にかかわる請求であれば、デビットノートには必ず対になるインボイスが存在することになります。

インボイスの金額を増額して請求せねばならない場合、なぜインボイスそのものの訂正ではいけないのかという点が気になりますが、これは請求書であるインボイスは、いったん発行したものをあとから自由に変更できない慣習を持つ国があることや(一般的に、請求書を受領した側で勝手に変更できないことはもちろん、発行した側が書面で取り消さない限り、すでに出してしまった請求書の内容は変更できません)貿易による取引の場合、通関で申告したインボイス内容と請求の内容は同一となるべきであるため、異なる請求金額にする場合には、その増額修正用の書面としてデビットノートが必要となります。

貿易取引による請求書は、「インボイス(invoice)」が使われますが、この書類は送り状や通関のためにも使われるため、通関インボイスと請求インボイスを分けて運用する会社もあります。いずれにせよ、通関によって相手国へ輸入許可がおりた物品だけがその国へ入ることができるわけですから、このときに用いたインボイス内容と金額が、請求すべき金額となります。これをあとから訂正、という場合で請求額を増額するときにデビットノートが必要となり、逆に減額する場合にはクレジットノートが使われるという仕組みです。

なお、インボイスの単価が大きく違っていたような場合、現地の輸入申告についても修正申告が必要となるケースがあります。これは税関にて関税やVATなどの付加価値税、物品税などが課せられているため、インボイスの総額が変わってしまうと、納税額も変わってしまうからです。ルール上は、こうした場合、輸入申告の修正だけでなく、輸出側の申告についても修正申告すべき、ということになります。

売買代金の相殺

継続的に取引がある海外の得意先と、自社からの販売だけでなく、購入も行っているような場合、件数が多いと双方から正規の請求書を毎度発行して決済するのが手間になることがあります。こうした場合で、売りと買いの金額を相殺して、こちらの販売金額のほうが大きいような場合、その差額だけを請求すれば、請求にかかる事務や手数料が1回ですむことになります。こうした相殺による決済、ネッティングにもデビットノートは使われます。

輸送費や保険費用を別途請求する場合

貿易条件によっては、通常は製品代金の請求を行うインボイスにこれらの費用も含まれていたり、あるいは輸送業者から直接客先へ請求がいくというような処理が多いですが、何らかの事情でこちらがこの輸送費用や保険費用を立て替えたような場合、別途請求する必要があります。未収金扱いのインボイスをあらたに発行して対応することが多いですが、国や相手先企業によってはこうした費用請求にデビットノートを使うことを求められることがあります。

イレギュラーな請求を行う場合

通常の売買取引とは異なる内容での「請求」についてデビットノートが使われることが多く、国によっては「こうした場合にはインボイスではなくデビットノートを使うべき」という慣習を持つことがありますが、おおむね、企業ごとに使い分けている印象がします。同じ国でも取引先によって、こうした通常の取引ではないような場合の請求に「インボイスで対応してほしい」というケースと、「デビットノートを発行してほしい」というケースがあります。一般には先方の輸入担当や経理、財務担当と相談して決めることになります。

貿易外取引での請求

貿易による請求はインボイスを用います。貿易外の取引、すなわち物品のやり取りが伴わない何らかのサービスや設備設置などのための技術支援・技術者派遣費用・SV費等の請求にデビットノートを使うケースもあります。こうした貿易外の取引でも、そのサービス内容が主業であるような場合、インボイスを請求に使うのが一般的ですが、相手先企業によってはデビットノートで対応してほしいという場合があります。

デビットノートの書き方

下図にデビットノートのサンプルを例示しましたが、書式が必ず決まっているというものでもなく、請求をするためのものであるため、基本的にはインボイスに準じた内容になります。すでに使っているInvoiceの書式があるのであれば、InvoiceのタイトルをDebit noteに変えて、通し番号の振り方を変えればすぐに使うことができます。

もちろん、相手先の要望があればそれに応じてDebit noteの中身に必要事項を追記していくことになります。

下のデビットノートのサンプルでは、研磨に使うアルミナを日本からタイへ輸出したものの、金額が間違っており、1kgあたり100円の増額請求を行った例です。対応するインボイス番号も製品の下部に明記しています。

インボイスに複数品目があるケースや、複雑なものの場合では詳細な説明を記述した別紙を、Detailsといった形で発行することもあります。

タイトル

Debit noteという言い方が最も一般的です。Debit memorandumという言い方もあります。

日付

これもインボイス等の発行と同様に必須です。表記形式は米国式と英国式があるので、どちらかに統一したほうがよいでしょう。

通し番号

デビットノートもインボイスと同様に請求に用いる正式な書面です。通し番号で識別できるよう管理しておく必要があります。ごく限られた使い方をする場合、インボイス番号と同じ番号にすることがありますが、どちらの書面を指しているのかわからなくなるため、インボイスとも区別できるようにしておくとよいでしょう。

宛先(と住所)

宛先、住所についてもインボイスと同様の書式で問題ないと思います。

自社名(と住所)

ヘッダー部分にロゴとともに記載する会社が多いです。

製品名、単価、数量、総額

先にインボイスがあるような場合、本来請求すべきであった金額を記載するのではなく、発行済みのインボイスではカバーできていない分のみを記載します。つまり、このデビットノートで相手に支払ってほしい金額のみを記載するということです。

対応するインボイス番号、PO番号等

物品の貿易にかかわるデビットノートであれば、必ず通関に用いているインボイスがあるはずです。そのインボイスに対して足りない分を請求する、あるいは何らかの取引がすでにあり、それに付随する費用としてデビットノートで請求を行うような場合、どの分のインボイスがこのデビットノートに対応するのか明記しておくとよいでしょう。物品についての取引であれば、相手からの注文書(PO)もあるでしょうから、その番号も明示すると親切です。

支払い条件・支払期日など

取引基本契約がすでにあるような場合、それに準じた形になりますが、こうした取り交わしが何もない場合、通常はPOをもって個別契約という形にすることが多いため、POに準じた支払い条件・期日を記載することになります。あるインボイスを修正するために発行するデビットノートは、そのインボイスの支払い条件と同一とすることが多いですが、先方の締め日のこともあるでしょうから、相手(買い手)との相談となるかと思います。

デビットノートの書き方のサンプル

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