ダイヤモンドホイールなどの砥石のコア(台金)の材質は何が良いですか

2011年1月8日更新

アルミ合金が最も一般的

台金は砥層を固着させておくという役割だけでなく、加工時にかかる圧力を逃がすという役割も持ちます。いわばある程度のクッション性をもたせて加工時の切り込み量を調整するという考え方なのですが、実用上はほとんどがアルミ合金です。Al-Mg系のアルミがよく使われますが、加工性がよく、棒材(円柱形状か、すでに輪切りの状態になっているもの)で手に入り、価格が安いというような条件が揃っている必要があり、一般には砥石部分が摩耗してなくなってきたら、台金ごと捨てるため、特定の意図なく高価な材質のものが使われるケースは稀と言えます。

アルミ合金の他には、鉄や鋳鉄、セラミック、超硬合金、ハイス鋼、ベークライトなどの樹脂系が使われる場合もあります。最近では、台金部分に熱膨張係数の著しく低いセラミック質の材料を用いて超精密な加工でも精度を維持できることを売りにしたものが出てきています。このことからもわかるように、ホイールを使う際に台金の熱膨張はわりと問題になる点でもあります。加工中は高速回転により高温になる砥石部分から熱が伝わり、台金そのものも熱くなります。このとき膨張しすぎれば、台金と砥石の接着部分から剥がれて破損したり、砥石そのものに歪みが生じて、意図せず振れが発生してしまう可能性もあります。

熱膨張による精度悪化を防ぐセラミックコア

一般的な研削加工では、そこそこ強度に優れた、例えば5000系のアルミ合金であればさして問題もありませんが、超精密加工をしており、熱膨張によって加工精度が変わってしまうという場合は、別の台金を試してみる価値はあるかと思います。なお、鉄の台金が一番安いですが、重さに難があり、外径200mm程度のものでも何度も取りかえる等の手間を考えるとけっこうな負担になります。これが300mmを超えてくると、鉄の台金による作業は非常に重く、取り外しの際の怪我なども考えると、特段の事情がない限り、別の材質にしたいものです。鋳物は重いですが、振動の吸収効果が若干あるため、こうした目的でも使われることがあります。超硬の台金というのはほとんど見ることはないと思います。高くつくため、使い終わってから砥層だけをつけてもらう等、メーカーと特別な取り決めがない限り、加工コストに見合わなくなる可能性があります。

台金に複数の材料を使うケース

台金の材質は1種類ではなく、複数種類のものを組み合わせることもあります。例えば、砥石部分に精密な凹凸の放電加工などが必要なダイヤモンドホイールで、台金の部分も鉄にしたいが、重さを軽減したいという場合は、アルミ合金を中心部分に使い、砥層と接着する部分だけは鉄を用いるという発想もあります。

また切り込み量をおさえ、クッション性を出すためにアルミと樹脂を組み合わせたものもあります。ベークライト(ベーク盤)などの樹脂を使うと、加工時の衝撃を吸収し、ソフトなあたりにすることができます。機械の剛性が異様に強く、砥石側に全負荷がかかって耐えきれないというような場合にも、加工内容によっては一考の価値があります。

近年は、ダイヤモンドホイールやcBNなどの超砥粒以外でも、台金部分に相当するものがある研削砥石も出てきています。研削砥石は通常、全体が砥石ですので、台金は不要なのですが、中心部分にビトリファイドなどで作ったセラミック質のコアを入れて、加工時の変形や熱膨張による変形を抑えるというものもあります。

なお、ダイヤモンド工具でも電着工具だけはアルミ台金ではなく、S45Cなどの炭素鋼が台金として良く使われます。

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