メイドインジャパンの定義|日本製の基準はどこから?

2013年7月15日更新

メイドインジャパンの基準は

日本製の物品を海外へ輸出するということも今では珍しくありませんが、製造に使う材料の出所が多岐にわたり、製造工程も分業が進んで複数国で製造するということも多くなってくると、日本製の定義も曖昧になってきます。とはいえ、貿易上、国によっては日本製であることを証明する原産地証明書の提出を仕向国での輸入時に求められます。工業製品などは、自国の原料100%のみから作られているもののほうが少ないと言えます。

こうした場合、メイドインジャパンを名乗ることができるのはどの範囲なのか輸出にかかわる方であれば誰しも一度は疑問に思ったことがあるのではないでしょうか。

実質的な変更を加える加工が行われたどうかをHSコードの変更で判断する

この場合、実質的な変更を加える加工が行われたのかどうかがポイントとなります。何をもってこの実質的な変更となる加工なのかを決めるかと言うと、最終的に輸出する物品のHSコードの上4桁が原材料の上4桁から変更しているかどうかで見ます。

HSコードは似ているもの同士が近い番号でカテゴライズされるため、例えば、鉄鋼製品であれば、73類に該当しますが、この中でさらに項目が分かれており、鉄鋼製のストーブやレンジであれば、7321となります。上2桁が類、上4桁までが項となります。さらにこの中で、気体燃料用のもの(7321.11)、液体燃料用のもの(7321.12)等と分かれており、これが上6桁までの号となります。

日本の原産性を、通常の原産地証明書の定義で満たそうとするのであれば、この例で言えば鉄鋼製のストーブの輸出を想定すると、ストーブの原材料・部品などが上4桁の7321と違うもので、日本で加工してこのストーブとなったものであれば、日本製の基準を満たすことになります。

つまり、7321を上4桁にもつ半製品の状態で日本へ輸入されてきたものを、さらに日本で加工して鉄鋼製ストーブに仕上げた場合は、日本製にはならないということです。

日本製であること、原産品の3つカテゴリー

分かりやすい例としては、(1)日本で採れた農作物や魚介類など日本の国土において生産されたものです。あるいは、(2)日本で作られたものだけを使って作ったものも、日本製であるということは容易に想像がつきます。解釈に違いが出てくるのは、(3)日本製ではない原材料や部品を使って、日本で作った製品がどうなるのかという点です。

専門的には、非原産材料を使って製造したものという言い方となりますが、こうしたものも、原産地証明書の求める基準を満たすことで「日本製」になります。以下に、原産地証明書によって日本製がどのような基準になっているのか見ていきます。

原産地証明書の種類によって日本製の基準・定義は異なる

メイドインジャパン、つまり日本製であることを貿易の上で証明するには定められた機関から「原産地証明書」を発給してもらう必要があります。これをもって貿易上は、日本製であるというお墨付きをもらったことになるのですが、この原産地証明書は目的によっていくつか種類があり、どの原産地証明書を取得するのかによって「日本製」の基準も変わってきます。

貿易の上で、メイドインジャパンであるということを証明するものとしては次のようなものがあります。日本の原産資格を持つ、原産性を持つという言い方で表現されます。

なぜ原産地証明書の種類によって、日本製の基準が変わってしまうのかといえば、日本には、輸出する物についての原産地判定基準が法律としては存在しないためです(EPA協定、つまり条約では存在しますが、この条約を利用しない輸出の場合には輸出品としての判定基準は立法化されていません)。輸入するものについての原産地を判定する法律はあるため、輸出するものについて「日本製」であることを証明するための原産地証明書発給に、この輸入基準を準用しているのが実情です。

輸入する際にその物品の原産地を判定する基準については、以下の法律で規定されています。

  • 関税法施行令
  • 関税法施行規則
  • 関税法基本通達の規定

但し、EPA協定、FTA協定に基づく特定原産地証明書のあるものについてはこの限りではありません。

一般原産地証明

原産地証明というと、通常はこれを指します。日本各地の商工会議所から発給してもらうことができます。

この原産地証明を行う目的としては、相手国にて法律で提示を求められている場合や国際間取引で相手国で必要と定められている場合、輸出書類のなかにこの証明書が必要となります。証明書がなくとも、申告時に原産国を日本と明記すればよいだけの国もあります。

特定原産地証明書

最近話題になることも多くなったTPPもそうですが、二国間や多国間での貿易では通常「関税」が課せられ、自分の国の産業を保護したり振興したりする名目で、ある物品が過度に入ってこないよう、あるいは出て行かないよう調整がはかられています。この関税を、協定を結んだ国同士でなくすことで、貿易をさらに活発化させようというのが、TPPをはじめとするEPA(経済連携協定)、FTA(自由貿易協定)と呼ばれるものです。

前置きが長くなりましたが、特定原産地証明書は貿易の際、このEPAやFTAを使って関税の減免を受けるときに必要になる特別な原産地証明書です。あくまで協定を結んだ国同士の産品だけを優遇するため、協定国の「原産品」であることを証明する証書が求められるわけです。

条件を満たして申請することで、日本商工会議所から発給してもらうことができます。この証明書は利用しようとする協定だけのために発行されるもので、日本とタイの間で締結されている協定を使うのであれば、日タイ経済連携協定用の特定原産地証明書が必要です。日本ASEAN間で締結されているものを流用することはできません。

メイドインジャパンの定義としては、それぞれの協定で違いますが(多くは似ていますが)、例えば日本−インドネシア間のEPA協定を使って、日本から加熱炉を輸出する場合、次の二つのうちのどちらかを満たしていれば、この協定で言う「日本製」という基準を満たすことができます。

関税分類番号変更基準

貿易する際、物品には、種類ごとにすべて番号がつけられており、これをHSコードといいます。似た性質を持つ製品は似た番号でカテゴリーになっているので、原材料や構成部品のHSコードが、完成品のHSコードと違うものであれば、日本で製造したものとみなされ、メイドインジャパンとなります。このとき、HSコードの桁数のうち、上から6桁までのうち、1桁でも変わっていれば日本製であることを認めますというのが日本−インドネシア協定での基準のひとつです。

付加価値基準

日本で加工された加工賃や日本の原産材料を使った総費用、利益、国内輸送費などの合算が一定基準以上であればよいというものです。日本−インドネシアの場合は、価格の40%以上という決まりがあるので、それを満たしても上記と同様に、日本製であると認められます。

特恵原産地証明書

これも前述の特定原産地証明書と似ていますが、違いとしては先進国対開発途上国との貿易のみに使われるものである点です。ただし、開発途上国の発展を手助けするGSPスキームを採用している先進国に限られます。具体的には、認定されている開発途上国からの物品を日本に輸入する際に、関税の免除を行うというもので、日本以外にもこうした措置を講じている国は多数あります。この証明書は別名form A(フォームA)とも呼ばれます。

日本の場合、一般原産地証明と同じ定義で運用されますが、日本側からこれを申請することはなく、輸入する側、つまり物品を受け取る輸入申告のときの製造国の定義に使います。したがって、輸入申告の際に冒頭で述べた一般原産証明書の基準であるHSコードの上4桁が変わっているかどうか、という点で判断します。

日本製の基準を満たさない場合

たまに、最後のパッケージングや袋詰めだけやったとか、ラベルだけ貼り付けた、ばらしたものの組み立てだけやったので日本製、検査だけやった、品質管理・品質保証は日本でやっているので日本製だと主張するメーカーもありますが、これらは本来、日本製とは言いません。

上記のように定義に幅はあるものの、いずれかの基準を満たすものがメイドインジャパンを貿易上名乗ることができる製品ということになります。ただし、貿易上それが日本製となるかどうかという基準のほかに、原産国の表示に関する法律は産品によって別のものが存在するケースがあります。また分野によっては業界団体が別途定めているケースもあり、すべての物品について共通して存在している日本製の基準というのは、この貿易上のものがその一つとなります。

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