ベーナイト鋼の規格|ベーナイト鋼の比重や板厚、用途について

2016年2月22日更新

ベーナイト組織を持つ鋼のことを通称「ベーナイト鋼」や「ベイナイト鋼」と呼ばれています。英語ではbainiteと表記します。JIS規格ではばね用冷間圧延鋼帯の鋼種である>S55C-CSPB、S60C-CSPB、SK5-CSPBなどがこのベーナイト鋼となります。したがって、これらの材料規格がベーナイト鋼の規格ともいえます。

鉄鋼材料は熱を加えることでその「組織」が変化していきます。その組織にはさまざまな性質があるため、熱処理を行うことで同じような成分の鋼でも、物理的性質をはじめとする性質が変わります。鋼においては、もって生まれた変えられない部分である「成分」と、育ちである「熱処理」の双方の組み合わせによって、その性質が決まってくる多彩さを持ち合わせています。

ベーナイト組織を作るためには、オーステナイト変態点以下の温度で鋼材を一定に保持する必要があります。これらをオーステンパ処理とも呼びます。ベーナイト鋼は、ばね用冷間圧延鋼帯を、オーステンパ処理したものです。

焼き入れ焼き戻しを行ったときにも、このベーナイトと似た状態になりますが、こちらのベーナイト組織をもつ鋼はこうした焼き入れ焼き戻しよりもさらに靭性に優れているため強度に富み粘り強く、それでいて加工性もよい鋼材となります。

強靭なバネにはうってつけですが、用途としては高炭素鋼が適するものであれば幅広く使うことができます。

ベイナイト鋼の特性

ベイナイト鋼の物性面をデータで見ていくと以下のようなものとなります。

ベーナイト鋼の硬度

硬鋼はいっていの炭素量を超えると硬度に大きな差は見られなくなってきます。

S55C-CSPの硬度、硬さの一覧(熱処理別)
材料記号 硬度(HV)
焼き鈍し(A)
硬度(HV)
冷間圧延のまま(R)
硬度(HV)
焼入焼戻し(H)
硬度(HV)
オーステンパ(B)
S55C-CSP 180以下 230から270 350から450 360から440
S60C-CSPの硬度、硬さの一覧(熱処理別)
材料記号 硬度(HV)
焼き鈍し(A)
硬度(HV)
冷間圧延のまま(R)
硬度(HV)
焼入焼戻し(H)
硬度(HV)
オーステンパ(B)
S60C-CSP 190以下 230から270 350から500 360から440

ベーナイト鋼の比重

比重についてJIS規格上は定義されていないものの、比重=7.876−0.030×炭素(%)の計算式で割り出すこともできます。S60C-CSPで炭素は0.55から0.65%、S55C-CSPで炭素は0.52から0.58%となるため、これらの値を代入してやれば凡その比重目安が算出可能です。

ベーナイト鋼の板厚

ばね用の冷間圧延鋼帯の標準厚さに準じたものが、規格上の板厚となります。

ばね用の冷間圧延鋼帯の標準厚さと許容寸法差(mm)
標準厚さ 厚さ(範囲) 許容差 許容差ET(幅80mm未満)
当事者間で取り決め可能なより厳しい許容差
幅200mm未満 幅200mm以上600mm未満
- 0.10未満 ±0.008 - ±0.006
0.10、0.12 0.10以上0.15未満 ±0.010 - ±0.008
0.15、0.20 0.15以上0.25未満 ±0.015 ±0.020 ±0.010
0.25、0.28、0.30、0.35 0.25以上0.40未満 ±0.020 ±0.025 ±0.015
0.40、0.45、0.50、0.55 0.40以上0.60未満 ±0.025 ±0.030 ±0.020
0.60、0.70、0.80 0.60以上0.90未満 ±0.030 ±0.040 ±0.025
0.90、1.00、1.10 0.90以上1.20未満 ±0.040 ±0.050 ±0.035
1.20、1.40 1.20以上1.60未満 ±0.050 ±0.060 -
1.60、1.80、2.00 1.60以上2.10未満 ±0.055 ±0.070 -
2.20、2.50、2.80 2.10以上3.00未満 ±0.065 ±0.080 -
3.00、3.50、4.00 3.00以上4.00以下 ±0.080 ±0.090 -

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