防錆剤の成分や種類

2018年5月2日更新

金属の腐食や錆を防ぐ方法は大きく4つありますが、そのうちの一つ、環境制御と呼ばれる防錆対策で活躍するのが防錆剤や腐食抑制剤です。防錆剤や腐食抑制剤はインヒビターとも呼ばれ、英語ではこれらをCorrosion inhibitorと言います。

防錆剤や腐食抑制剤には、液体のもの、気体のもの、固体のものがあります。具体的には、腐食を防ぎたい金属の表面に膜を形成したり、塗布したり、吸着したりすることで錆を防ぐものや酸素や水分を除去するもの、金属を不動態化させる手助けをするものがあります。

対象となる金属の種類によっても使い分けが必要で、特に銅と炭素鋼では使う防錆剤の成分が違いますので注意を要します。

以下に、防錆剤の成分と種類、その特徴を見ていきます。

防錆剤として使われるインヒビターの種類

吸着型インヒビター

この防錆剤の主要成分は、アミン系の有機化合物(アミン類の亜硝酸塩、炭酸塩、カルボン酸塩など)、オクタデシアルアミンやジシクロヘキシルアミン(亜硝酸ジシクロヘキシルアンモニウム、毒性あり)となります。気化性防錆剤の名称のものは、揮発性のものであり(高温になるとより早く気化)、防錆紙や防錆袋にしみこませた薬剤が揮発して対象の製品の表面へ付着することで効果を発揮します。

沈殿皮膜型インヒビター

別名カソードインヒビターとも言います。主に水中に投入します。循環冷却水などの密閉水中環境で使われます。成分としては炭素鋼用にはリン酸塩(ポリリン酸塩、ホスホン酸塩、オルトリン酸塩)やケイ酸塩、メタケイ酸塩が使われています。以前はクロム酸塩が使われていたこともありますが、環境の問題で使われなくなっています。

銅に使うタイプの成分は、ベンゾトリアゾール(BTA)、トリルトリアゾール(TTA)、メルカトベンゾチアゾール(MBT)等があります。これら銅向けのものは、塗布やスプレーして使うタイプのものもあります。

原理としては、この沈殿皮膜型の防錆剤を投入すると、水中のカルシウムやマグネシウム、鉄などのイオンと反応し、保護皮膜を形成します。膜は厚めのもので不溶性のため、腐食を抑制できるという寸法です。

不動態型インヒビター

アノードインヒビターとも言います。主に配管系の炭素鋼に使われることがある防錆剤で、主要成分や亜硝酸塩やモリブデン酸塩、タングステン酸塩、クロム酸塩(毒性があるため現在はほぼ使われていません)等になります。

炭素鋼はステンレスと違い、通常の酸素濃度での水中でそのままでは不動態皮膜を形成しませんが、酸化剤を投入することで不動態化することがあります。このメカニズムを利用した防錆剤ですが、投入する薬剤によってはpHが低いと分解されてしまったり、腐食を進める微生物がいると逆効果になったりすることがあります。

このため、このタイプの防錆剤を使う場合は、pHの管理、微生物の殺菌、塩化物イオンの管理、水中の酸素濃度の管理をしっかり行う必要があります。防錆剤といっても強力な酸化剤でもあるため、使い方を間違えると腐食を誘発し、かえって錆が発生してしまう危険性があります。

脱酸素型インヒビター

錆や腐食には酸素が大きく関与しますが、これはその名のとおり酸素を除去することで防錆効果を発揮する防錆剤です。成分はヒドラジン(N2H4)、亜硫酸塩(Na2SO3)となります。ヒドラジンには毒性があるため、使用環境には注意を要します。水に溶けた酸素を除去する方法は、こうした薬剤を投入する以外の方法もありますが、防錆剤を使うこともできます。

防湿剤・乾燥剤

インヒビターの分類には加えられないことが多いですが、湿気を取り除くことで腐食の発生を抑制するこれらも広義には環境制御による防錆方法の一つと言えます。生石灰やシリカゲルが良く知られていますが、他にも塩化カルシウムを加工したものやシリカアルミナゲル、デシクレイ、合成ゼオライト、水酸化ナトリウム等があります。吸湿するタイプのものでも、環境によっては吸い込んだ湿気を放出してしまうことがあるので使用する環境は選ぶ必要があります。吸着型の気化性防錆剤と併用することもあります。

除去できる湿気には限度があるため、適切な分量を用いる必要があり、ある程度密閉された空間で使う必要があります。

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