ハイスと超硬の違い

2013年8月1日更新

ハイスは高速度工具鋼のことで、ハイスピードスチールを略してハイス鋼(ハイスコー)と呼ばれる鋼です。名前が示している通り、切削工具などで高速加工に使うことを想定した鉄鋼材料です。

一方で、超硬とは、超硬合金ことで、金属の一種ではありますが、鉄鋼系とはだいぶ性質が異なり、炭化タングステンやコバルト、ニッケルなどを焼結して製造されるため、セラミックスに近い性質も持ちます。重量も超硬のほうがありますので、手にもって比較すると一目瞭然です。

ハイスは一般的に入手可能な鉄鋼材料としては、最も硬度に優れたグレードが存在し、硬度もビッカース換算(HV硬度)で700以上出ます。超硬は、「金属」という括りで見た場合、最も高い硬度を持ち、ビッカース硬度は2000を超えるグレードが存在します。

こうしてみると、硬さは超硬のほうが上ですが、硬いものほど、靭性と呼ばれる「ねばり」が失われてしまうため、衝撃に弱い、無理な力がかかった際には折れたり、割れたり、欠けたりというデメリットもあります。突然の欠けや折れといった現象には、靭性に優れたハイスのほうが優れた性能を見せます。特にねじれるような力に対しては違いがはっきりと見えてきます。

もっとも、ハイスと超硬が比較されるようなシーンというのはほとんどの場合、切削工具のチップやバイトとしてなので、現在は超硬工具が主流とも言えます。超硬は、先述したとおり、ビッカース硬度で2000を超える硬さがあり、高温環境下でも硬度が低下しません。多くの鋼材は、高温になると軟化していくため、切削工具など高速で回転し続けるワークと接するものは、接触点が非常に高温となります。クーラントや切削油である程度は温度を下げることもできますが、熱に弱いものには向きません。この点、超硬の耐熱性はハイスよりも優れます。

また硬さというのは耐磨耗性に比例するため、硬ければ硬いほど磨耗には強くなります。変形や欠け、折れといったものも、ある程度までは硬さに連動していきますので、超硬の強みとなっています。

刃に靭性や衝撃に対する強さといった要素を求めるのであれば、ハイスも検討項目にあがってくるかと思います。なお、価格についてはハイスも鉄鋼材料の中では高いほうですが、超硬のほうが高価な材料となります。

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