金属の耐摩耗性

2013年1月5日更新

しゅう動部品や、激しい摩擦の起きる箇所に使う金属材料には、耐摩耗性(耐摩性)が必要となります。簡単に言えば、摩擦のある状況でどれだけ削られる体積が小さいか、ということになります。どれだけ磨耗に強いのかという指標です。摩擦をなるべく起きないようにする設計などのアプローチも磨耗の問題には大切ですが、構成上、どうしても材料そのものが持つ磨耗への耐性が求められることもあります。

金属の場合、材料そのものが持つ耐摩耗性はほぼ硬度に比例しています。つまり、より硬い表面を持つものほど、耐摩耗性に優れた材料ということになります。

鉄鋼で言えば、より炭素の多い鋼材ほど、耐摩耗性も強くなります。

寸法の影響ですが、同じ材質・熱処理をしたものであれば、寸法が大きいほど耐摩耗性も大きくなる傾向にあります。寸法が大きいと、接する部分の面積が増えるため、磨耗量が減少していきます。したがって、摩擦のかかる面積と摩擦係数などを考慮する必要があります。

金属組織の側面から見ると、磨耗性に最も強い組織はマルテンサイト組織(焼入れ組織)となり、次いで、トルースタイト、ソルバイト、パーライト(焼きなまし組織)となります。焼入れの仕方によっては、金属組織が残留オーステナイトの比率によっては耐摩耗性が悪くなるため、サブゼロ処理(もしくは超サブゼロ処理)によってこの組織をマルテンサイトへ変態させます。

添加される合金元素も、耐摩耗性には影響し、炭素が多めであるということのほか、タングステン、クロム、バナジウム、モリブデンといった元素が耐摩耗性を向上させます。

このほか、浸炭をはじめとする表面硬化技術によって、金属の表層に特定の金属元素を浸透させて磨耗に対する耐性を高める方法があります。例えば、タングステンやホウ素、クロム、チタン、カーバイド浸炭(TiCなど)、硫黄(摩擦係数の低減目的)の利用です。

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