鉄鋼材の店売り販売と紐付き販売の違い

2018年9月6日更新

鉄鋼材料の売買方法は、その流通形態から大きく「店売り」(みせうり)と「紐付き」(ひもつき)に分かれます。平たく言えば、鋼材を買うには、「店売り」と「紐付き」という二つのルートしかなく、ここでは両者の違いについて見ていきます。

鋼材の生産メーカーには高炉メーカーと電炉メーカーの違いがあります。高炉メーカーは端的にいえば、鉄鉱石から鉄鋼を作り出すメーカーです。広大な敷地と大規模な設備が必要で、日本では4社しかありません。電炉メーカーは、普通鋼を作り出す電炉メーカーと、工具鋼やステンレス鋼、クロムモリブデン鋼などの特殊鋼を作り出す特殊鋼メーカーに分かれますが、いずれも鉄スクラップを溶かして原料にし、鉄鋼を作ります。高炉メーカーほどの大規模設備は不要な形態で、操業している会社も高炉メーカーより多いです。

一般に、鉄鋼の場合で店売りと呼ばれる売買形態は、以下の3、4、6、7、8を指します。一方、ひも付きと呼ばれるのは、1、2、3、5、6の売買取引です。6や3は、間に入る商社の種類によって店売りか、ひも付きかが変わりますが、複数の商社が間に入っているのにひも付き販売という場合もあります。この違いについて以下に詳しく述べていきます。

  • 1.高炉メーカー⇒最終ユーザー
  • 2.高炉メーカー⇒商社⇒最終ユーザー
  • 3.高炉メーカー⇒商社⇒商社(二次卸)⇒最終ユーザー
  • 4.高炉メーカー⇒商社⇒商社(二次卸)⇒商社(販売店)⇒最終ユーザー
  • 5.電炉メーカー⇒最終ユーザー
  • 6.電炉メーカー⇒商社⇒最終ユーザー
  • 7.電炉メーカー⇒商社⇒商社(二次卸)⇒最終ユーザー
  • 8.電炉メーカー⇒商社⇒商社(二次卸)⇒商社(販売店)⇒最終ユーザー

鉄鋼の店売りとは

店売りと聞くと、店頭での販売をイメージしがちですが、鉄鋼材料の店売りとは商社・鋼材販売店などのユーザーへ直接販売する流通業者が、鉄鋼メーカーと直接つながっている商社や鉄鋼メーカーから鋼材を購入し、自ら在庫しつつ、必要な量を必要なときに最終ユーザーに販売する形態です。単価は相場や在庫状況によって変化し、薄板やH形鋼など流通量のきわめて大きく汎用性の高い鋼材が多いですが、店売りを行う商社によっては珍しい材料も取り扱っています。

小口で扱ってくれるところもあれば、店売りを行う商社からさらに小口販売を行う金物屋へ卸されることもあります。この方式の場合、原則、得意先の需要予測を読みながら各販売店・商社があらかじめ鉄鋼メーカーやその直系の商社へ発注をかけて仕入れておくため、売買段階では売り先が決まっているわけではありません。

鋼材の紐付きとは

一方、紐付き(ひもつき)と呼ばれる鋼材の販売形態は、鉄鋼メーカーと最終的なユーザーが直接価格交渉をして取引する方式です。価格は原料の価格動向や国際相場、需給動向などを元に交渉で決められます。実際の売買となった場合は、取引の規模や商慣習に応じて、決済や流通面などの問題から総合商社、専門商社などが1社〜2社程度間に入ることが多いです。鋼材取引のメインはこの方式となります。

この取引形態のポイントは、鉄鋼メーカーから出荷される時点で最終ユーザーがすでに決まっているという点です。紐付きの名称はここからきています。

鉄鋼メーカーが最終ユーザーやその仲介を行う商社から注文を受けた分を生産する方式です。原則、自動車や建材、造船やそこにつながるサプライヤーなどの大口の需要家が多いですが、商社が売買に介在するため、売買単位の幅はかなり広いといえます。

同じ鉄鋼材料でも高炉メーカーが生産するものは7割〜8割前後が、特殊鋼メーカーの場合は実に9割近くがこの紐付きと呼ばれる取引形態とされます。

店売りに比べると価格が安く抑えられる上、単価が買うたびに変動せず、期中や年間など一定期間の間は交渉で決まった単価が適用されます。

受注生産に近い形態であるため、市場に出回っていない鋼材や、厚みや幅の公差に特別なリクエストがある場合、成分についても特別な要望がある場合でも価格は上がりますが応えることができます。

実際、この紐付き販売でも鋼材商社が在庫していたり、コイル材などをユーザーの要望で切断する設備をもったコイルセンターなどで在庫しつつ、ユーザーから注文があったら販売するという方法も一般的に使われます。

他の産業用資材をはじめとするB to Bの取引ではこのように商社を経由して材料を購入することはごく一般的ですが、鋼材を手に入れようと思う場合、鉄鋼商社に対してあらかじめ、内示情報を流しておき、必要なトン数の鋼材を入手しておいてもらうという方法がよく使われます。

こうしたことから汎用で在庫が潤沢にあるようなものでもない限り、特注品に近いような各種部品をはじめとする工業製品に使われる鋼材は、鋼種やサイズにも多くのバリエーションがあるため、予約販売に近いような形をとっています。来月急に必要だからといって急に注文しても、商社等での在庫品以外はまず手に入りません。

鋼材の調達までのリードタイムは4ヶ月以上かかることも珍しくなく、このため、商社ではリードタイム短縮のため、自前で在庫していることもあります。最終ユーザーはかなり先までの需要予測を「内示」という形で提示し、商社を経由して鋼材の確保を依頼しておきます。

店売りと紐付きの違い
紐付き 店売り
鋼材が作られる時点ですでに販売先・納入先が決まっているもの。建材、自動車、造船など大口の需要家やそこへ納入するサプライヤー等、多くの業種で採用される取引形態。鋼材の価格は半期に一度、あるいは年に一度などの間隔で改定交渉がなされるが、一度決まったものはよほどのことがない限り、期中には原則変更がない。鉄鋼メーカーと最終ユーザーが直接価格交渉し、売買する形態。国内高炉メーカーは7割〜8割はこの方式。 主として鋼材商社があらかじめ鉄鋼メーカーやその直系商社から仕入れておき、それを適宜、顧客の要望に応じて販売する形態。価格は都度設定されるのが常ですが、相場や需要に連動した在庫状況の影響を大きく受ける。小口のものでもタイムリーに供給できる強みがあるが、大量に使う場合、紐付きに比べるとコストは上がる。

独特の慣習がある鋼材売買の世界

鉄鋼材料の売買の世界は、日本では古くからのしきたりがあり、部外者にとってはその慣習がなかなか分かりません。たとえば、一度取引を開始した鋼材商社を価格問題などで揉めてばっさり切ってしまうと、別の鋼材商社を経由して鋼材を入手しようとしても買うことが困難になってしまいます。きわめて狭い世界でまわっており、噂等もすぐに伝わる業界です。

また、鉄鋼の売買の世界では鉄鋼メーカーの立場が極めて強く、一部の大口顧客を除くと、ユーザーには選択権がないことが多いです。例えば、現在、東京オリンピックに向けて建材用途の鋼材需要があがっており、生産調整で本来発注していた分の鋼材の入手が一部で困難になっています。他の会社にまわすので、その数量分は確保できない、と言われればそれまでです。鋼材メーカーも複数あるため、海外メーカーも含めて複数社から分散して調達という方法もありますが、材料はデリケートなもので、部品や製品によっては全く同じスペック、成分、同じメーカーのものを購入しているのに、高炉の場所が変わっただけで品質に影響することがあります。

自動車業界などでは鋼材の生産場所が変わるような場合、工程変更の申請がそもそも必要です。鋼材を使った製品を作る側も、品質、特性などに変化がないか試験が必要となり、いきなり鋼材が不足するとなった場合、対応に苦慮することが多い実情があります。

業界によっては考えられないかもしれませんが、需給バランスがあわずに材料が不足してくると納入数量を鋼材メーカー側でコントロールするため、値上げに応じないユーザーに対しては大きく納入数量が減ってしまうこともあります。例えば、10トン発注していたのに実際に納入可能なのは8トンのみ、といった具合です。

ほとんどの工業製品、金属製品は材料がなければ生産自体着手できないため、鋼材の需給動向にはコストだけでなく、安定して調達できるかどうかを注視していく必要があります。

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