水素脆性

2014年1月27日更新

水素脆性のメカニズム

金属は「水素」を吸い込む性質を持っており、これによって金属がもろくなる現象を水素脆性(すいそぜいせい)といいます。

これが起きやすい鋼材のことを水素脆化感受性の高いものという言い方もなされます。より高い硬度(HRC40以上ともいわれます)、高い引張強さをもつ高強度材、高張力鋼に多い現象です。

また、温度の影響も受け、衝撃などの際というよりは継続的にかかっている静的な負荷応力によって突発的に破損を引き起こす例が知られています。

遅れ破壊の主要因となる水素脆性

大きな力を受けると金属は形を変えてから破壊へと至りますが、この変形自体のプロセスをすっ飛ばして、いきなり脆く破壊されてしまう現象である「遅れ破壊」の主な原因のひとつでもあり、高強度部品として材料を使う場合には留意が必要な検討事項となります。

金属は硬さではセラミックスや石、ガラス等といった硬脆材料に負けますが、力を受けると伸びたり、衝撃を吸収し破壊を食い止める性質を持ちます。これら、延性、靭性、粘り強さといったパラメータとなり、金属強度を検討する際には重要な要素となりますが、水素脆化してしまったものには、これらの性能が期待できません。

水素脆化させないためには、以下のような方法があります。

水素脆性への対策

表面処理工程で吸い込まれてしまう水素を防ぐ

めっき工程は、前処理も含めて溶液を用いて行う化学反応の原理に基づきます。この過程で、鉄鋼の場合には、溶液中に水素イオンが発生してしまい、水素が吸収されてしまうことがあります。金や銀などの貴金属材料のめっきでは特に水素が発生しやすく、逆にスズ、亜鉛では発生しにくいとされます。

水素が入ってしまう可能性のある酸洗処理の時間を短くしたり、ベーキング処理とも呼ばれる脱水素処理を行うなどの方法もありますが、高強度ボルトの中でも特に強度を持つものに電気めっきすることができないのは、電気めっき工程においては水素脆化の可能性を完全に除去できないからです。

実際の使用環境で、空気中から吸い込んでしまう水素を防ぐ

上記に加えて、防錆処理をしっかり行うことで、使用中に徐々に水素を蓄えていき、金属組織が脆くなってしまうという現象を防ぐことができることも知られています。塗油や塗装も効果があることが知られています。

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