天然砥石の種類について

2010年10月20日更新

天然砥石は、山から切り出される天然の岩石を手ごろな大きさに加工したもので、産地によって様々な砥石があります。どちらかというと、玄人好みの砥石と言われますが、愛好者の幅は広く、価格も非常に高額なものから廉価なものまで千差万別です。工業用の人造砥石とは目的や求められているものが根本的に異なり、販売されている市場も全く異なります。そのほとんどが手作業で「こだわりのある包丁を研ぐ」ためのものと言えます。

人造砥石が工業的に実用化される以前は、太古よりこの天然砥石が一般的に使われていましたが、現在もなお、包丁や工具、刀などを研ぐ際に愛用されています。まさに日本で培われてきた砥石文化の一つとも言えます。

日本固有の刃物には、日本の土地でとれる天然砥石のほうが相性がよいという考え方や、研いだ際の感触(研ぐ対象と砥石のなじみ具合を「あたり」といいます)がしっくりくるという意見も根強く、料理人の間では刺身の切り口のつやが、天然砥石で研いだ包丁のほうがよいという話も聞きます。また日本刀や日本に由来する伝統的な刃物の多くは今も天然砥石のほうがよく使われています。

天然砥石の名称には、採れた産地によって固有の名称がつきます。いわゆる研磨の工程別に分類すれば、「荒砥」「中砥」「仕上砥」となります。これらの区分は曖昧で、厳密に中砥なのか荒砥なのか線引きが難しく、両者ともに該当するものもあります。自然により作り出された岩石ゆえ、産地が重要なことは言うまでもありませんが、さらに目利きたちが「発掘」し、選別して、一般に使えるよう形を整えてからはじめて使えるようになります。ものを磨くということは、その対象の表面を「削る」ことと同義ですので、天然砥石であっても研磨の原理は同じです。

天然砥石の産地と工程による分類
大分類 主な産地 砥石の名称
荒砥 和歌山県大村 大村砥
長崎県大村 平島砥、大村砥
佐賀県唐津 笹口砥
愛媛県 伊予砥
兵庫県 但馬砥
中砥 京都府 青砥、門前砥
熊本県 天草砥
群馬県 沼田砥
福井県 浄教寺砥、会津砥
岩手県 雫石砥
仕上砥 京都府 本山合砥、巣板、からす、内曇
愛知県三河 白名倉
長崎県対馬 黒名倉

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