品質とは|品質の定義と歴史

2012年11月19日更新

品質は製造業によってあまりにも身近な存在ゆえ、あらためて考えてみると様々な定義が思い浮かび、実際のところどうなのかわからなくなることがあるかもしれません。品質は分野によっては人の命にも関わる恐れがあります。

品質は字面から判断すると「品物」の「質」ということになりますが、現在の解釈では「物」に限ったものではないというが定説です。

JIS 8108による品質の定義
品物又はサービスが、使用目的を満たしているかどうかを決定するための評価の対象となる固有の性質・性能の全体
ISO8402による品質の定義
ある「もの」の、明示された又は暗黙のニーズを満たす能力に関する特性の全体。※有形物の品質、無形物の品質を問わず、すべて品質である。
品質が意味する範囲
品質 製品品質 設計品質(狙いの品質)
製造品質(出来栄えの品質)
サービスの質
(アフターケア、フォロー、納期、価格、コミュニケーションなど)

品質とはこれらを総合した概念であり、近年では「仕事の質」という部分にまで拡張されつつあります。

 

製造現場での品質活動が活発化し始めた1950年代には、品質とはすなわち製品品質を表していました。これは生産者が製品を提供するプロダクトアウト志向で、よいものを作れば売れる、だから製品の品質に徹底的にこだわっていくという考え方が底流にありました。それが60年代、70年代に入り、製造現場以外にも製造品質を改善するための活動が広がり、TQC(Total Quality Control)という考え方が生まれました。これは製造だけでなく、技術は生産技術、購買、資材、営業、総務など製造品質にかかわることを全社で取り組んでいこうという流れです。日本はこの部分を徹底的に鍛えこみ、ジャパンクオリティを世界に知らしめることになりました。90年代に入ると、ここからさらに進み、仕事の質、経営品質といった全社改善活動が行われるようになり、TQM(Total Quality Management)の考え方が生まれました。

 

このように時代とともに品質の示す範囲はどんどん広がりを見せており、行き着くところは徹底した顧客志向であり、絶えざる改善活動と、製造現場にとどまらず、全社的に各部門が連携して取り組んでいくべきものに変わってきています。

 

もっとも、品質には価格の低減も重要な要素になっているのがグローバル化時代のものづくりの特徴です。このため、品質へのあくなき追求がそのままコストに跳ね返るようでは、本末転倒になってしまいます。日本の製造業の多くは海外への生産拠点の移転や、現地調達の推進、工程の簡略化などでこうした低価格競争に対抗していますが、それでも中国、台湾、韓国勢、ASEAN諸国などアジア圏だけでも苦戦を強いられているのが現状です。

 

品質の規格値に入った低コスト量産品を作るという発想だけでは、日本の製造業の優位性が危うくなっています。

 

より広い意味での品質が受け入れられる土壌で、新興国には容易にまねの出来ない「高品質」を実現していく必要に迫られています。

 

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