S55C-CSPの成分、比重、硬度、引張強さ|ばね用冷間圧延鋼帯に規定されたS55Cの物性

2013年6月14日更新

ばね用の冷間圧延鋼の場合、S50Cの次のグレードはS55Cとなります。同じく機械構造用炭素鋼としての規格で同じ名称の材料があり、成分は基本同じですが、ばね用についてのみ主要5元素である炭素、シリコン、マンガン、リン、硫黄以外の成分の下限の値が設けられています。

薄板ばねを想定した鋼材のため、板金ではわりとよく目にする規格ですが、一般的なバネとしてはばね鋼鋼材としてSUP材のほうがよく知られます。硬度の中心値については、S50Cのものと違いはほとんどありません。

S55C-CSPの特性

S55C-CSPの成分

S55C-CSPの成分
材料記号 C Si Mn P S Cu Ni Cr Ni+Cr V
S55C-CSP 0.52から0.58 0.15から0.35 0.60から0.90 0.030以下 0.035以下 0.30以下 0.20以下 0.20以下 0.35以下 -
S55C-CSPの熱処理記号
A 焼き鈍しをしたもの
R 冷間圧延のままのもの
H 焼入れ焼戻しをしたもの
B オーステンパをしたもの

AとRの場合は、特に指定や取り決めがない場合、表面はブライト仕上げとなります。表記はS55C-CSP A、S55C-CSP Hといった形になります。

S55C-CSPの比重

比重について特に規定はありませんが、成分から概算を算出することはできます。

鉄鋼材料の基本となる比重である7.876を基準に、含有している炭素量の加太から概算を割り出す方法としては、以下の計算式があります。

  • 比重=7.876−0.030×炭素(%)

S55C-CSPの硬度について

硬度の規定のうち、R、H、Bについては、中心値として硬度を指定してもよい範囲を示しています。

硬度の許容差は、施されている熱処理によって異なり、Rについては±20HV、HとBについては±25HVとなっており、いずれも1条内の硬さのばらつきは、30HV以内と定められています。またAについても硬さのばらつきは、30HV以内となっています。

S55C-CSPの硬度、硬さの一覧(熱処理別)
材料記号 硬度(HV)
焼き鈍し(A)
硬度(HV)
冷間圧延のまま(R)
硬度(HV)
焼入焼戻し(H)
硬度(HV)
オーステンパ(B)
S55C-CSP 180以下 230から270 350から450 360から440

ばね用の冷間圧延鋼帯の標準厚さと許容寸法差

ばね用の冷間圧延鋼帯の標準厚さと許容寸法差(mm)
標準厚さ 厚さ(範囲) 許容差 許容差ET(幅80mm未満)
当事者間で取り決め可能なより厳しい許容差
幅200mm未満 幅200mm以上600mm未満
- 0.10未満 ±0.008 - ±0.006
0.10、0.12 0.10以上0.15未満 ±0.010 - ±0.008
0.15、0.20 0.15以上0.25未満 ±0.015 ±0.020 ±0.010
0.25、0.28、0.30、0.35 0.25以上0.40未満 ±0.020 ±0.025 ±0.015
0.40、0.45、0.50、0.55 0.40以上0.60未満 ±0.025 ±0.030 ±0.020
0.60、0.70、0.80 0.60以上0.90未満 ±0.030 ±0.040 ±0.025
0.90、1.00、1.10 0.90以上1.20未満 ±0.040 ±0.050 ±0.035
1.20、1.40 1.20以上1.60未満 ±0.050 ±0.060 -
1.60、1.80、2.00 1.60以上2.10未満 ±0.055 ±0.070 -
2.20、2.50、2.80 2.10以上3.00未満 ±0.065 ±0.080 -
3.00、3.50、4.00 3.00以上4.00以下 ±0.080 ±0.090 -

ばね用として規格化されている冷間圧延鋼帯の幅の許容差

この範囲外のサイズを持つ鋼帯(厚さが0.25mm未満、厚さ4mmを超える、幅600mm以上などの鋼帯)については、当事者間での取り決めによるため、規格には規定されていません。

ばね用冷間圧延鋼帯の幅の許容差
厚さ
80mm未満 80mm以上200mm未満 200mm以上600mm未満
0.25以上0.60未満 ±0.10 ±0.15 ±0.25
0.60以上1.20未満 ±0.15 ±0.20 ±0.30
1.20以上4.00以下 ±0.20 ±0.25 ±0.40

板の長さの許容差は、2000mm未満のものと2000mm以上4000mm未満の区分でまず分かれています。

長さの許容差
長さ
200mm未満 200mm以上600mm未満
2000mm未満 +5
0
+10
0
2000mm以上4000mm未満 +10
0
+20
0

ばね用冷間圧延鋼帯の横曲がりについて

冷間圧延鋼帯のうち、ばね用のものに固有の規格として横曲がり(反り)のパラメータがあります。長さ1000mmあたりのしなりの最大値を規定したもので、両端については適用除外となります。熱処理(調質)の種類によって鋼材の硬さも変わるため、異なる規格値が適用されます。

横曲がり(反り)の最大値(単位:mm)
調質(熱処理)
5以上10未満 10以上20未満 20以上40未満 40以上80未満 80以上
A(焼鈍し)、R(冷間圧延したまま) - 8 6 3 1
B(オーステンパ) - 5 5 2 1
H(焼入れ焼戻し) 2 2 2 2 1

「JIS G 4802 ばね用冷間圧延鋼帯」に規定のある材料記号

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