結晶性プラスチックと非晶性プラスチックの違いと比較

2019年9月29日更新

熱可塑性のプラスチックは結晶性プラスチックと非晶性プラスチックの二つに分けることができます。昨今はエンプラ(エンジニアリングプラスチック)やスーパーエンプラに代表されるように、高機能なプラスチックが工業材料として様々な製品に使われており、個々の性能を比較せずにひとくくりにするのは難しいのですが、一般的に当てはまるこれら2つのプラスチックの違いがどのような点にあるのかを比較し表にまとめました。実態としては、結晶性と非晶性という分子構造の違いからは傾向のようなものはありますが、必ずしも特性の違いが結晶性、非晶性の別によって説明がつく訳ではないので、個別の材料ごとに性質を見ていく必要があります。

まず、プラスチックの分類は「熱可塑性プラスチック」と「熱硬化性プラスチック」の二大分類がなされ、その中で大多数を占める熱可塑性プラスチックは、結晶性プラスチックと非晶性プラスチックに分けることができます。

熱可塑性は、熱をかけると溶けるタイプのプラスチックで、例えるならチョコレートのようなものです。対して、熱硬化性は、熱を加えると硬くかたまるタイプで、例えるならクッキーのようなプラスチックと言い換えることもできます。

プラスチックの分類方法
熱可塑性プラスチック 結晶性プラスチック
非晶性プラスチック
熱硬化性プラスチック

プラスチックの結晶性と非晶性とは何か

熱可塑性プラスチックの結晶性、非晶性の違いというのは分子構造が規則正しく並んでいるのが結晶性であり、そうではないものが非晶性となります。分子の構造はいずれも線状高分子、一次元高分子といわれる構造をしています。

この分子構造の違いがそのまま性質や特性に大きく影響する要素と、あまり影響しない要素とがあります。比重や耐熱性については分子構造は影響しないので、結晶性と非晶性の違いで共通性のようなものは見出せませんが、耐薬品性を見た場合、一般的に非晶性プラスチックは有機溶剤に対して弱い傾向を示すといった共通性があります。もっとも非晶性であっても、スーパーエンプラに分類されるPAIやPEIなどは高い耐薬品性を持ちます。

同様に、非晶性のプラスチックは透明性に優れたものが多く、結晶性は不透明なものが主流です。結晶性プラスチックは、非晶性に比べ、耐油性や耐グリス性、潤滑性、摺動性、耐摩耗性、耐摩擦性についても優れたものが多い傾向がありますが、これも一概には言い切れない部分があり、たとえば耐油性については非晶性プラスチックでも、硬質PVCやPSU、SANは良好な耐性を持ちます。

プラスチック材料を選ぶ際は、分子構造のほか、個々の材料ごとに性質・コスト・加工特性などを比較して検討することが肝要となります。

 
結晶性プラスチックと非晶性プラスチックの違い
比較内容 非晶性プラスチック 結晶性プラスチック
代表的なプラスチック ポリスチレンABS樹脂ポリ塩化ビニル、塩化ビニル樹脂アクリル樹脂、メタクリル樹脂PVA樹脂、ポリビニルアルコールポリカーボネート ポリエチレンポリプロピレンPET樹脂、ポリエチレンテレフタレートポリ塩化ビニリデンナイロン6(ポリアミド)ナイロン66(ポリアミド)アセタール樹脂、ポリアセタールポリフェニレンスルファイドポリテトラフルオロエチレン、フッ素樹脂
透明性 透明度の高いものが多い 半透明、不透明なものが多い
寸法精度 良好 非晶性に劣るものが多い
寸法安定性 良好 非晶性に劣るものが多い
成形収縮率 小さいものが多い(0.4%前後から0.8%前後) 大きいものが多い(1.5%前後から2.5%前後)
強度(弾性率)※プラスチックの個々の種類や添加するフィラーによる 比較的低め 非晶性に比べ高いものが多い
耐薬品性 スーパーエンプラ等を除くと一般に有機溶剤に弱いものが多い 一般に耐有機溶剤性、耐油性、耐グリス性等は非晶性樹脂に比べ良好なものが多い
耐ストレスクラック性 良好 非晶性に劣るものが多い
耐ケミカルクラック性 良好 非晶性に劣るものが多い
耐疲労性 良好 非晶性に劣るものが多い
耐熱性 分子構造による明確な違い無し
比重 分子構造による明確な違い無し
耐候性、紫外線による劣化 PCやPMMAなど耐紫外線性に比較的良好なものがある。 PEやPPなど紫外線劣化には弱い傾向がある。
接着性 有機溶剤に溶解しやすいので接着や塗装での密着力高い 有機溶剤に比較強いため、溶剤系の接着や塗装では密着性が低め

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