ポリカーボネート(PC)とABS樹脂の違い|比較

2013年9月1日更新

工業的にはポリカーボネートとABS樹脂の用途が被るのは、キャリーケースやスーツケース、アタッシュケースなどでプラスチック材料を用いたカバン類が一番多くなります。他の用途では、比較や競合の対象とはなり難いのですが、同じプラスチックとしてその違いを比較すると次のような点について挙げることができます。

ポリカーボネートの概要

PCの略称を持ち、ポリカとも呼ばれます。ポリカーボネートはガラスと比較されることもある高い透明度を持つプラスチックで、特にその耐衝撃性の高さとプラスチックの中では高い耐熱性を持つことから工業利用が広がった材料の一つです。光学部品や車のヘッドランプなどにも使われています。

ABS樹脂の概要

ABS樹脂はポリスチレンを改良して作ったAS樹脂にさらにポリブタジエンというゴムを添加して作ったプラスチックで、不透明品が多いですが、透明で光沢のあるものもあります。耐薬品性、耐衝撃性、プリント性能に優れる樹脂であり、電気製品の外装、OA機器類、自動車部品、家庭用品全般、玩具など幅広く使われる汎用プラスチックの一つといえます。複数のポリマーをブレンドしているため、ポリマーアロイの一つです。ガラス繊維などで強化したものもあります。

ポリカーボネートとABS樹脂の比較

常用温度、耐熱性、耐熱温度

ABS樹脂の耐熱温度は70〜100℃、ポリカーボネートの耐熱温度は120℃〜130℃となっています。ガラス転移温度の高いポリカのほうが若干ですが、耐熱性には優れているといえます。

耐衝撃性

ABSも耐衝撃性にはそれなりに優れたプラスチックなのですが、ポリカーボネートは衝撃に対する強さを最大の強みともするプラスチックであり、ABS樹脂よりもこの点で優れているといえます。

耐薬品性

ABS樹脂は強酸に弱い性質があり、またケトンやエステルなどの有機溶剤に対してはひび割れや溶解などを引き起こします。ポリカーボネートもアルカリ性の薬剤、溶剤には弱い性質があります。

耐候性

紫外線などがあたる環境や日光にさらされるようなところだとプラスチックは黄変劣化などを起こし、ボロボロになってしまいますが、両者についても長時間の曝露では劣化を免れることができません。

透明性

ABSも光沢があり透明ですが、若干色味がついています。ポリカーボネートは光学部品にも使われるほどクリアな透明度を持ちます。スーツケースやキャリーケースとして比較する場合は、透明性は不要となるため、色彩やプリント性のよさなどのデザイン面のほうが重要な意味を持ちます。 /p>

可燃性

ポリカは不燃性に優れますが、ABS樹脂は燃焼するプラスチックです。充填するフィラーによってある程度の性能を変えたり、機能を付加することもできますが、ベースの材料を根本的に変えてしまうことはできません。

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