PEEK樹脂(ポリエーテルエーテルケトン)の物性と用途、特性について

2020年2月14日更新

PEEK樹脂は、正式名称をポリエーテルエーテルケトン樹脂といい、結晶性のプラスチックの一つで英語ではPolyether ether ketoneの表記となります。以下に耐熱温度や物性などの特徴を見ていきます。高コストであるという欠点があるため、用途についてはポイントを選んで使うなどの工夫が必要です。炭素繊維で強化したFRPとして使われるPEEK板は、軽く強度、耐熱に優れた素材であるため、軍事用途でも使用されます。一時は輸出貿易管理令で規制対象ともなっていました。ガラス繊維で強化すると300℃近い耐熱温度を発揮するといわれています。イギリスのICI社で1980年代に開発されたものです。

難燃性、耐熱性に優れたPEEK

PEEK樹脂は、プラスチックの中でも、耐熱性、強度に特に優れているスーパーエンプラ(SEP、スーパーエンジニアリングプラスチック)の一つです。

結晶性のプラスチックで、融点が334℃と高く耐熱温度に優れるだけでなく、機械的性質にも優れ、UL温度指数も240℃と高いパラメータを持ちます。熱安定性に優れ、高温での流動性もよいので射出成形にも適しているため、大量生産にも向きます。

薬品への耐性についても、濃硫酸、硝酸と一部の有機酸以外には優れた耐性を持つほか、耐熱水性にも優れます。

難燃剤を添加しなくとも、難燃性の材料であり、発煙もPESより少ないプラスチック材料です。

機械的性質については、耐摩擦、摺動特性にも優れ、トライボマテリアルとしても単体や複合体の形で使われることがあります。またPEEKのフィラーとして炭素繊維を添加した強化プラスチックが、航空機構造部材に検討されたことでも話題となりました。

引張強度では97から224MPaまで出ると言われています。

耐薬品と耐摩耗、耐熱性、機械的強度で突出した性能を持つスーパーエンプラで、ポリアミドイミドにも匹敵する素材です。

PEEK樹脂(ポリエーテルエーテルケトン)の物性、特性
物理的性質 密度(g・cm^-3) 1.3
融点(℃) 結晶性 334
非晶性
透明度
吸水率(%)3mm、24h
成形特性 成形温度範囲(℃)
成形圧力範囲(kgf・cm^-2)
成形収縮率(%) 4.7
機械的性質 引張強さ(kgf・mm^-2) 100
最大伸び率(%) 60
圧縮強さ(破壊、降伏)(kgf・mm^-2)
曲げ強さ(破壊、降伏)(kgf・mm^-2) 170
引張弾性率(kgf・mm^-2)
圧縮弾性率(kgf・mm^-2) -
曲げ弾性率(kgf・mm^-2)
アイゾット衝撃値(kgf・cm・cm^-1)
硬度(硬さ) ロックウェル
ショア -
熱的性質 熱伝導率(10^-4cal・s^-1cm^-2)(K・cm^-1)^-1
比熱(cal・K^-1g^-1)
線熱膨張率(10^-5K^-1) 7
熱変形温度(℃)
18.6kgf・cm^-2
4.6kgf・cm^-2
156
電気的性質 体積抵抗率(Ω・cm)(23℃、50%RH相対湿度)
絶縁強さ(短時間法)(3.18mm)/kV・mm-1
比誘電率(εγ 60Hz
MHz
誘電正接(tanδ) 60Hz
MHz
化学的性質、耐薬品性 燃焼性、速度(mm・min-1
日光の影響
弱酸の影響
強酸の影響
弱アルカリの影響
強アルカリの影響
有機溶剤の影響

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