ゴムの加硫とは

2013年3月2日更新

ゴムは伸び縮みする点に最大の特徴のある材料の一つですが、これが可能となるためにはゴムの内部の分子同士が結びついている必要があります。

この分子同士を結びつけることを、橋をかける、と書いて「架橋」といいますが、これをなしうる工程が加硫と呼ばれる工程になります。

ゴムの分子は、加硫前の状態では鎖状のものになっていますが、加硫を行うことで鎖状の分子をそれぞれつなぎ、網目状にしてやります。これによって伸びたゴムが元に戻ろうとする性質を持つことができます。

この加硫(架橋)反応を起こすには、硫黄を用いる方法と、硫黄を使わない方法の二通りがあります。

通常は硫黄を使い、さらに反応にはある程度の熱が必要なのと、短時間で加硫を終わらせるために「加硫促進剤」というものを使います。

硫黄を使わない場合は、その代わりとなる物質として、金属酸化物、樹脂、パーオキサイドなどを使うことになります。

ゴムは加硫を行わないと、製品として使うことはできません。ゴムを製品として加工しているメーカーでは、加硫を行うタイミングが重要なため、未加硫の状態のゴムについては、加硫が起こらないよう、倉庫の温度をある程度コントロールしています。

加硫を行うことでゴムが伸び縮みし、私たちが一般的に知っているゴムの性質を持つことは述べましたが、加硫ゴムには他に次のような性質が発現します。

水、溶剤、油の液体、薬品などに長時間触れた状態にしておくとそれらを吸って「膨潤現象」を起こす場合があります。これはゴムの変形や物性を低下させるため、望ましい現象ではありませんが、長期間の運用ではこれらも想定しておく必要があります。

ゴムは加硫の際にある程度の熱が必要と述べましたが、完成したゴムは熱によって劣化します。ゴムの種類に応じた耐熱温度を超える高温環境での使用は当然問題ですが、耐寒性も重要な点となります。というのも、高温では粘着してしまったり、軟化して変形するという問題がありますが、ゴムは低温環境では硬化してしまって、亀裂が発生したり、物性が下がるといった問題が生じるからです。

またゴムはオゾンによる強い影響を受ける材料です。製品となるゴムにはオゾン老化防止剤などを入れてこれを防止することもありますが、EPDMのようにもともと耐オゾン性に優れたゴムもあります。

ゴムの種類の一覧

スポンサーリンク

>このページ「ゴムの加硫とは」の先頭へ

加工材料の性質と特徴(目次)へ戻る
「ゴムの種類と特性、物性について」へ戻る

ゴムの加硫とはの関連記事とリンク

ゴムの記号と略号の一覧
ゴムの硬度の一覧
ゴムのSP値の一覧
ゴムの比重
ゴムの耐熱温度
ゴムの耐寒性と耐寒温度の限界
ゴムの耐候性と耐オゾン性
ゴムの摩擦係数
ゴムの耐磨耗性

砥石からはじまり、工業技術や工具、材料等の情報を掲載しています。製造、生産技術、設備技術、金型技術、試作、実験、製品開発、設計、環境管理、安全、品質管理、営業、貿易、購買調達、資材、生産管理、物流、経理など製造業に関わりのあるさまざまな仕事や調べものの一助になれば幸いです。

このサイトについて

研削・研磨に関わる情報から、被削材となる鉄鋼やセラミックス、樹脂に至るまで主として製造業における各分野の職種で必要とされる情報を集め、提供しています。「専門的でわかりにくい」といわれる砥石や工業の世界。わかりやすく役に立つ情報掲載を心がけています。砥石選びや研削研磨でお困りのときに役立てていただければ幸いですが、工業系の分野で「こんな情報がほしい」などのリクエストがありましたら検討致しますのでご連絡ください。toishi.info@管理人

ダイヤモンド砥石のリンク集

研磨や研削だけでなく、製造業やものづくりに広く関わりのあるリンクを集めています。工業分野で必要とされる加工技術や材料に関する知識、事業運営に必要な知識には驚くほど共通項があります。研削・切削液、研削盤、砥石メーカー各社のサイトから工業分野や消費財ごとのメーカーをリンクしてまとめています。

研磨、研削、砥石リンク集