キュプラ繊維の特徴|キュプラの強度、耐熱性、品質表示、耐久性から強度まで

2016年2月15日更新

キュプラは、レーヨンやポリノジック、リオセルと同様に再生セルロース繊維と呼ばれるカテゴリーに入る化学繊維のひとつです。キュプラは別名、ベンベルグとも呼ばれます。

品質表示上は、銅アンモニア繊維が使われている衣類に対して「キュプラ」と表示することになっています。レーヨン、ポリノジック、アセテート等とは区別されます。

天然に存在する綿の短い繊維であるコットンリンターを薬品を溶かして繊維に加工したものがキュプラです。したがって、原料は「綿」であり、セルロースを主成分としています。この点、木材パルプを溶かしてセルロースを取り出し、繊維として加工していくレーヨンとポリノジックとは成分が同じであっても出発「原料」自体は異なるということになります。

キュプラの名称は一般名詞になっていますが、正式には銅アンモニアレーヨンと呼ばれます。なめらかで肌触り、すべりのよい風合いを持つ繊維で、水にぬれた際の強度である湿潤強度については、レーヨンと違って低下しない傾向にあります。ただしもともと耐久性に優れた繊維ではありません。

キュプラの歴史は、化学繊維の中でも古い部類で、レーヨンの製造に成功した1884年のすぐ後、1890年にまでさかのぼります。

キュプラの性質と特徴

綿花の種子のまわりにあるごくごく短い短繊維であるコットンリンターに含まれている「セルロース」を原料としています。

いったんこれらの天然素材を薬品で溶かして繊維に再生することから、再生セルロース繊維に分類されています。

とにかく細い糸をつくることができ、まさに人造の絹である「人絹」にふさわしい風合いの繊維です。基本性能の多くはレーヨンと似通っていますが、湿潤強度低下の弱点は若干改善されています。

キュプラ繊維の構造

繊維断面はほぼ円形をしており、なめらかな表面を持っています。また繊維の内部は詰まった構造をしています。レーヨンと違い、スキン・コア構造の別はありません。

キュプラ繊維の長さ、太さを表す単位

キュプラも化学繊維であるため、dtex(デシテックス)で繊維の太さや重量を表記することが多いです。テックスは標準長1000メートルで、標準重量1グラムあるものを1texと表記します。10dtexが1texとなります。

基本、長繊維(フィラメント)として使われます。

キュプラ繊維の用途

レーヨンと似た用途が多く、スーツ・背広などの裏地や肌着、その風合いから各種婦人服にも好まれる傾向があります。下着やスカーフのほか、和装小物や和服にも使われる繊維です。また、インテリア用としてはカーテンや布団類、座布団としての利用もあります。工業用途では、医療用品、資材用品、ワイピングクロスとしての用途があります。

キュプラのメリット、デメリット

人造の絹という側面が強い繊維であるため、化繊の強みを生かした使われ方がなされます。

キュプラ繊維のメリット

きわめて細い糸を天然原料であるセルロースから作ることができます。やわらかさと風合いは絹に近く、美しい光沢もあります。薄物や裏地に多用される所以です。

絹とは違い、日光によって変色しにくく、染色性にも優れます。吸水性、吸湿性にも優れた化繊です。耐熱性もレーヨンに準じるため、高い部類です。

キュプラ繊維のデメリット

しわや縮みの問題が他の再生セルロース繊維と同様にあります。また、薄物に使われることが多いため、洗濯の際にかたくしぼったり、摩擦などによっていためてしまうことがあります。

キュプラの性能

次にキュプラ繊維の物理的性質や、化学的性質について見ていきます。

キュプラ繊維の比重

キュプラの比重は1.5で水には沈みます。レーヨンや麻、綿といった繊維とほぼ同じ比重となります。

キュプラの公定水分率

繊維は、プラスチック等の塊と異なり、きわめて細長い特殊な形状をしていることから表面積も多く、取引の段階で重量をはかる際、すでに水分を吸ってしまっています。このため、繊維によってどのくらいを水分量として見るか繊維ごとに定められています。

衣服、布、ロープ等の吸水性は繊維が糸に加工され、糸が布やロープ等に加工されるため、形状なども深くかかわりがありますが、公定水分率も繊維自体のもつ吸水性能を見るひとつのパラメータということもできます。

キュプラは再生セルロース繊維ということもあり、化繊のなかでは高い吸湿性、吸水性を持つ繊維となります。

キュプラの耐熱性

軟化や溶融をしないという性質は、レーヨンと同じで健在です。

キュプラの持つ耐熱温度、どのくらいまでの熱に溶けないか、軟化しないか、外気に野ざらしにした場合の耐候性について下表にまとめました。

キュプラの耐熱温度
耐熱性、耐熱温度 軟化点 軟化はしません。
溶融点 溶融しませんが、260から300℃程度になると着色分解します。
耐候性 屋外への長期曝露で強度はやや低下します。

キュプラの引張強度

どのくらいの力まで引っ張っても千切れることがないかを示す引張強度については、繊維の場合、乾燥した状態と湿った状態とでは性能が異なります。

レーヨンほど水にぬれても強度は低下しませんが、強度がある繊維ではありません。

キュプラの引張強さ|湿強度、乾強度、伸び率
繊維の種類 引張強さ(cN/dtex) 伸び率(%)
乾燥 湿潤 乾燥
キュプラ フィラメント:1.6から2.4 フィラメント:1.0から1.7 フィラメント:10から17

キュプラの化学薬品への耐性|耐薬品性と特殊溶剤

薬品に対する耐性は他の再生セルロース繊維と似通っています。

特殊溶剤は、この繊維を溶解させる特殊な溶剤が何かを示しています。

繊維自体を溶かす作用をもつ薬品が何かを下表にまとめました。苛性ソーダは水酸化ナトリウムであり、強アルカリの代表的なものとなります。塩酸、硫酸、蟻酸、酢酸などいずれも酸性となります。

キュプラの耐薬品性
苛性ソーダ(5%、煮沸) 溶けない
塩酸(20%、室温) 溶けない
硫酸(70%、室温) 溶ける
ギ酸(80%、室温) 溶けない
氷酢酸(煮沸) 溶けない
特殊溶剤 銅アンモニア、銅エチレンジアミン

繊維の種類と特徴

スポンサーリンク

>このページ「キュプラ繊維の特徴|キュプラの強度、耐熱性、品質表示、耐久性から強度まで」の先頭へ

「繊維の種類と特徴」へ戻る
加工材料の性質と特徴(目次)へ戻る

キュプラ繊維の特徴|キュプラの強度、耐熱性、品質表示、耐久性から強度までの関連記事とリンク

繊度の換算|テックス、デニール、綿番手、メートル番手への換算
繊維の引張強度の比較

砥石からはじまり、工業技術や工具、材料等の情報を掲載しています。製造、生産技術、設備技術、金型技術、試作、実験、製品開発、設計、環境管理、安全、品質管理、営業、貿易、購買調達、資材、生産管理、物流、経理など製造業に関わりのあるさまざまな仕事や調べものの一助になれば幸いです。

このサイトについて

研削・研磨に関わる情報から、被削材となる鉄鋼やセラミックス、樹脂に至るまで主として製造業における各分野の職種で必要とされる情報を集め、提供しています。「専門的でわかりにくい」といわれる砥石や工業の世界。わかりやすく役に立つ情報掲載を心がけています。砥石選びや研削研磨でお困りのときに役立てていただければ幸いですが、工業系の分野で「こんな情報がほしい」などのリクエストがありましたら検討致しますのでご連絡ください。toishi.info@管理人

ダイヤモンド砥石のリンク集

研磨や研削だけでなく、製造業やものづくりに広く関わりのあるリンクを集めています。工業分野で必要とされる加工技術や材料に関する知識、事業運営に必要な知識には驚くほど共通項があります。研削・切削液、研削盤、砥石メーカー各社のサイトから工業分野や消費財ごとのメーカーをリンクしてまとめています。

研磨、研削、砥石リンク集