チタン合金、純チタンの特性と種類、用途について

2010年12月14日更新

軽くて強度に優れたチタン合金

チタンは非鉄金属の中で、実用化されたのは比較的新しい素材で、近年急速に利用が広がっている材料の一つです。チタンを特色付ける最大の利点は、なんと言っても軽くて強い、つまり「比強度の高さ」にあります。比強度とは、密度辺りの引張強さを示す指標で、値が大きければ大きいほど軽いわりに強度が高いということになります。非鉄金属の中ではトップクラスといえます。

チタンの耐食性

またこの強度と軽さのほか、耐食性、耐熱性に優れた素材です。耐食性については、特に耐海水性(白金にも匹敵するため、海水に対しては特に強い金属です)も持ち合わせており、海水での使用が想定された装置にもよく使われます。

腐食に強い理由としては、アルミやステンレスと同様に金属の表層面に薄さがナノ単位の酸化皮膜が保護膜として形成されているためです。これも破損すると酸素と反応して修復されますが、酸素がなかったり、強い還元の起きる環境や薬剤に対しては壊れた酸化皮膜が再生できず、腐食します。したがって、酸化性の酸である硝酸や塩素イオンを含む環境ではめっぽう腐食に強くなりますが、還元性の酸(塩酸、硫酸、りん酸)では腐食しがちです。他の金属と同様、特定の添加元素を入れたチタン合金の中にはこうしたウィークポイントを改善したものもあります。

チタンの耐熱性、低温靭性

 耐熱性については、同じく比強度の高いアルミニウム合金が200℃前後で急速に強度を低下させていくのに対し、チタン合金の場合は500℃まではステンレスをも上回る機械的強度を示します。ロールスロイスなどの航空機エンジンメーカーがこの材料を採用しているのは、軽量化をはかるための比強度のほか、この耐熱性も関係しています。  金属材料の中には、極低温化で「低温脆性」により金属組織がもろくなり、強度が維持できなくなる素材も多いですが、チタンについてはかなり強い低温靭性を持っており、こうした極低温の環境下でも使用に耐えうる材料候補の一つといえます。

チタン合金、純チタンの種類

チタンには大別すると、「純チタン」(JISでは4種類)と「チタン合金」があります。前者は商業的に純度が高いという意味、Commercially Pure Titaniumを略してCPチタンとも言われます。チタンは、他の金属系材料にも増して、わずかなppm単位の不純物が特性に大きく影響を及ぼす金属です。種類ごとに厳密な規格が定められています。

 チタン合金には、「耐食性」の向上を主目的としたものと、「機械的な強度」「加工性」の向上を主目的としたものとに分かれます。一般に、耐食性を向上させたものは純チタンにわずかな添加元素を加えたものであり、強度や加工性・溶接性もこれに準じたものとなるため、チタン合金は後者のタイプを示すことが多いです。

チタン合金の種類は5タイプ

チタンも金属であり、内部に固有の結晶構造を持ちます。この組織から、下記の表の5パターンに分類できます。

チタン合金の5類型の特徴
α合金(組織) ニアα組織 α−β合金(組織) ニアβ組織 β合金(組織)
耐食性に特に優れます。溶接性・クリープ特性など高温環境が影響する指標でも優れた値を示すチタン合金です。耐熱性(高温下での耐酸化性)が求められる環境下での使用や反対に極低温などでも脆性破壊を起こしにくく延性や靭性に富んでおり、実用化されています。熱処理によって強度の向上は望めません。 α合金に近い組織を持ちますが、α−β合金とα合金の中間的な存在です。 α合金とβ合金の持つ特性、特に延性と強度をバランスよく組み合わせた二相系です。チタン合金の代表格で、延性、靭性、加工性、溶接性、強度でバランスの良い高さを持ちます。耐食性に優れます。 β合金に近い組織を持ちますが、α−β合金とβ合金の中間的な存在です。 チタン合金の中でも最も強度に優れたものとなります。もともと強度の高いタイプですが、溶体化時効処理によってさらに高強度になります。耐食性を向上させたタイプもあります。加工性に優れたチタン合金です。
  密度→大きい
(β組織が多くなると高くなる)
  成形性、加工性→良くなる
(β組織が多くなると良好に)
  強度→高くなる
(β組織が多くなると上がる)
  破壊靭性→高くなる
(β組織が多くなると上がる)
強くなる←高温強度
(α組織が多くなると上がる)
 
良くなる←溶接性
(α組織が多くなると良くなる)
 
大きい←ヤング率
(α組織が多くなると大きくなる)
 
工業用の純チタンの代表値
融点 約1668℃
比重 4.5
縦弾性係数 108500N/mm2
電気抵抗 55μΩ・cm
線膨張係数 8.4x10-6/℃
磁性 非磁性のため磁石につきません。

JIS規格に定められている純チタン、チタン合金の種類

チタンの展伸材

展伸材とは、スポンジチタン、チタンインゴットを経て、板材、条材、シームレスパイプ、管、棒材、線材などに加工された状態のチタン材料のことです。チタンの材料記号には下記のような法則があります。

TP 板、熱間圧延は末尾にH、冷間圧延は末尾にCがつきます。例:チタン1種の熱間圧延板はTP270H
TR
TTP、TAT、TATP 継目無管(シームレスパイプ、シームレス管)
TTH、TATH 熱交換器用チタン、熱交換器用チタン合金管
TB、TAB
TW、TAW

チタン合金別の特性

チタンの鍛造品

チタンの鋳物

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