電着ダイヤとメタルダイヤでは、どちらが目詰まりしにくいか

2012年7月3日更新

加工する材料の性質と、どのように使うのかにもよりますが、一般論で言えば、電着メタルのほうが目詰まりはしにくく、目が詰まっても被削材をはらい落としやすいといえます。

砥石の構造上、電着ダイヤとは、ごく単純化していえば、S45Cなどのシャンク(台金)にNiメッキをつけ、ダイヤを接着させたものです。ダイヤは台金の表面に一層だけ砂のようにまぶして機械的に接着させてあるという構図です。ダイヤは化学的に安定しているため、何かに取り付ける際には、機械的に支持して取り付けるしか方法がありません(一部、溶着などの例外はありますが、理論上は機械的に保持しているだけです)。ダイヤとシャンクとの密着力が弱いと、ダイヤが剥がれたり、目こぼれといった現象を起こすため目詰まり以前に研磨や研削の性能が低下するということは考えられます。

電着のメリットは、ダイヤが直接台座についているような構図をしているため、ダイヤが表面から突き出している高さが高いといえます。これは、工具がワークに切り込む際には、深く切り込めるため(いわば切れる刃がたくさん突き出しているイメージです)、相手が比較的軟らかいワークで、粘つかない材料であれば加工効率は高くなります。ただワークが硬すぎると、ダイヤの損耗が激しく、ライフの問題が出てきますので一長一短あるといえます。セラミックスやサーメット、超硬などの特に硬度の高いものの加工には注意が必要です。

一方、メタルダイヤとは、金属粉とダイヤを均一にまぜて型に入れて、焼結させてつくるダイヤモンド砥石です。ダイヤ層は表面だけでなく、砥石が減っていけば、下の層からもダイヤが出てくるため、ライフが長い特徴があります。また、ダイヤの保持力という観点からも、電着よりは強い力でダイヤをキープできることが期待できますので、目こぼれなどは起こしにくくなっています(ボンドの硬さと粒度、ワークの硬さ、加工条件によってはメタルボンドも目こぼれをおこします)。ただこの保持力は強ければよいというものでもなく、強すぎればダイヤの頭だけ摩滅して、ボンドが硬くて減らないと、次のダイヤが頭を出すことなく、砥石の切れ味が出なくなります。この状態になると、「焼け」の問題が発生するため、メタルダイヤではむしろこの状態にならないよう留意する必要があります。目詰まりは、ボンドがうまく減っていかないことで起こる現象でもあります。

メタルダイヤの場合、目詰まりした場合はドレッシングにより切れ味を元の状態に戻してやることが出来ますが、このドレスの間隔が短すぎると、砥石の減りもはやく、作業効率も低下することからなるべくならドレッシングの回数が少なくてすむものを使いたいものです。

スポンサーリンク

>「電着ダイヤとメタルダイヤでは、どちらが目詰まりしにくいか」についての先頭へ

砥石Q&A一覧へ戻る

「電着ダイヤとメタルダイヤでは、どちらが目詰まりしにくいか」についての関連記事とリンク

砥石の目詰まりがよくおきます
砥石の目詰まり
砥石のドレッシングについて
焼結ダイヤモンド砥石
電着工具、電着砥石のメリット、デメリットについて
ボンド(結合材)の種類:メタル、レジン、ビト、電着
ダイヤモンドホイールのメーカー、販売会社の一覧

このサイトについて

当サイトの記事はすべて工業製品のメーカーの実務経験者が執筆しています。

砥石メーカーの製品や技術を紹介するサイトとしてはじまりましたが、加工技術・工具・研削・研磨に関わる情報から派生し、ユーザーの問い合わせに応じて鉄鋼、非鉄、貴金属、セラミックス、プラスチック、ゴム、繊維、木材、石材等製造に使用する材料・ワークの基礎知識についても掲載するようになりました。その後、技術情報に限らず、製造業で各分野の職種・仕事を進めるうえで役立つノウハウも提供しています。

製造、生産技術、設備技術、金型技術、試作、実験、製品開発、設計、環境管理、安全、品質管理、営業、貿易、経理、購買調達、資材、生産管理、在庫管理、物流など製造業に関わりのあるさまざまな仕事や調べものの一助になれば幸いです。

工業情報リンク集

工業分野のメーカーや商社を中心に、技術、規格、ものづくりに広く関わりのあるリンクを集めています。工業製品の生産に必要とされる加工技術や材料に関する知識、マーケティングから製品企画、開発、販売戦略、輸出入、物流、コスト低減、原価管理等、事業運営に必要な知識には共通項があります。

研磨、研削、砥石リンク集