ダイヤモンド砥石の切れ味に影響する要素について
ダイヤモンド砥石はその切れ味と精密さゆえに使われるようになった砥石です。実用上最も硬い材質である「ダイヤモンド」を砥粒として用いた砥石のため、一般砥石では研削が困難であったり、時間のかかる加工物であっても比較的短時間で研削加工を行なうことが出来ます。
一般砥石に比べた価格差を考えますと、ダイヤモンド砥石には寿命と共に優れた「切れ味」も求められます。研削における多くの問題、課題のほとんどは、この砥石の切れ味の問題につながると言われるほど「切れ」の問題には様々な要因が絡み合っています。
砥石の切れ味が不十分であれば、加工中にビビりを起こしたり、十分な研削ができなかったり、焼けの問題にもつながります。
そもそも、加工物よりも硬い砥石でないと研削できないわけではなく、研削・研磨のメカニズムは切削加工などとはまた違った要素が絡んできます。
- ダイヤモンド砥石の切れ味に影響する要素【砥石の仕様】
- 砥粒
- 砥粒に関しては、形状、破砕性、耐磨耗性の度合いが異なる複数のグレードがあります。破砕性のよい、つまりより破砕しやすいダイヤモンドのほうが切れ味の優れた砥石にできますが、このパラメータを単体で動かしても他のパラメータとの関係で実際の切れ味は決まります。ダイヤモンドやCBNなどは破砕する方向(面)が決まっており、形状も切れ味に影響します。ダイヤモンドは他の砥粒と比較して、熱伝導率がとても高い物質です。研削中に発生する熱が、加工物側へ逃げると、熱軟化などの問題を起こしますがダイヤモンド砥石の場合は逆に砥石側に熱を逃がすため、こうした問題が起きにくいとされます。ただ、ダイヤモンドそのものは高温下では硬さが低下しますので、熱が砥粒にとどまらずにどこかへ逃がす必要があります。レジンボンドを使った砥石で砥粒に金属コーティングされているダイヤモンドを用いる理由の一つがこれです。
- 粒度
- 粗い粒度ほど切れ味はあがります。反対に、砥石そのものの寿命は低下します。砥粒の粒径は、実際に被削材に切り込む大きさではなく、砥粒そのものの直径です。したがって、同じ粒度であっても、ボンドが違うだけで砥粒の実際の切り込み量や保持力も変わるため、切れ味や寿命も大きく変わります。
- 結合度
- このパラメータがやわらかいほうが切れ味が上がりますが、もちろん加工する対象の材質にもよります。ボンドの結合度合いは砥粒をつかんでいるグリップ力でもあります。砥粒が丸ごと落ちてしまう「目こぼれ」が起きると、砥石の寿命が低下するだけでなく、本来の切れ味も発揮されません。
- 集中度
- ダイヤモンド等の砥粒の量です。切れ刃の数を決める要素であり、ひとつの砥粒にかかる負荷や砥粒の切り込みの深さも変わってきます。ダイヤモンドが滑るようなガラスのようなワークの場合、集中度を下げたほうが砥粒がよく切り込み、切れ味があがります。
- ボンド
- 加工する対象によっても、レジン、メタル、ビト、電着などどれが最も切れ味を上げることが出来るのか変わってきます。ボンドの主な材質と加工対象の相性によっても砥石の切れ味は変わります。
- ダイヤモンド砥石の切れ味に影響する要素【研削条件】
- 切り込み量
- 切れ味を上げるためにはある程度の切込み量が必要です。研削において切り込み量が小さすぎる場合、砥粒が加工物に十分に切り込まず、表面をすべってしまい、砥石の焼けを引き起こします。ただ、切り込みが深すぎると砥石へかかる負担が大きすぎ、砥石の損耗が多くなります。またこの場合も、あまり深すぎても砥石が切れなくなり、破損や焼けの原因にもなります。
- 送り速度
- 一般には速いほうが砥石への負担が大きく、切れ味も上がりますが、上記の切り込み量と似ており、速すぎると砥石への負荷がかかりすぎて砥粒の脱落、砥石の寿命が低下します。反対に遅すぎても、砥粒が被削材の表面を滑ってしまうため、熱に起因する砥石の焼けや切れ味の低下をまねきます。
- 回転数(周速度)
- 砥石の切れ味をあげるときには、大まかに見ると二つの方向から「切れる」状態を作り出すことが出来ます。砥粒自体が加工物に切り込む深さを上げることで「切っていく」方法、比較的浅めの切り込みで、砥粒自体が加工物にあたる回数を増やして「切っていく」方法です。周速をあげることで、砥粒が加工物へあたる回数を増やす方法の場合、研削時に発生する熱が問題となります。ダイヤモンドの場合は特に熱による切れ味の低下は問題となります。
- 研削液の種類と量
- 切れ味を上げるためには、「すべりをよくしてやる」「極力、研削中の熱を逃がしてやる」の2つが重要となります。研削液、研削油は加工物と砥石の間の「研削抵抗」を減少させ、砥石が加工物を研削する際に、砥粒が微小破砕を起こすことが望ましく、磨耗・磨滅ばかりになると目つぶれにより、切れ味が著しく低下します。研削液はこれを防ぐ狙いもあります。また、ダイヤモンド砥石の寿命の項でも述べたように研削熱も減らす効果があります。研削熱は加工物の変形だけでなく、砥粒へもダメージを与え、切れ味を低下させることがあります。また、ダイヤモンドホイール等は研削中に高速で回転していますので、一見、研削液が砥石と加工物にかかっているようにも見えますが、回転が速いほどに実際には研削点に十分な液がかかっていないこともあります。研削液がかかる角度や圧力にも留意する必要があります。
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