包丁の砥ぎ方と砥石について
主に包丁や刃物砥ぎに使われる砥石は、いわゆるダイヤモンドシャープナーと言われる専用の道具と、レンガのような直方体形状の砥石とに分かれます。前者は、刃の部分を溝に差し込んで前後に動かすタイプのものが多く、溝の底に電着ダイヤモンドのシートがV字状に張り付けてあるものや焼結体の砥石がついているものがあり、これによって金属である包丁が砥げるという仕組みです。また柄の付いたスティック状の砥石を片方の手に持って、反対側に刃物を持って宙でこすりつけるように砥ぐシャープナーもあります。
ここでは伝統的なブロック状の角砥石タイプ(天然砥石もしくは人造砥石)のものを使った研ぎ方をご紹介します。
天然砥石もしくは人造砥石を使っての包丁の砥ぎ方
刺身包丁(一般家庭で使う包丁)の場合
- 砥石を水につけるか、十分に水をかけて砥石全体に水をしみこませます。つける場合、10分から20分程度つけておきます。
- 砥石を動かないようしっかり固定します。砥石を固定する治具やテーブルに引っ掛けることが難しい場合は、濡れ雑巾の上に置くだけでもある程度固定できます。
- 刃の状態によって砥石を選びます。人造砥石ならば#60などがかなり粗い部類の砥石で、刃がこぼれていたりする場合はこうした粗目からはじめます。#はメッシュと読みます。単に60番などとも言います。天然砥石を使う場合は、荒砥、中砥のいずれかを選びます。
- 砥石をまっすぐ置き、包丁は真上から見たとき砥石に対して45度くらいの角度になるようにし、刃が砥石にあたる部分に角度をつけて、まっすぐ前後に動かします。切るほうの刃が自分に向くようにします。また横から見た状態では、包丁の峰部分は軽く浮かし、刃先に重心がかかるようにします。概ね15度程度ですが、この辺は包丁によっても違い、感覚でつかむしかありません。切先から研ぎます。
- 研ぐときは、左手の人差し指、中指、薬指の3本を研ぐ部分の上にあてて、適度に圧をかけます。峰を浮かせる角度は柄を持った右手で調整します。この包丁に圧をかける3本指は、常に一番下に砥石がある状態にします。
- 次に、刃の中ほどを同じ要領で研ぎ、最後に刃元に移ります。真上から見た包丁と砥石の角度は常に45度です。真横から見た包丁と砥石の角度は砥石と接触している部分を基準に15度程度浮かせます。
和包丁(片刃の包丁)の場合、上記の手順で表側を、洋包丁(両刃)の場合は、表裏双方について行います。なお、片刃の和包丁では、裏面を研ぐときは峰を浮かせず、刃に角度をつけず砥石に完全に密着させて研ぎます。これは、片刃の場合、刃の傾斜が片側にしかついておらず、反対側は平坦になっているからです。表裏を双方砥ぐことで、はじめて鋭利な包丁になります。
裏面を砥ぐときは、砥石と包丁の接触面積が広いため、なるべく平坦な砥面にしてから用いるほうが効果的です。この裏面の砥ぎだけ、平坦度が維持しやすいダイヤモンド砥石を使うこともあります。
なお、人造砥石には一般砥粒を使った砥石と、ダイヤモンド砥石がありますが、どちらのものでも砥ぎ方に大差はありません。
出刃包丁を砥ぐ場合
研ぎ方の手順は上記の刺身包丁の研ぎ方と同じです。ただ、包丁の構造が少々違うため、切先を研ぐときには少しずつ、元からついている角度を壊さないように研ぎます。出刃包丁は峰が厚く、切先にも反りがあります。このしなやかな曲線を荒く研ぐと消えてしまうため、その点のみ注意が必要です。
なお、荒砥→中砥→仕上砥と使う砥石を三段階に分けます。家庭用のものであれば、よほど切れ味が落ちていない限り、中砥からはじめても十分です。なお、仕上砥が正しい方法でかかっていると、切れ味や刺身の切り口のつや、見栄えは格段に変わるといわれます。
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