単結晶ダイヤモンドと多結晶ダイヤモンドの違い
ダイヤモンド工具などを使い慣れてくると、わりとよく行き当たる疑問の一つが、単結晶ダイヤモンドと多結晶ダイヤモンドはどう違うのかという点です。
通常、工具に使われるダイヤモンドは工具メーカーや砥石メーカー側で決めるので、ユーザーから指定する場合というのは、超精密加工用の特殊な工具の場合や精密ラッピングなどで特にダイヤを使うなどのレアなケースだけで、こうした場合では工具もおのずと単結晶ダイヤモンドを組み込むことを前提としたものになります。
ダイヤを使ってモノを切断したり、切削したり、研削したりということを行う場合、ダイヤの「割れ方」である「へき開性」(へきかいせい)を利用します。ダイヤは工業上、最も硬い物質ですが、方向によっては割れていきます。この割れる性質を活かして、少しずつダイヤが割れていくように使っていくと、常に割れた面である鋭利な部分が突出して非常に高い切れ味を保つことが可能となります。
単結晶ダイヤの場合は、この割れた鋭利な面が、単体のダイヤに対してのみ存在するため、切れ刃は一つです。一方で、多結晶ダイヤモンドの場合は、この単結晶に存在するダイヤが複合的に組み合わさったような状態になっているため、切れ刃が多数の方向に複数存在することになります。
プラスチックの精密加工などで、切削に用いる場合などはダイヤモンド工具でも、単結晶ダイヤの先端を使う精密加工がよく行われます。一方で、ラッピングやポリッシングなどの遊離砥粒としてダイヤ粒をワークの上で展開し、パッドなどで押し付けて高い精度の表面を得ようとする場合では、切れ刃が多数方向に存在する多結晶のほうが、仕上がりはきれいになります。
多結晶ダイヤは爆発法など、非常に強い衝撃圧縮する方法で作られるものもあれば、砥石のようにダイヤモンド焼結体として焼き固めて作るもの、高温高圧で作るPCDと呼ばれるもの等があります。
単結晶ダイヤがよいのか、多結晶ダイヤがよいのかはワークの材質と、加工方法によりけりで適宜使い分けることになります。
砥石の場合は、砥粒であるダイヤのほか、これらダイヤを固着させておくバインダーでもある「ボンド」の役割によって性能がかなり変わります。このため、あまり単結晶であるか、多結晶であるかという点を意識することがありませんが、ほとんどのダイヤモンド砥石は、工業的に合成された単結晶ダイヤを使います。
ダイヤモンドが単結晶か多結晶かというのは、むしろ切削工具やカッターなどの場合に気になってくる点です。
工具の性能を決める各種パラメータを変えても目的のものにならないという場合は、ダイヤモンドの結晶タイプを変えてみるというのも一つの選択肢です。
ただし、ダイヤモンドの硬さはすべての物質に頂点にあり、天然ダイヤでも合成ダイヤでも、単結晶も多結晶も硬さそのものは変わりません。形状や内部に含まれる不純物などによって熱の影響や割れる方向が変わるので、それをもってダイヤの強度が変わるという言い方はできるかもしれません。
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