銀合金の種類|銀合金の組成や融点、硬度、特徴について
銀の種類とは、すなわち銀合金の種類のことであり、純度のバリエーションのことでもあります。JIS規格では、貴金属製品やジュエリーに使われる銀の純度として3パターンを規定しており、銀の成分をそのまま数字で表しています。すなわち、925、835、800の三種類あります。
銀合金の組成
銀合金の組成のうち、主要部分は銀ということはわかりますが、残りはどのような金属が使われているのでしょうか。銀合金も他の金属と同様、合金である以上、組み合わせる金属によって性質や色も変わってきますが、こと貴金属製品のうち貨幣やジュエリー、宝飾品、美術品、工芸品などの分野で使われる銀合金はほとんど銀と銅の二元合金か、銀、銅、金の三元合金です。めっきとして表面にさらに別の貴金属や金属をコーティングするケースもあります。
銀の種類、純度のバリエーション
925というのはパーミル(‰)であるため、パーセントに換算すると92.5%が銀であるという意味です。純度が92.5%という言い方もできますが、この純度のことを貴金属の分野では品位と呼びます。貴金属の世界では銀に限らず、品位(純度)を数字で示しますがその際は千分率である‰(パーミル)を使います。
銀合金はJIS規格上の品位では上述の三種ですが、ISOでは999、990、958、925、800の5種類、造幣局の品位検定区分では999、950、925、900、800の5種類、CIBJO(国際貴金属宝飾品連盟)では999、925、835、830、800の5種類と、依拠する団体・規格によってバリエーションが変わります。ただいずれにしても表示されている純度の基準は同じであるため、999といった場合は、999‰(99.9%)の純度であるということになります。
銀合金の硬度
純銀や銀合金を加工すると、他の金属と同様、加工硬化がおきます。これは力を加えると金属そのものが硬くなっていく現象で、ステンレスをはじめとする鉄鋼材料等でもおきます。ただ、純銀の場合、加工硬化によってビッカース硬度で80 HV〜90 HVまで硬くなった後は、一定を保ち、時間がたつとまだ30 HV前後のもとの硬さに戻ってしまう性質を持ちます(但し、−10℃から50℃の範囲内)。銀合金というのはある意味、この自然にやわらかくなっていってしまう経時軟化を抑える性能を持たせてもいます。
銀合金は熱処理のやり方によって硬度にかなりの幅を持たせることができます。このため、同じ成分をもつ銀合金であっても硬度が違うものを作ることができます。
硬さの最大値や最小値は銀合金の組成にもよりますが、焼きなまし処理した直後、時効処理したもの、調質などによって硬さを上げているもので硬度は25 Hv〜150 Hvと幅広いものが存在します。
代表的な品位ごとの銀の種類と成分、硬度
表のもっとも左列にある銀の純度が品位のことになります。
銀の純度(‰) | 銅の純度(‰) | 硬度(ビッカース硬さ HV) | 銀合金の名称 | 用途・性質等 |
---|---|---|---|---|
9999 | − | 25から30前後 | 純銀 | 別名、フォーナイン(4N)グレードとも呼ばれる。主として工業用、産業用で使用 |
999 | − | 25から30前後 | 純銀 | やわらかく、加工しても容易に変形してしまう。 |
999 | − | 100 | 硬銀 | 銀は純度が高いとやわらかくなるため分散強化したもの。ニッケル等を0.5‰添加している |
970 | 30 | 最大100前後 | 三分落ち銀 | 銅を3%含む銀合金。展延性に優れるため、絞り加工にも適している。このため、銀のカップやトロフィー等にも使われる。 |
958 | 42 | 最大125前後 | ブリタニアシルバー | イギリスで誕生した当初は硬度に劣るため、徐々に他の銀合金に取って代わられた。現在は調質により相応の硬度にすることもできる。 |
950 | 50 | 最大110前後 | 五分落ち銀 | 銅を5%含む銀合金。銀フルートをはじめとする楽器にも使われる。 |
935 | 65未満 | 60から125前後 | アルゲンティウムスターリングシルバー | スターリングシルバーに1%未満の微量のゲルマニウムを添加している。耐変色性を持つほか、明るく見えるとされる。 |
930 | 70未満 | アルゲンティウムシルバー | 変色に弱いという銀の弱点を補い、純度も維持するという現代の銀合金。ゲルマニウムを微量添加している。実用上は上記のアルゲンティウムスターリングシルバーがよく出回っている。 | |
925 | 75 | 最大150前後 | スターリングシルバー | ジュエリー、宝飾品としてはもっとも使用頻度の高いとされる銀合金。7.5%の銅を含む。 |
900 | 100 | 100前後 | コインシルバー | コイン、貨幣に使われる銀合金。 |
833 | 167 | ダッチシルバー | オランダ発祥の銀合金。16.7%の銅を含む。 | |
826 | 174 | ダニッシュシルバー | デンマーク発祥の銀合金。17.4%の銅を含む。 | |
800 | 200 | ジャーマンシルバー | 20%が銅で構成される銀合金。 | |
720 | 280 | 共晶合金 | 融点が銀よりも低くなる性質を持つ。銀ロウに使われる。 | |
250 | 750 | 最大120前後 | 朧銀(並四分一) | 単にシブイチとも呼ばれる。銀よりも銅の割合のほうが多い。 |
なお、チベタンシルバーやチベットシルバーの名称で出回っているジュエリー等の多くは、銅やニッケル、鉛や砒素を含むものもあり、粗悪な銀の模倣品の一種とされています。有毒な金属を含むため、安全性に対する注意が必要です。一部、アンティークで用いられる古いチベタンシルバーの中には、スターリングシルバーと同等の銀の純度を持つものもあるとされますが、近年はほとんど見られません。
金と銀の合金であるエレクトラムはグリーンゴールドの名称でも知られ、金合金の一種として分類されます。
銀の特徴と用途
銀の融点は962℃と鉄や金に比べると比較的低めです。銅に近い融点を持ちます。銀のもっとも大きな特徴は、その低い電気抵抗と高い熱伝導率です。電気抵抗が低い、つまり電気伝導率が高い金属であることから、ケーブル、リレー、電子部品としった製品にも使われます。
可視光の反射率の高さからミラーや反射膜として各種光学部品や反射フィルムなどに使われ、銀イオンの抗菌作用から抗菌剤として家電製品にも広く見られるようにもなっています。
さらに、銀は細く薄く延ばすような加工が可能な展延性といった特性もあり、工業用途の比率も高く、実用上は銀の半数以上は工業・産業での使用とされています。
貴金属のなかでも銀のアクセサリーなどに触れた際、ひんやりとした感触がしますが、これは熱伝導率の高さに起因します。金も高い熱伝導率をもちますが、貴金属のなかで銀はもっとも高い熱伝導率を持ちます。
形を持つ製品として使用する際は、高純度の銀というのは加工に必要な硬度がありませんので、ほとんどが合金や何らかの処理を施された形で利用されます。純銀を空気中に放置しておくと、だんだんとやわらかくなっていく経時軟化という珍しい性質を持っています。
人の肌に接触した際の金属アレルギーについても個人差はあるものの、比較的発生なりにくい金属とされています。
耐薬品性に関していえば、銀は王水に溶けない数少ない金属のひとつでもあります。
銀は腐食に強いが黒ずみや黒錆が出ることがある
銀は貴金属のなかでは比較的低い値ではありますが、イオン化傾向が低い、つまり腐食や錆にくい材質ではあります。銀は水や酸素と反応しないという特性を持つのですが、オゾンに対しては酸化するのと、硫黄が含まれる物質と接触すると硫化して黒ずんでしまうことがあります。
硫化自体は、硫化水素(H2S)、亜硫酸ガス(SO2)、水蒸気と反応して銀が硫化銀(Ag2S)に変わってしまう現象であり、空気中の硫化水素でも反応しますし、硫黄成分のある温泉や入浴剤、ゴムの加硫時に使われている硫黄、化粧品の界面活性剤、パーマ液などにも硫黄化合物が使われているケースがあり、こうしたものとの接触も原因となりえます。これが一般には銀の錆や黒錆、黒ずみとされている現象です。これを防ぐため、銀に近い色味をもつロジウムをめっきとして用いることもあります。
主な銀合金の種類と特徴
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