御影石の原石の産地について
世界各国の御影石の原石や板材の輸出入量を調べると、御影石、花崗岩の主要産地が見えてくる。中国の新華社通信によれば、同国における石材加工は世界一となっており、全世界の石材加工の凡そ80%を担っているという。中国は確かに御影石、大理石の購入量(輸入金額)が多いが、他の地域で石材加工がほとんど行われていないというわけではなく、有名な御影石や大理石を産出する国の輸出先を見ると意外な国の名も出てくる。貿易統計からは、その国で産出し消費される石材については見ることができないが、通関が必要となる取引については見ることができるため、調査に活用した。
貿易統計上、御影石はいくつかの種類に分かれて計上されている。
- 原石(粗のもの)
- 板材(切断しただけのもの)
- 石碑用、建築用の石、石製品
上記のうち、原石や板材については破壊せずに運搬する手間を考えると、用途がかなり限定されており、切断や研磨、研削の工程がどこかに入ると推測できる。というのも、砂利として用いる場合は、原石の状態で割れないよう運搬する手間とコストをかける意味がなく、舗装等に使う石材製品類は別のHSコードでの計上がなされているためである。原石そのものは、切断し、研削や研磨などの工程を経なければほとんど使い道がないため、これらを輸入している国には石材加工産業が存在すると思われる(経由地としてのみ輸入している国を除く)。
以下に国ごとの御影石の原石や板材などの輸出入量の特徴を見ていく。
中国や米国、ロシアを除くと、御影石の輸出金額の上位国は下記のグラフのようになっている。
中国の御影石
御影石の輸入量は年間600億円を超え、他国から群を抜いて大きい。日本からも年間13億円前後の原石が送られており、これらは墓石として加工されて日本国内で販売されていると推測できる。
中国が最も多くの原石を購入するのはインドで、次いでブラジル、ノルウェー、フィンランド、南アフリカ、日本などの御影石の産出国が続く。これらが概ね世界を代表する御影石の産出国と言える。米国は中国との取引では石材の製品を購入しているが、最も購入金額の大きい国は日本で、年間481億円となっており、おそらく「墓石」が大半を占めると思われる。ドイツ、オランダ、ベルギーといったヨーロッパ諸国にも中国製の石製品は多く輸出されている。世界最大の石材加工拠点という側面だけでなく、世界一の石材消費国という側面が注目されている。
中国から輸出される石材の完成品(石製品)は、2000億円を超える規模となっており、最も購入金額の高いのは日本で、年間480億円前後となっている。
インドの御影石
インドは御影石の大半を原石の状態で輸出しており、板材に加工したものの比率は少ない。先に調査した石材加工機械の輸出入状況から、インドでは毎年、研磨機と同等程度もしくはそれ以上の金額の切断用の機械を輸入しているため、切断加工自体が少ないというわけではないと思われる。内需により消費される場合や完成品として輸出する場合には切断加工が必要となる。石材の輸出先としては、中国が圧倒的に多いが、英国、米国、イタリア、台湾、UAEなどが続く。これが原石だけに限定すると、7割弱が中国向けとなる。
下図の「粗のもの」(原石)と、前掲の板材の輸出国の比率が変わっている。
ブラジルの御影石(花崗岩)
国際的な石材の展示会には必ず出展する御影石の主要産出国の一つだが、ここ数年で中国の購入量が増加している国でもある。ブラジルの石材は、様々な色彩を持つ花崗岩で、従来の灰色、黒色、赤色をベースにした「御影石」とは異なるカラフルなものが多い。数年までは、北米に照準を合わせた展開を行っており、8割は米国向けとも言われていた。中国に次いで、イタリアや香港、台湾地域への輸出が多い。
全体の規模はインドに比べると小さいが、この地域固有のデザインを持つ石材が中国市場では人気があると言われている。
ノルウェーの御影石(花崗岩)
以前はイタリアを最大の顧客としていたが、現在は中国への輸出が半数以上となっている。90年代のはじめから、御影石の採石量は増加し続けてきたが、ほとんどが「原石」としての輸出とされる。また完成品となっている石製品の輸入量も増加している。原石については中国の他、イタリアやインド、スペイン、台湾などが輸出上位国となっている。
フィンランドの御影石(花崗岩)
ノルウェーよりは若干規模が小さくなるが、良質の御影石で知られる。輸出先は中国が6割以上となるが、イタリアやポーランド、スペインも上位輸出先として名を連ねる。
ポルトガルの御影石(花崗岩)
500以上の採石場を持ち、1000社を超える石材業者(山元)があると言われている。採石される原石のほとんどは輸出されている。輸出先としてはスペイン、フランス、ドイツ等のヨーロッパ諸国が多いのが特徴。近年は中国への輸出が増加している。
南アフリカ共和国の御影石(花崗岩)
御影石の輸出金額ではポルトガルとほぼ同程度の規模で、イタリア、ベルギー、中国への輸出額の合計が5割以上となっている。
ベトナムの御影石(花崗岩)
前回行った石材加工機械の調査で、東南アジア諸国には多くの石材加工用の機械が輸出されている実態が見えてきたが、ベトナムを第二の中国のように石材の加工拠点とする場合、原石や板材そのものも他国から輸入する必要があるため、ベトナムにおける石材の輸入量の調査を行った。
最新の統計が2009年になるため、直近の状況は不明な部分が多いが、中国から輸入が減り、インドからの輸入が増加している状況から、産地から直接加工地であるベトナムへ石材を入れるようになった可能性はある。また大理石に至っては、トルコやギリシア等からの輸入量が急増しており、わずか1年で倍増している。規模は中国ほどではないが、現地には石材加工産業が育ちつつあると見られる。
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