共晶はんだと鉛フリーはんだの違い

2019年10月19日更新

共晶はんだとは鉛はんだのことで、これに対置するのが鉛を含まない鉛フリーはんだであり、両者の違いについてみていきます。一番の違いは成分と融点ですが、これに付随してどのような点が変わってくるのか掘り下げてみていきます。はんだはまずは、鉛入りか、鉛を含まないかで使用に制限があるため、まずは大きく分けてみていく必要があります。

鉛フリーはんだとは

鉛フリーはんだは、そもそもEU圏で使われる電子部品等に一定以上の鉛を含んでいるものは流通させることができないというRoHS指令によって、急速に開発が進められ、現在のはんだの主流となっているはんだです。開発までの期間がなかったこともあり、当初は使用法も含め、現場でトラブルが頻発しましたが、現在は鉛はんだに取って代わる存在となっています。

共晶はんだとは鉛はんだのこと

一方、共晶はんだは、鉛を含んでいる従来のはんだで、性能面で言えばこれらを凌駕するものは未だないというのが実情ですが、電子部品の多くで使うことができなくなっているため、使用範囲は分野を選びます。航空や電車等、高度な信頼性を要求される部品ではこれら鉛はんだが主流となります。鉛を必ず含んでいますが、これ以外に含まれる成分の違いによっていくつかの合金系に種類が分かれます。

昨今は鉛使用禁止のEU圏内向けのものに間違って鉛はんだを使ってしまうというような混入問題が発生すると、販売禁止・輸入禁止等によって莫大な損失を蒙る事から、はんだ付けの元請会社から混入防止の仕組み構築を求められることもあるかと思います。これらのはんだについては明確に使い分けていく必要がある所以です。

はんだの選択はどこを見るか

はんだを選ぶ際には、はんだと母材との双方の性質を見た上で最適なものを選ぶ必要がありますが、まず母材側では以下のようなポイントを見ていきます。

  • 機械的性質(引張強度、疲労強さ、伸び、硬度)
  • 物理的性質(融点、密度、熱膨張係数、電気抵抗)
  • 化学的性質(耐腐食性、電極・電位)
  • はんだ付特性(ぬれ性、はんだ溶食、合金層形成)

次に「はんだ」そのものについては、溶融温度(上限温度、下限温度)、機械的強度(高温・低温強さ、疲労強度)、電気的特性(導電性、起電力など)、母材との金属学的な反応(合金層形成、はんだ溶食)の4項目を見ていきます。

はんだ付けの性能に影響するのは、母材、はんだ、フラックス(または雰囲気ガス)の3つと言われるため、はんだの成分だけの違いだけではなく、実際の使用にあたっては三極を総合的に見ていく必要があります。

共晶はんだと鉛フリーはんだの違いと比較の一覧

使用面においてはやはり融点の違いがいろいろなシーンで難しさを生み出しています。共晶はんだと鉛フリーはんだを下表で比較してみました。

共晶はんだ(鉛はんだ)と鉛フリーはんだの違いと比較
共晶はんだ
(鉛はんだ)
鉛フリーはんだ
融点 約183℃ 約217℃
成分 鉛を含む(他、スズ、ビスマス、銀等) 鉛を含まない(他、スズ、銅、ニッケル、銀、ゲルマニウム、インジウム、亜鉛等)
ぬれ性 ぬれ広がりがよい ぬれ性はよくない
コスト・価格 比較的安価 高コスト
仕上がり状態 表面に金属光沢がある 金属光沢がなく白っぽい
種類 JISでは19種類 JISでは30種類
比重 鉛がある為重い(7.4から11前後) 鉛がない分軽い(7.4から8.4前後)
機械的強度
(引張強さ)
10前後から43MPa前後 機械的強度は鉛がない分強い
電気抵抗 電気抵抗は成分により異なるが13前後から55前後(10-2μΩm) 電気抵抗は鉛はんだより小さい
はんだごて温度 低め(約260℃。約250℃ 3秒で合金層形成される) 高め(但し360℃以下に抑えないとオーバーヒートや使用不能になることがある)
はんだごて寿命 こて先の消耗はゆっくり こて先の消耗が早い(鉛はんだの約3倍。はんだ食われの為)
利用分野 航空・電車等一部高信頼性が求められる分野 電子部品、家電製品のほぼすべて
  

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