砥石業界への就職を考えています。どんな業界ですか。

2012年5月3日更新

砥石業界は、同じ「業界」と括るのが難しいほどに加工する対象によって分化が進んでいます。一般には同じ「砥石」として括られている製品であっても、加工対象や納入している業界によって、かなり住み分けがなされているのが現状です。

天然砥石なのか、研削砥石なのか、ダイヤモンド砥石なのか、また砥石を使う機械の種類(研削盤や研磨機の種類)によっても分化が進んでいます。こうしたものをすべてひっくるめて一つの業界と捉えるのは無理があります。

まず、砥石の種類を見て、どのようなものを作っているのかによってかなり明確な線引きをすることが出来ます。

就職や転職を考えている方はこの業界の将来性や特徴が気になるところかと思います。この場合、「砥石業界」という見方よりもその会社が納入している業界を見たほうがよいでしょう。売上構成上、メインとなる納入業界がいわゆる衰退産業や成熟産業、過当競争になっている業界なのか、研磨加工という技術が使われなくなりつつある業界なのか、あるいは需要が増えている業界や新産業へも果敢に挑戦しているのかといった点です。消費者向けのものや、小規模事業者向けのもの、量産加工用を前提にしたもの等、想定されているターゲットについても調べておくとよいでしょう。

多くの製造業と同様に、研磨や研削の量産ラインが海外に移りつつあり、それに呼応して主戦場は海外に移りつつあります。研磨や研削の加工の難易度は元来高いものでしたが、海外新興国の技術力向上や優れた機械の登場などにより、日本だけを主要加工地とは考えづらくなってきています。

高度な加工や試作だけでなく、量産や中量生産なども今も日本で行われていますが、砥石メーカーの中には顧客とともに海外へ生産拠点を移しているところも出てきています。

砥石メーカーは大手と呼ばれる会社は数社で、あとは中小企業になるため、ほとんどは10数名から100名前後の中小規模の会社といえます。新興のメーカーは少なく、多くは創業数十年から百年といった会社が多く、同族経営も多いといえます。同じ業界へ同じ品目を納入する「競合」という視点で見ると、国内だけでは競争相手の数が増えているという情報もあまりないと言えます。定期的に倒産情報も入ってきますが、基本的には固有の業界に密着した産業であり、プレーヤーが頻繁に入れ替わることは少ないと言えます。一つの業界で使う砥石の総量はあまり多いという分野は稀であり、競合が多いとどこもやっていけなくなるため、うまい具合に住み分けがなされてきた観はあるかもしれません。

給与水準については、経営状態にもよるため一概に言うのは難しいですが、多くが中小規模や家族経営ということもあり、ボーナスがないということも珍しくありません。給与を聞かれて高いと答える人はいないとは思いますが、一部を除くと水準は全般的に低めと言えるかもしれません。主要な納入業界の景気動向の強い影響を受けるため、こうした部分は結構ストレートに影響を受けます。

加工する対象は、ワークといったり、被削材といったりしますが、この材質が仮に同じものでも用途や納入している会社の業界が違うと同じ砥石メーカー同士でも競合として認識していないこともあります。前述の「業界を切り口とした見方」と平行して重要になってくるのがワークの材質です。砥石メーカーは、それぞれ得意としているワークがあり、すべてをオールマイティーに得意としているメーカーは稀です。またワークとともに適合する機械や加工方法にも得意不得意があります。新素材が開発されると、それに呼応して適合する砥石や加工方法も開発されていきますが、こうした新素材の加工にも挑戦しているかどうかというのは重要なポイントかもしれません。またこうした素材が、今後市場でどのような使われ方をしていくのかという点もそのメーカーの行く末を占う上で欠かすことの出来ない情報の一つです。

まとめると、

  • 同じ業界として括るのが難しいほど納入業界によって専門分化
  • 納入業界によって売上規模がある程度明確に
  • 何を加工するための砥石で、どういう業界が主要顧客なのかが重要
  • 国内メーカーの海外への量産拠点の移転に伴い、量産ライン狙いのメーカーは工場を海外に持つのが一般的
  • 海外市場では中国・韓国・台湾産の廉価なものが多く出回っており、過当競争状態に
  • 大手企業は数社、中小企業が多い。工業用のものでは国内では凡そ50〜70社程度。
  • 納入業界に密着したスタイルで事業を展開する
  • 納入業界によっては古い慣習などが今も残る一方、最先端の新素材の加工用として開発を怠らないメーカーもある

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