JISによる普通公差の等級|精級、中級、粗級、極粗級の長さと角度の普通公差表
普通公差とは、図面の寸法に対してズレの許される長さや角度の「上限」と「下限」の範囲を、等級によって一律に定めたJISの規格です。一般公差ともいわれ、英語ではGeneral tolerancesといい、よく使われるのが普通公差表の中級という等級です。等級は精級、中級、粗級、極粗級の4種類に分けられており、それぞれで求められる精度、つまりずれてもよい寸法の許容範囲が変わります。また、公差の値は、等級だけでなく寸法の大きさによっても変わります。サイズが450mmのものと、10mmのものでは同じ等級でも公差の値は異なるということです。
例えば、図面で長さが5mmとなっている普通公差における中級の公差は±0.1mmとなります。したがって、図面上で普通公差の中級を採用している場合、その部位は公差の指定がなくても、5±0.1ということになります。
なお、収縮が発生するゴムの公差には専用の公差表が使われることがあります。
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普通公差表のよいところは、これを適用すると図面に表記しておけば、寸法表記の公差をいちいちすべてについて記載しなくてすむ点です。また図面を見て製造する側にとっても、公差がすべての寸法数値に書かれていたら見づらくてたまりません。図面に対して、ここでは普通公差中級の公差を適用、と指定されていれば、自ずと守るべき寸法の範囲が見えてきます。
図面内でカッコでくくられた、いわゆる参考寸法というものがありますが、これには普通公差表は適用されません。
そもそも公差とは
10mmの長さのものを加工するにしても、完全に10mmのものを作ることはできません。計測してみれば、10.001mmであったり、10.02mmであったりします。設計者の意図としても、この10mmを指定した場合に狙っている寸法の範囲は、ほとんどの場合、10.000000001mmから10.000000003mmというようなものではありません。
例えば、9.9mm〜10.1mmの範囲に入っていればよい、というような場合、その範囲を指定するのが寸法公差です。寸法公差が厳しければ、加工のコストが上がり、時間もかかります。このため、必要な精度によって公差を使い分けるのが一般的です。
公差の種類
公差には寸法公差、はめあい公差、幾何公差の3つの種類があり、それぞれ下表のようになっています。
公差の種類 | 内容 | JIS規格 |
---|---|---|
寸法公差 | 2点間の長さ、直径、半径、角の丸みや面取り寸法が対象 | JIS B 0405 |
はめあい公差 | 互いにはまりあう関係にある穴径と軸径の公差(寸法許容差)を記号であらわしたもの | JIS B 0401 |
幾何公差 | 真円度や同軸度、円筒度、平面度、真直度などといった、あるべき形状や面に対しての公差 | JIS B 0419 |
寸法公差を定めたJIS規格のうち、JIS B 0405「普通公差‐第1部:個々に公差の指示がない長さ寸法及び角度寸法に対する公差」はISOではISO 2768と表示されています。
図面での公差指定方法
寸法公差の図面での書き方や読み方はこちらで紹介した通りですが、指定しない場合に一律に適用される公差として、普通公差を使う場合はおおむね次の2通りがあります。
普通公差については、1.各社で独自の公差表を作成して用いることもできれば、2.JIS規格で規定されたものをそのまま使うこともできます。前述の通り、寸法数値のひとつひとつに公差をつけていくのは作図するほうも読図するほうも一苦労です。したがって、ほとんどの図面では特別な公差指定箇所がない部分には、JISの普通公差か、自社で規定した普通公差のいずれかを一律で用いています。
図面で指定する場合、公差表自体を図面に張り付けているケースがよく見られますが、図面を見るほうも間違いが少なく、規格をその都度見直す必要がないので便利な方法です。また、自社規格の公差表を使う場合は、独自の表を図面にも記載しておくと間違いが減ります。
JIS規格の普通公差等級を使う場合
下表のように、採用する等級に応じて、JISの規格番号と一緒に表題欄の近くに記載しておくか、採用する公差表自体を図面に張り付けておきます。
記載例 | 等級 |
---|---|
JIS B 0405-f | 精級 |
JIS B 0405-m | 中級 |
JIS B 0405-c | 粗級 |
JIS B 0405-v | 極粗級 |
普通公差表に該当しない公差を指定する箇所は、すべて個別に記入して作図します。つまり、図面に公差が直接書かれている場合は、普通公差の基準が上書きされ、直接指定されている公差が適用されます。
普通公差表|長さ寸法の精級、中級、粗級、極粗級
他の規格で規定されていない場合という条件付きで、長さ寸法(外側寸法、内側寸法、段差寸法、直径、半径など)に適用されます。0.5mm未満については、個々に指定する決まりになっています。
基準となる寸法の区分 | 公差等級 | |||
---|---|---|---|---|
精級(f) | 中級(m) | 粗級(c) | 極粗級(v) | |
0.5以上3以下 | ±0.05 | ±0.1 | ±0.2 | - |
3を超え6以下 | ±0.05 | ±0.1 | ±0.3 | ±0.5 |
6を超え30以下 | ±0.1 | ±0.2 | ±0.5 | ±1 |
30を超え120以下 | ±0.15 | ±0.3 | ±0.8 | ±1.5 |
120を超え400以下 | ±0.2 | ±0.5 | ±1.2 | ±2.5 |
400を超え1000以下 | ±0.3 | ±0.8 | ±2 | ±4 |
1000を超え2000以下 | ±0.5 | ±1.2 | ±3 | ±6 |
2000を超え4000以下 | - | ±2 | ±4 | ±8 |
普通公差表の英語表記|長さ寸法の精級、中級、粗級、極粗級
長さの普通公差を英語表記した場合は、下表となります。
「0.5mm未満の基準寸法に対しては、その基準寸法に続けて許容差を個々に指示する」の但し書き部分を英語に直すと、「For nominal sizes below 0.5 mm, the deviations shall be indicated adjacent to the relevant nominal size(s).」となります。
Permissible deviations of basic size range | Tolerance class | |||
---|---|---|---|---|
fine (f) | medium (m) | coarse (c) | very coarse (v) | |
0.5 up to 3 | ±0.05 | ±0.1 | ±0.2 | - |
over 3 up to 6 | ±0.05 | ±0.1 | ±0.3 | ±0.5 |
over 6 up to 30 | ±0.1 | ±0.2 | ±0.5 | ±1 |
over 30 up to 120 | ±0.15 | ±0.3 | ±0.8 | ±1.5 |
over 120 up to 400 | ±0.2 | ±0.5 | ±1.2 | ±2.5 |
over 400 up to 1000 | ±0.3 | ±0.8 | ±2 | ±4 |
over 1000 up to 2000 | ±0.5 | ±1.2 | ±3 | ±6 |
over 2000 up to 4000 | - | ±2 | ±4 | ±8 |
普通公差表|面取り寸法・角の丸みの精級、中級、粗級、極粗級
角やコーナーの丸み、面取り寸法についての普通公差はJISでは以下が適用可能です。0.5mm未満については、個々に指定する決まりになっています。
基準となる寸法の区分 | 公差等級 | |||
---|---|---|---|---|
精級(f) | 中級(m) | 粗級(c) | 極粗級(v) | |
0.5以上3以下 | ±0.2 | ±0.2 | ±0.4 | ±0.4 |
3を超え6以下 | ±0.5 | ±0.5 | ±1 | ±1 |
6を超えるもの | ±1 | ±1 | ±2 | ±2 |
普通公差表の英語表記|面取り、角の丸みの精級、中級、粗級、極粗級
面取りや角の丸みについての普通公差における英語表記は下表のようになります。
Permissible deviations of basic size range | Tolerance class | |||
---|---|---|---|---|
fine (f) | medium (m) | coarse (c) | very coarse (v) | |
0.5 up to 3 | ±0.2 | ±0.2 | ±0.4 | ±0.4 |
over 3 up to 6 | ±0.5 | ±0.5 | ±1 | ±1 |
over 6 | ±1 | ±1 | ±2 | ±2 |
普通公差表|角度寸法の精級、中級、粗級、極粗級
角度についての普通公差は下表となります。なお、これは対象とする角度の短いほうの辺の長さによって基準となる寸法区分が設定されています。
基準となる寸法の区分(対象角度の短いほうの辺の長さ) | 公差等級 | |||
---|---|---|---|---|
精級(f) | 中級(m) | 粗級(c) | 極粗級(v) | |
10以下 | ±1° | ±1° | ±1°30’ | ±3° |
10を超え50以下 | ±30' | ±30' | ±1° | ±2° |
50を超え120以下 | ±20' | ±20' | ±30' | ±1° |
120を超え400以下 | ±10' | ±10' | ±15' | ±30' |
400を超えるもの | ±5' | ±5' | ±10' | ±20' |
普通公差表の英語表記|角度の精級、中級、粗級、極粗級
角度寸法についての普通公差表の英語表記は下表となります。
Permissible deviations for ranges of lengths, in millimetres, of the shorter side of the angle concerned | Tolerance class | |||
---|---|---|---|---|
fine (f) | medium (m) | coarse (c) | very coarse (v) | |
up to 10 | ±1° | ±1° | ±1°30’ | ±3° |
over 10 up to 50 | ±30' | ±30' | ±1° | ±2° |
over 50 up to 120 | ±20' | ±20' | ±30' | ±1° |
over 120 up to 400 | ±10' | ±10' | ±15' | ±30' |
over 400 | ±5' | ±5' | ±10' | ±20' |
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