φとキリの違い|製図でのφとキリの寸法表記の意味

2018年5月21日更新

φとキリは図面上、穴の直径を示すときにも使われていますが両者には明確な違いがあります。以下にその違いと使い分け方法を述べていきます。

図面でのφの意味

φの読み方、呼び方はファイであったり、マルであったり、パイであったりと実務上はいくつかありますが、いずれも図面で意味するものは円形状のものの直径となります。φ12となっていれば、直径12mmを意味しています。

このφをつかった穴の表示は深さも示すことができ、図面上に直接深さの部分を数字で記載する方法もあれば、「φ12深さ6」のように穴の直径に続けて深さを表示する方法もあります。この書き方だと図面上はすっきりした印象となります。

また、同じ寸法・形状の穴が複数あるような場合にも、1行で表記することができます。たとえば3 x φ12、あるいは3-φ12と製図する際に記載すれば、直径12mmの穴を3個作ること、という意味になります。

φの図面表記方法

図面でのキリの意味

さて、φが穴の直径を意味することは上記のとおりですが、キリのほうはどうでしょうか。キリとは「きり穴」の略で、ドリルを使ってあけた穴のことを意味しています。通常は、ボール盤を使って穴をあけます。図面上、12キリと書かれていた場合、これは直径12mmのドリルを使ってキリ穴をあけてくださいということです。きり穴であることを指定する「キリ」というのは、出来上がった穴の直径を指定するφと違って、穴をあけるのに使うドリルの直径のことになります。

このキリでの穴を指定する場合も、深さを続けて書くことができます。その場合、「12キリ深さ6」あるいは「12キリ深サ6」と書き、直径12mmのきり穴で、深さは6mmであることを指定しています。

なお、キリ指定の場合はドリルで穴を開けるという前提になりますから、穴のもっとも深い先端部分というのは、下図で描いたように、ドリルの先端形状がそのまま残ってしまう形になります。穴の深さというのは、この先端の形は含まない深さ、つまりまっすぐに伸びているストレート部分のみの深さとなります。製図の際には、きり穴の先端は120°で描かれる決まりになっていますが、実際には側面図118°となります。

φとキリの図面表記方法の違い

下図の左側がφの図面での表記方法、キリが右側となります。キリは貫通しない限り、ドリルの先端形状が残ってしまいますが、深さは図のとおりです。

φとキリの図面表記方法の違い

φと同様、連続でキリ穴をあける指定については下図のように作図する方法もあります。

キリの図面での連続指定

キリとφの違いをどう使い分けるか

キリとφの違いをまとめると下表のようになります。使い分けるポイントは必要な精度とコストのバランスになります。キリの場合は、使うドリルの直径と深さだけ守ればよいため、加工コストは比較的安くなりますが、φで指定した場合、穴の直径をその寸法にあわせるため、ドリルで穴をあけるだけでなくリーマなど、穴の内側を加工する工具を使ってさらに寸法をあわせる必要があります。

例えば、φ12の穴を開けようと思って直径12mmのドリルを使っても、φ12指定の穴を開けることはできません。一般にはφ12mmのドリルを使った場合、穴は0.1mm前後大きなものになります。こうしたことから、精度が求められない用途、例えば穴を貫通させてそこに通ればよいような場合にはキリが適しています。反対に、はめあい公差を指定してきっちり寸法をあわせる必要があったり、ねじ穴を切ったりするような場合にはφが適しています。

φとキリの違いのまとめ
φ キリ
加工した後の穴の直径を指定している。加工方法は何でもよく、使用する工具も何でもよいが、穴の直径がこのサイズになっている必要がある。精度が必要な場合はこちらで直径や穴径を指定する。 加工に使用するドリルの直径を指定している。加工自体もドリルを使うことを指定している。寸法にばらつきが発生しても使うドリルの直径(呼び寸法)が指定どおりであればよいという内容。精度が不要でコストを抑える場合はきり穴を指定する。穴が貫通しないものの場合、ドリルの先端形状がワークに残る。

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