ステンレスの酸化皮膜、不動態皮膜とは何ですか?
ステンレスはその名前が示す通り、錆びにくい金属ですが、鉄鋼材料の一種なので当然錆の出る「鉄」も含有しています。ステンレスを錆びづらい特性にしているのが、酸化皮膜(もしくは酸化被膜)と呼ばれる薄い膜です。ステンレスは鉄にCr(クロム)やNi(ニッケル)を一定の比率で混ぜ込んだもので、この比率や他に添加する物質等によって、錆のほか、耐食性をはじめとする特性が変わってきます。
ステンレスの酸化皮膜は、主にCr(クロム)が空気に触れてできる酸化作用によるものです。
ステンレスの不動態とは、この酸化皮膜ができた状態のことを言ったり、あるいは酸化皮膜のことを不動態皮膜と呼んだりすることもあります。この状態になったステンレスの表層には、数nmという極薄の膜ができています。この不動態化は、ステンレス以外の金属、たとえばアルミニウム合金、チタン合金などでも起きることが知られています。
こうしたステンレスの酸化皮膜や不動態化は、この金属を使う側としては好ましい付加価値なのですが、加工する側にとっては骨の折れる材料となってしまいます。まず、金属特有の、力を加えることにより材料が硬化していく「加工硬化」をはじめ、ステンレスの表面についた酸化皮膜が保護膜となって、錆だけでなく研削や切削などの際にも表面を守る力として働きます。切削加工の場合、特に問題になるのがこの加工硬化ですが、研磨の場合も長時間加工すると同様の現象を起こすことがあります。
ステンレスを研磨する場合、最初の1パスで表面の酸化皮膜(不動態皮膜)は剥がれますが、ステンレスに含まれるクロムの作用によりすぐに酸化膜を修復しようとします。研磨では、この表面の酸化皮膜を剥がしつつ、なるべく短時間で次工程の粒度へ移行していくことが肝要です。砥石を何往復もさせ、研磨に時間をかければ、ステンレスの不動態化のほか、加工硬化によってさらに研磨しにくくなることがあります。またステンレスには多種多様な種類がありますが、それらの特性に応じて、研磨に最適な砥石や研磨条件も変わってくるため、注意が必要です。
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