砥石の振れ(フレ)

2010年6月26日更新

砥石でいう「振れ」は、回転中の砥石が基準から「ブレ」る状態を意味し、外周方向に振れる「外周振れ」と側面方向に振れる「面振れ」、内周方向に振れる「内周振れ」があります。

平面研削盤をはじめとする精密用途の加工機械では、振れを充分にとりきらずに加工することはできません。ただし振れが全くないという状態も容易には作り出せず、振れとりをうまく行っていく必要があります。 砥石の種類によっても振れの取り方や、振れに対するとらえ方は変わってきます。いわゆる一般砥石に分類されるGCやWAなどの研削砥石は、機械に装着したあと、回転しながらダイヤモンドドレッサー等を使って形を整えるため、砥石の外周形状の精度はダイヤモンドホイールほどは必要ないといえます。

一方で、ダイヤモンドホイールでも、加工中に形状が容易に変わっていくレジンボンドの砥石では、装着後にツルーイングとドレッシングを兼ねた作業を行って振れをとることもできますが、メタルボンドやビトリファイドボンドでは形状を整えるツルーイングも容易ではありません。砥石メーカーにフランジごと預け、このフランジに砥石を取り付けた状態で納品してもらういわゆる「フランジ現合」などを活用するのも一つの方法です。 研削盤のフランジの軸は、テーパーがついていますが、これは振れを調整するためについているとも言えます。

振れの基準

振れの目安としては、下記のような基準もありますが、求める精度や使用機械の精度によっても変わります。

  • レジンボンド砥石(カップタイプ)0.025mm以下
  • レジンボンド砥石(ストレートタイプ)0.013mm以下
  • メタルボンド砥石0.01mm〜0.001mm以下
  • 電着砥石0.01mm〜0.001mm以下
  • ビトリファイドボンド砥石0.01mm〜0.001mm以下

一般に、レジンボンドを用いた砥石は、ダイヤモンドホイールの中でもあたりがやわらかく、例えるなら空気が抜けたタイヤをあてるようなものであるため、多少の触れは吸収できます。またボンドそのものがやわらかいため、すぐに表面が削られます。研削盤への取り付け後ツルーイングやドレッシングで振れを比較的に簡単にとれるだけでなく、加工中にも振れにあわせて形状が変わってしまうため、他のボンドに比べて基準が若干緩くなっています。ただこれは一般的な研削加工についてであり、要求精度の高い加工ではレジンであっても振れの基準はさらに厳しいものになります。メタルや電着、ビトなどはボンドそのものが硬く、ダイヤモンドホイールそのものに振れがあると容易にツルーイングなどで振れをとることができません。フランジ部分での調整が効かなかった場合、他で振れを吸収することもできず、そのまま加工精度に影響します。特に電着砥石は、メッキによってダイヤモンドの層が表面に機械的についているだけなので、砥層をつける前の台金の精度が、そのまま砥石の精度となってきます。電着砥石の場合、振れのほかダイヤモンドやCBNが表層が突出している高さを揃える調研などが行われることもあります。

余談ですが、ダイヤモンドホイールをはじめとするダイヤモンド砥石は、各メーカーのほうで振れの基準値を設けており、検査票には何十ミクロン以下との記載があります。これは実測値ではなく、規格値です。

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