金の純度の分析方法|金の純度の測り方について

2018年8月26日更新

金の純度を調べるためにはいくつかの分析方法があり、これら測り方によっては比較的低コストでも純度を測ることができます。ただし熟練を要するものや、時間がかかるもの、精度に難があるもの等もあり、目的に応じて選ぶ必要があります。

物体に含まれている「元素」の量を調べるには蛍光X線分析等が適していますが、専用の分析装置が必要であり、一般的には個人での分析が難しいため、受託分析等の業者へ依頼する必要があります。もっとも、ハンドヘルド蛍光X線分析計と呼ばれる手で持って使うハンディタイプの宝飾品分析用機器も市販されていますので、この方法がもっとも簡便かつ非破壊での分析を可能とします。大量にジュエリー等の分析対象がある場合は、こうした機器の使用も一考に価します。

金の純度分析の方法|非破壊検査と破壊検査

分析手法の分類としては、まずは計測する対象を破壊するか、破壊しないかで2つに分けることができます。前者を破壊検査、後者を非破壊検査といいます。

 金の純度を計測する場合の多くは、ジュエリーやアクセサリー、金貨などの価値を調べるために行うため、分析の際に壊れてしまっては困るものが大半と思います。こうした場合は、非破壊検査を用いることになります。

なお、下表の分析方法は金の純度だけでなく、他の貴金属の純度を分析する際にもあてはまります(一部、金の分析に使われる固有のものもあります)。

金の純度分析に使われる手法の種類

金の純度分析に使われる主な手法と特徴
検査区分 分析・検査方法 特徴
非破壊検査 試金石法 分析対象と比較対象になる複数の金合金サンプルを黒色の石に擦り付け、色を比較しつつ、これら同時に順番に異なる酸をかけていき、分析対象と溶けるタイミングが同じ金合金を探して金の純度を同定。
蛍光X線分析(XRF) X線を分析対象にあてた際に発生する蛍光X線から含まれている成分や含有比率を同定。
電子線マイクロアナライザ(EPMA) 検出できる下限値が100ppm程度ときわめて高精度。分析対象に電子線をあてた際に発生する特性X線から元素を同定。
比重法 金合金を専用の比重計を使ってはかり、そこから成分を推測する。類似した比重を持つ対象の同定は難しい。
破壊検査 灰吹法 坩堝に灰を入れ、金、銀、銅、亜鉛などが混ざった金合金と「鉛」を一緒に溶かす。酸化した鉛や他の卑金属は金、銀だけを残し、灰に吸い込まれる。残った金・銀については硝酸をかければ金だけが残る。
高周波誘導結合プラズマ法(ICP法) 分析対象にプラズマエネルギーを与えた際に発生する各元素固有の強度をもつ発光線を分析。ppmやさらに小さなppb単位での微量元素が検出できる。

定量分析か、定性分析か

さらに、分析方法にはこの破壊・非破壊の区分のほかに、定量分析と定性分析と呼ばれる分け方があります。定量分析は、金の元素がどれだけ含まれているのかその「量」を数字で示すことができる分析方法です。

たいして定性分析は、金が含まれているかどうか、含まれているとすればどの程度の金合金に相当するかを調べる方法です。この場合の定性分析は数字で示すというよりは、色味がK14に似ている、あるいはK18に似ているといった官能評価となります。実務上はさらに分析対象となる金をこすり付けた黒色の石に、特定の酸をかけて、同じ金の純度をもつものとの溶け方の相違を見て純度を判断します。

この定性分析も熟練者が行うことで精度の高い判定も可能とされていますが、科学的な証拠がなく、また昨今では合金元素として添加する成分を調整することで、実際よりも金の純度を高く見せる技術も発達しており、見た目だけでの判定はますます難しくなっています。酸との併用で試験されることが多い所以です。

最新の分析機器を用いた定量分析が確実といえば確実ですが、こと金に関しては、古の時代より非破壊検査方法としては試金石法(タッチストーン法)、破壊検査方法としては灰吹法という方法が伝統的に使われてきており、現在もこの方法での分析も使われています。多品種の分析を迅速に行う必要がある場合は、携帯型のハンディー蛍光X線分析機も使われます。

分析方法の詳細

タッチストーン法、または試金石法

平たく言えば、この手法は分析対象を黒色の石へこすり付けて色をつけ、金合金のさまざまな見本と目で比較して判断する方法です。単純に、色を比較するだけのこともあれば、より信頼性をあげるため薬品と併用する場合とがあります。

この方法は非破壊検査での代表的な方法とされますが、厳密にはアクセサリーやジュエリーの石にこすり付けるので、微量とはいえ、分析対象品の金属をこすり落としてしまっていることにはなります。こうした意味で、完全な非破壊検査を望む場合はこの検査方法は適していません。

まず、試金石と呼ばれる黒色の石を準備します。この石の表面はサンドペーパーや砥石でよく磨いておきます。#320程度の粒度がよく使われます。この石は碁石や硯石として使われる珪質粘板岩の一種である那智黒が適しているとされますが、金属よりも硬く、酸でも溶けずにあとで洗い流せる石であれば何でもかまいません。タッチストーンとも呼ばれ、ジュエリーの純度判定用のものは専用のものも販売されています。

次に、ジュエリーや金貨をこの試金石と呼ばれる黒色の石にこすり付けます。通常は、分析対象となる品を使って石に金の一本線をひくような形で軽くこすり、あとをつけます。

今度は、その隣に手本金もしく試金針と呼ばれる金合金の見本を使って黒色の石に金の線を引きます。手本金は5〜6種類の金合金を純度別に束にした見本です。わっかにキーホルダーのようにしてK24、K18、K14などの刻印つきで棒が通してあります。細かいカラーゴールドに対応できるよう、ものによっては70本近くが束になっているものもあり、1本のサイズは幅 x 長さ x 厚さ=7mm x 70mm x 1mmといったもので、先端部だけが本物の金合金になっています。

分析対象品をつかって黒色の石にひいた金色の線の隣には、この手本金から複数の純度別に別の金色の線を引きます。

分析対象となる製品を石にこすりつけてひいた金の線と、手本金のサンプルを擦って引いた金の線との色を比較して近いものを選ぶ、というのがこの手法の基本原理です。手本金のサンプルの線の上には、どのカラットのものかわかるよう印をつけておきます。

昨今はイエローゴールドのほか、ホワイトゴールド、レッドゴールド、グリーンゴールドといったカラーゴールドもあり、色味だけでの判別は困難を極めます。また、目視だけでは分析精度が心もとないため、実用上はこれに加えて酸を判断基準に使います。

具体的には、濃度、混合比率の異なる硝酸、王水を準備して、さきほど引いた双方の金の線上にこの溶液を同じように軽くたらし、どちらが溶けるかを比較していきます。たとえば、K14のテスト用に調合した酸をかけた場合、K14の純度を持つ金は残りますが、これを下回る純度の場合、溶けて黒色の石にひいた金色の線が見えなくなります。溶け方やそのスピードも判断材料となります。成分組成が同じならば、溶け方も同じになるからです。

金は純金のK24でもない限り、必ず合金の形態をとっています。金以外に含まれる成分は主として銀、銅ですが、それぞれ溶ける酸の種類が違う点を利用しています。銀は王水(塩酸:硝酸=3:1)には溶けませんが、硝酸には溶けます。金は、硝酸、硫酸には溶けませんが、王水には溶けます。銅は、王水をかけると暗緑色の泡を吹き始めてすぐに溶け出します。< /p>

純度がまったくわからない場合、まず純度の低い金に含まれる他の金属が溶ける酸をかけて状態を観察します。

金のカラットはすなわち金の純度を示し、K10、K14、K18、K22、K24といった具合に24進法でK24が100%(99.9%)であることを示しますが、それぞれの純度での金が溶ける酸を調合します。都合、5〜6種類の酸(主として硝酸と王水)を準備することになります。K14以下のものは銀、銅の割合が多いため、硝酸を使って溶けるかどうかを評価することになります。

こうした分析方法であるため、タッチストーンとなる黒色の石には、分析対象品だけでなく、見本となる複数の手本金を使って純度別に線を並べてひいて、分析用の酸をそれらすべての線と交わるように直角の線上に引くと、溶ける、溶けないの比較が複数の純度の金合金とまとめて容易に行えるのでよく使われる方法となります。

比重計を使った分析

定性分析のひとつで、比重を用いて調べるという方法もあります。これは金属には固有の比重があり、金合金であれば、金、銀、胴の比率が異なることで、比重についても違いが出ることから用いられる手法です。ただ、この手法の難点は目安にしかならず、金以外の合金でも似た比重のものを作ることは可能であることと、純度の微妙な違いを明確にするのは難しいこと、また空洞があるものには使えない、宝石などがついているものにも使えない等のデメリットもあります。例えば、K24とK22の違いを比重だけから判定することは厳密には困難です。

この方法では、比重計と呼ばれる分析器を使って、対象となる製品を水をはった比重計に入れて測定します。金合金は金、銀、銅などの比率で比重は微妙に変わりますが、比重計を使ってそれらを類推する方法がこの分析手法です。

例えば、K18であれば金が75%含まれ、残りの25%が銀と銅で構成されている合金の場合、銀と銅が含まれる比率によって比重が異なることがわかります。

K18の金合金の比重一覧の例
カラット 金の純度(%) 銀/銅の比率 銀(%) 銅(%) 比重 通称名
K18 75 (10/0) 25 0 15.97
K18 75 (9/1) 22.5 2.5 15.86
K18 75 (8/2) 10 5 15.76
K18 75 (7/3) 17.5 7.5 15.66
K18 75 (6/4) 15 10 15.56 ギャクシブ
K18 75 (5/5) 12.5 12.5 15.46 ゴーゴー
K18 75 (4/6) 10 15 15.36 シブロク
K18 75 (3/7) 7.5 17.5 15.27
K18 75 (2/8) 5 10 15.17 アカ
K18 75 (1/9) 2.5 22.5 15.08
K18 75 (0/10) 0 25 14.99

K22以下の金合金には上記のように比重にバリエーションがあり、ここから成分の類推を行います。

蛍光X線分析

含まれている元素を定量分析できる手法で、装置によっては分析対象品をまったく変形させずそのまま元素だけを分析できる方法です。ハンディー型のものもあります。

原理は分析対象にX線を照射してそのときに発生する蛍光X線の強度やエネルギーから対象に含まれる元素を分析するというものです。

金の純度分析の場合、複合的にいくつもの元素が結びついているものの量を調べるのとは違い、単一元素であるAuがどれだけ含まれているかを調べたいわけですから、分析さえ通してしまえば比較的簡単に結果も読めるため、シンプルな方法です。

上記のタッチストーン法では、分析対象となる製品を少しではあっても石にこすり付けますので、これに抵抗があるという場合は、この手法がもっとも簡便で確実な方法といえます。非破壊の元素分析では、電子線を使った分析方法もありますが、真空中での分析となるため、手で持つハンディーで分析というわけにはいかない難しさがあります。

灰吹法

この方法は紀元前から使われている非常に古い方法であるにもかかわらず、金については精度の高い純度分析ができます。ただし、分析対象品を溶かしてしまうので、破壊検査に分類されます。

基本原理は、金合金に含まれている金属の融点の違いを利用しています。金の元素としての融点は1064℃ですが、分析対象品を鉛とともに多孔質の坩堝に灰を敷いて1150℃で溶かします。すると、貴金属に比べて融点の低い卑金属(ベースメタル。貴金属以外の金属)は鉛とともに溶けた後、酸化して灰に吸い込まれつつ坩堝の多孔質の穴に吸収されます。坩堝の底に残った金属の粒が貴金属となりますが、これは金と銀が残っていることになり、銀は硝酸で溶けるもの金は溶けないため、この残留物に硝酸をかければ純粋な金だけが残る、という寸法です。

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