ハンドキャリーを使う意味|インボイスや通関はどうなるか

2017年3月22日更新

ハンドキャリーとは、海外へ物品を手荷物扱いで運んだり、あるいは逆に海外から手荷物扱いで旅客機で運んでくることを意味する用語です。英語でもhand-carryの言い方で意味は通じます。国内でも、新幹線等を使ったハンドキャリーを行うケースもあります。

海外への輸出や輸入を行う手段としては、一般的に船かエアーを使いますが、ものづくりの多くの業種ではコストの問題から船便にしないと採算がとり辛くなっています。容易に想像できる通り、大量に物品を送る場合、船便はエアーに比べて費用は安いものの、輸送に時間がかかります。そこで急ぎの場合はエアー便を使うことになりますが、これにも輸送リードタイムというのは掛かります。エアー便を使っても納期に間に合わない、といった非常事態のケースで使われるのが「ハンドキャリー」となります。

ハンドキャリーは自社の社員が行うことも有れば、専門の業者に依頼することも有り、昨今は専門の業者も多数ありますので、地域によっては手配も容易です。

多くの製造業にとっては、部品や材料の欠品というのは製造ラインの停止を意味し、ラインを停止することで時間当たり、1分あたりいくらといった損失が発生します。規模の大きい製造ラインを持っていれば、ライン停止による損害金額もそれだけ大きくなります。

特に自動車業界では、試作車から量産までいずれも厳格なスケジュールが決まっており、車両組み付けの計画というのは容易に変更ができません。自動車には当然多種多様な部品を使いますが、1つでも足りなければ製造できませんので、各部品メーカー、材料メーカーはこのスケジュールを死守するよう納入を行うことになります。

このため、時として輸送コストを度外視してでも製造ラインへ必要な材料や部品、治具等を届ける必要が出てきます。

日本企業の海外進出に伴い、ハンドキャリーによる特別な輸送というものも増えていますが、本来的には、海外へ進出した工場は現地やその近隣諸国から部材を調達することで生産コストを下げることが出来ますので、日本からの調達は原則減らしていく傾向にはなります。

とはいえ、製造業の多くでは特殊な部品、材料、工具、治具を多数使いますので、日本からの調達に頼らねばならない部分も多く、時としてこれらをハンドキャリーで運ぶ必要性があります。

計画的な調達、在庫管理を実施していれば、手配フレや非常事態発生時にもある程度安全在庫を使いつつ、ハンドキャリーを実施せずとも生産を継続することが可能ですが、現実には多くの問題により、計画通りにいかず、ラインストップの危機に見舞われます。こうした場合に、日本−海外の間のハンドキャリーだけでなく、海外の工場間や調達先の間でも使われます。

輸送手段としてのハンドキャリー

メーカー側から見た輸送手段としてのハンドキャリーの位置付けというのは、概ね下表のようになります。海外からの輸入や、海外への輸出はこれら3つの輸送手段をうまく組み合わせ(もちろん、双方の国ではトラックや鉄道も駆使し)、調達や販売を行うことになります。

輸送手段によるコストとスピードの違い
輸送手段 コスト 納入までの時間 特徴
ハンドキャリー 極大 最速(距離によっては当日〜2日) 旅客機に実際に運送人が乗り込み、手荷物扱いで物品を運ぶ方法。最速だが、最もコストがかかる。重量については航空便にもよるが超過料金を支払うことでかなりの重量まで運搬可能。ただし容積の大きいものや危険物の運搬には向かない。
エアー 速(4日〜10日前後。特殊な物品や国を除き、概ねどの国でも1週間見ておけば納入可能)。 船よりもはるかに速いが、出荷から着荷まで航路によっては予想外に時間がかかる事もある為注意を要する。これは航空機自体はどの国へも1日〜2日で到着するが、通関や国内輸送のリードタイムが別途かかる為である。
船便 小(輸送量が多い場合) 遅(近場の中国(上海)‐日本でも出荷から搬入まで12日前後。日本−インドであれば38日〜48日前後 重量物から大型のものまで物品を大量に安く運ぶことに長けた輸送手段。荷量が少ないと航路によってはエアー便の方が安くなることがある為注意(最低料金が決まっており、船の場合はエアーに比べてそれが高くなる)。箱単位やパレット単位で輸送できるLCL(混載便)と、自社の荷物だけでコンテナを丸々一本使うFCL(フルコン)とがある。

ハンドキャリーでのインボイス

ハンドキャリー品であっても、使用するかどうかは別にして、原則、インボイスは必要となります。後述する通り、ハンドキャリーでの通関が「旅具通関」となった場合では、簡易的な申告となり、レシートなどの提示だけで、インボイスの提示を求められることもなく通関が終わってしまうことも有りますが、業務用に使うものを運ぶ場合は、インボイスとパッキングリストは事前に準備しておく必要があります。

無償での取引ということであれば、無償インボイスにし、有償であれば通常のコマーシャルインボイスにしておきます。無償インボイスで通関した場合は、あとに買い手から支払いを受けることは原則できませんので注意を要します。

国によってはこれら書類をかなり細かくみられることもあります。 インボイスには、インボイス番号やあて先、支払条件、品名、個数、原産国、価格、通貨単位、サインなどを明記します。またパッキングリストについてもネット重量、グロス重量を梱包している単位ごとに記載していき、ケースマークもきちんとつける必要があります。

ただ、業務通関ではない場合、「通関証明」がないため、国によっては送金時に問題となることもあります。昨今では、銀行から海外へ送金する際に、貿易品であれば通関証明だけでなく、契約書やインボイスがあればよいという場合もある為、一概には言えませんが、通関証明必須の場合、ハンドキャリー時の「納税証明」のようなものでよいかどうか確認が必要です。

日本であれば、入国時に消費税や関税を支払った証明が出ますが、インボイスとセットになっていないため、何に対する支払なのか特定が難しく、通関時に記載する申告書に、インボイスと同一名称を使って記載したり、インボイス番号等を明記する等、通関の記録と一致させる工夫が必要です。

ハンドキャリーでのインコタームズ

ハンドキャリーを行う場合、高額であることも有り、多くの場合は輸出側か輸入側かのどちらかの強い要望に応じて実施することが多いため、実質上、EXWかDDU、DDPといった条件での実施が多いようですが、通常取引契約でインコタームズを定めているのであれば、その取引条件に沿ったインコタームズにすべき、となります。

ただ、ハンドキャリーの実際のリードタイムは品物を運送人に手渡してから、必要とされる工場や倉庫などの場所へ納入するまでトータルで見ることになります。

ハンドキャリー業者に頼む場合も、多くの場合は、生産場所へ直接取りに行くケースが多く、こうした集荷の費用もハンドキャリーの料金には加算されていきますので、Ex-go downといったインコタームズが最も自然かもしれません。ただ、インコタームズをこうしたものにしても、通常流れている売価の設定がFOB価格になっている等の場合はいちいち変える手間がかかりますので、FOB価格での取引としつつも、輸送費用のみハンドキャリーを依頼した側がすべてのコストを負担、ということもあります。

ハンドキャリーのやり方|輸出と輸入

ラインストップを避けるため等でハンドキャリーを業務で実施する場合、おおむね、以下の2パターンとなります。

  • 自分もしくは自社の社員が直接運ぶ
  • ハンドキャリー業者に依頼する

自分で運ぶ、もしくは自社の社員が運ぶ場合

航空機のチケット手配や、場合によっては入国ビザが必要です。またハンドキャリーする貨物の量によっては運ぶ方法についても考えておく必要があります。段ボール箱に数箱ということもありますが、手荷物としての重量上限・容積上限・個数上限のほかにも、一人で運ぶことができる量には限度があります。

チケットの手配とビザ、パスポートなどの確認と平行して、運ぶ予定の物品のインボイス、パッキングリストを準備します。物品の計量が必要です。また、輸出や輸入に許認可が必要な物品であれば、それらの書類も揃えます。

物品が揃ったら、インボイス、パッキングリストを持参して出発します。

航空会社のカウンターで荷物を預けますが、航空便ごとに重量上限や容積の上限に違いがありますので、これらも事前に調べておき、カウンターで預ける際は、必要に応じて重量超過料金や荷物の追加個数に対する超過料金を支払います。

出国の際、輸出通関を行う必要があるかどうかは、国によっても物品の金額や種類によってもかわります。

入国時には必ず申告をしますが、後述する旅具通関となるか、業務通関となるかで手続きにかかる時間が大きく異なります。業務通関になる可能性が高いような場合は、現地側で輸送業者(フォワーダー)等に通関サポートを前もって依頼しておきます。

通関時には税金の支払いを現金で行う必要があり、これはインボイスの価格に対してかかるため、出国時に問題とならない範囲で、ある程度の現金と、クレジットカードなどを持参する必要があります。

万が一、空港の税関で止められた場合、適切な説明ができることが必要となりますので、英語と輸出国側、輸入国側の言語ができることが本来は望ましいです。

スケジュールによっては、配達先の国での宿泊も手配しておく必要があります。

現地側についたあとも、自分で運ぶ場合は、事前に次の運送便の担当がいない限り、足を確保し、目的地まで物品を持って運ぶことになります。

ハンドキャリー業者へ依頼する

昨今は航路によっては非常に多くのハンドキャリーが飛び交いますので、業者の数も多く、値段もそこそこ下がってきてはいます。

業者に依頼する場合、見積もりをとって、インボイス、パッキングリストを準備し、集荷にきてもらう場所・時間を指定し、配達場所と時間も指定します。またどのような物品なのか、内容と重量サイズ個数についてもあらかじめ連絡しておきます。

原則、その国へのハンドキャリーの経験が豊富な業者の指示に従って準備を進めます。

ハンドキャリーの場合、輸出と輸入の双方で通関や輸送手段を確保しておく必要がありますが、業者に依頼する場合、費用を負担するほうが自分の国側のハンドキャリー業者に全行程のアレンジを依頼することが一般的です。こうした場合、通常は業者のほうで、現地の空港を出てからの配達もアレンジします。

ハンドキャリーでの通関はどうなる

国境を越えて物品のやり取りを行う場合、輸出する際の「輸出通関」、輸入する際の「輸入通関」を必ず経る必要があります。通関とは、御幣を恐れず端的にいえば、その国から物品を持ち出したり、持ち込んだりする許可を得る一連の手続きのことです。

このため、通常の貿易であっても、旅行者の手荷物であっても、形式上、「通関」と呼ばれる手続きが必要になりますが、前者と後者では手続きにかかる時間や必要な書類、申告書の内容が大きく異なります。

通常の物品の貿易で行われるのが「業務通関」、反対に旅行者が自分の手荷物などを簡易的な方法で空港税関で申告して通関する方法が「旅具通関」と呼ばれます。

このように、ハンドキャリーでの通関という側面で見た場合、通関には、「旅具通関」と「業務通関」の二種類があることになります。

製造業におけるハンドキャリーとは、費用はさておき、時間が死活問題となっているケースで使われる輸送手段であるため、より早く通関が可能な「旅具通関」を選ぶケースがほとんどですが、荷量が多かったり、物品の種類によってはこの通関方法が使えず、通常の「業務通関」となります。業務通関を行う場合、未経験者がその場で申告して許可を得ることが難しく、輸入側のフォワーダーを経由して通関のためのサポートを依頼することが多いです。

旅具通関のやり方は、海外旅行されている方であればほとんどがご存知かと思いますが、着陸前に機内でも配られる小さな申告書に必要事項を記入し、空港内の税関にこれを提出し、場合によっては一言二言担当者の質問に回答する、という簡便なものです。

旅具通関に使う申告書のサンプル

各国語版で以下のような申告書を手で書いて空港の税関に渡します。以下は日本の税関で用いられている申告書です。携帯品・別送品申告書と呼ばれます。

旅具通関に使う申告書(日本語)

輸入申告書 旅具通関 日本語

旅具通関に使う申告書(英語)

輸入申告書 旅具通関 英語
  • 「旅具通関」扱いで通ることがハンドキャリーでは最も有利な方法とはなりますが、国によって「旅具通関」の範囲が定められており、これに適合しないと判断されれば、業務通関を行うことになります。

    簡易通関となる旅具通関を行うことができる要件というのは、例えば、日本税関によれば下記のようなものとなります。

    旅具通関が可能な範囲
    携帯品 手荷物、衣類、書籍、化粧用品、身辺装飾品、その他本人の私用に供することを目的とし、且つ、必要と認められる貨物。お土産等の貨物は1品目につき3個まで。
    職業用具 本人の職業の用に供することを目的とし、且つ、必要と認められる貨物
    引越荷物 本人及びその家族が住居を設定し維持するために供することを目的とし、且つ、必要と認められる貨物。
    託送品 社用品等、本人の個人的な使用に供する貨物以外の貨物を携帯して輸入する場合であって、その範囲は数量にかかわらず、その課税価格が30万円程度以下の貨物

    ハンドキャリーにおける重量とサイズの限界

    一般には手で運べる程度のものしかハンドキャリーされないと思われがちですが、工場などの量産ラインで使うもので、手荷物の上限にかからないものであり、旅客機へ積み込むことができるものであれば何でも運ぶことが可能です。

    航空会社や利用する空港(航路)によって違いはありますが、国際線の場合、例えばJALであれば以下のように規定されています。

    • エコノミークラス 2個(1個23kgsx2)まで無料 46kgs
    • 容積は、荷物の三辺(縦x横x高さ)の合計が203センチを超えない
    • 1個の貨物は45kgsを超えないこと
    • 個数超過は、無料個数+7個=9個が上限

    ハンドキャリーを一人で行う場合の重量上限は、超過料金を支払うことで、上記の計算では45kgs x 9 = 405 kgsまで運搬可能、ということになります。

    旅客機には重量制限が細かく設けられている為、その時々で変動はあるとみても、ハンドキャリーを5名で行うと仮定した場合、2025kgsの製品を輸送することも可能ということになります。

    1個当たりの荷物の上限が32kgsを超えず、1個の貨物の三辺合計が203cmを超えないことといった規定を設けている所も多いです。

    基本的には、どこも荷物の個数、1個当たりの荷物の重量上限、1個当たりの荷物の容積上限が設定されています。

    ハンドキャリーを仕事としてみた場合

    時給が高いことが知られており、アルバイトでは人気ですが、ハンドキャリー会社のスタッフでもない限り、この仕事だけで食べていくのはなかなか困難です。仕事が不定期ということもありますが、スケジュールがかなり過酷で、即日対応しなければならないため、収入を定期的にというのが難しいです。

    自前のカードでマイルをためたり、飛行機に乗るのが苦にならない方にとってはなかなかよいアルバイトで、ビザなしで入国可能な、いわゆる強いパスポートを持っている国籍の方が有利です。また、いずれの国からもビザが必要とされるような入国手続きが厄介な国のビザをすでに持っている、というような方も歓迎されます。

    ペイはよいですが、顧客がハンドキャリーを使う場合というのは緊急度が高く、費用がかかっても確実に届けてほしい場合のみであるため、失敗が許されません。もっとも、しくじったとしても損害賠償を請求される、というようなことはありませんが、無事に届けることができなければ顧客は次からその会社にハンドキャリーは頼みませんので、毎度毎度が緊張感のある仕事といえます。

    また、許認可が必要な物品を知らずに運んでしまったり、何らかの規制のあるものを知らずに運んだ、あるいは法に触れるものを運んでしまったといった場合は、「頼まれたからやった」では通用せず、物品の没収だけではなく、現地で拘束されるといったリスクも存在します。

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