プラスチックの融点、耐熱温度の一覧
プラスチックの融点や耐熱温度を見ていく際に指標とされるのがガラス転移温度と荷重たわみ温度、ビカット軟化温度、ボールプレッシャー温度、クラッシュベルグ柔軟温度といった軟化や脆化するときの温度です。耐熱性については、こうした物理的な耐熱性のほか、熱劣化・熱分解のような化学的耐熱性の二側面から見ていく必要があります。
プラスチックは高分子材料であり別名ポリマーとも言いますが、これらに共通しているのはある一定の温度を超えると弾性率に変化のない安定したガラス状態から、動きのあるゴム状態に変わってしまう点です。この時の温度をガラス転移温度と呼びますが、この温度を超えてしまうとプラスチックを工業材料として使うことが困難になります。
荷重たわみ温度とは、ある力を加え、温度を上げていった際に一定のたわみ量を超えるときの温度を意味しています。非結晶性のプラスチックについてはこの温度を超えると大変形を起こしてしまいます。結晶性プラスチックについても寸法変化を起こすことが知られています。
プラスチックには、熱をかけたときに溶けるもの(=熱可塑性プラスチック)と硬く固まるもの(=熱硬化性プラスチック)とに分類できますが、溶けてしまう温度だけでなく、強度が著しく弱くなってしまったり、寸法が狂ってしまう温度について着目していく必要があります。耐熱温度というのは、もともと期待していた強度をはじめとする物理的な性能を発揮できる限界温度であり、この温度を超えると軟化してしまうというような場合、工業材料として信頼できるものではなくなってしまいます。
部品や構造材、外装など、何らかのパーツとしてプラスチックを用いる場合には、常用を考慮した際にどのくらいの温度までが限界なのか、単に融点だけでなく、耐熱温度やプラスチックの熱変形温度も踏まえて検討する必要があります。また用途によっては、熱膨張や軟化、燃焼性、強度がどのように変わっていくのかという点にも留意する必要があります。プラスチックの物性はフィラー(充填材)の種類と割合にも影響を受けます。同じ種類のプラスチックであっても、添加されているフィラーの種類によっても耐熱や強度に影響してきます。
プラスチックの種類 | 記号 | 融点(℃) | 耐熱温度(℃) | 分類 |
---|---|---|---|---|
ポリエチレン | PE | 低密度ポリエチレン:95から130、高密度ポリエチレン:120から140 | 低密度ポリエチレン:70〜90℃、高密度ポリエチレン:90〜110℃ | 熱可塑性樹脂 |
ポリプロピレン | PP | 168℃ | 100〜140℃ | 熱可塑性樹脂 |
ポリスチレン | PS | 100℃ | 70〜90℃ | 熱可塑性樹脂 |
AS樹脂(アクリロニトリルスチレン) | SAN、AS | 115℃ | 80〜100℃ | 熱可塑性樹脂 |
ABS樹脂 | ABS | 耐高衝撃性ABS樹脂:100から110℃、耐燃性ABS樹脂:100から125℃、グラスファイバー(GF)充填:110から125℃ | 70〜100℃ | 熱可塑性樹脂 |
ポリ塩化ビニル、塩化ビニル樹脂 | PVC | 85〜210℃ | 60〜80℃ | 熱可塑性樹脂 |
アクリル樹脂、メタクリル樹脂 | PMMA | 90から105℃ | 70〜90℃ | 熱可塑性樹脂 |
PET樹脂、ポリエチレンテレフタレート | PET | 約255℃ | 延伸フィルム:200℃程度、無延伸シート:60℃、耐熱ボトル:85℃ | 熱可塑性樹脂 |
PVA樹脂、ポリビニルアルコール | PVAL | 約200℃ | 40〜80℃ | 熱可塑性樹脂 |
ポリ塩化ビニリデン | PVDC | 210℃ | 130〜150℃ | 熱可塑性樹脂 |
ポリフッ化ビニリデン | PVDF | 134〜169℃ | 150℃前後 | 熱可塑性樹脂 |
ナイロン6(ポリアミド) | PA6 | 225℃ | 80〜140℃ | 熱可塑性樹脂、エンプラ |
ナイロン66(ポリアミド) | PA66 | 265℃ | − | 熱可塑性樹脂、エンプラ |
ナイロン12(ポリアミド) | PA12 | 176℃ | − | 熱可塑性樹脂、エンプラ |
アセタール樹脂、ポリアセタール | POM | 181℃ | 80〜120℃ | 熱可塑性樹脂、エンプラ |
ポリカーボネート | PC | 150℃ | 120℃〜130℃ | 熱可塑性樹脂、エンプラ |
PBT樹脂、ポリブチレンテレフタレート | PBT | 232〜267℃ | 60〜140℃ | 熱可塑性樹脂、エンプラ |
ポリフェニレンスルファイド | PPS | 290℃ | 220℃〜240℃前後 | 熱可塑性樹脂、スーパーエンプラ |
ポリイミド樹脂 | PI | 熱硬化 | 500℃以上 | 熱硬化性樹脂、スーパーエンプラ |
ポリエーテルイミド | PEI | 215〜217℃ | 170℃前後 | 熱可塑性樹脂、スーパーエンプラ |
ポリスルフォン、ポリスルホン | PSF、PSU | 200℃ | 150℃ | 熱可塑性樹脂、スーパーエンプラ |
ポリテトラフルオロエチレン、フッ素樹脂 | PTFE | 約327℃ | 260℃ | 熱可塑性樹脂、スーパーエンプラ |
ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ素樹脂 | PCTFE | 220℃ | 120℃前後 | 熱可塑性樹脂、スーパーエンプラ |
ポリアミドイミド | PAI | 300℃ | 275℃前後 | 熱可塑性樹脂、スーパーエンプラ |
フェノール樹脂 | PF | 熱硬化 | 150℃ | 熱硬化性樹脂 |
ユリア樹脂 | UF | 熱硬化 | 90℃ | 熱硬化性樹脂 |
メラミン樹脂 | MF | 熱硬化 | 110〜130℃ | 熱硬化性樹脂 |
不飽和ポリエステル | UP | 熱硬化 | 130〜150℃ | 熱硬化性樹脂 |
ポリウレタン、ウレタン樹脂 | PU | 熱硬化 | 90〜130℃ | 熱硬化性樹脂 |
アリル樹脂、ジアリルフタレート | PDAP | 熱硬化 | 270℃前後 | 熱硬化性樹脂 |
シリコン樹脂、シリコーン | SI | 300℃前後、熱硬化 | 200℃以上。条件により400℃、一般に常用温度は−65℃〜315℃程度 | 熱硬化性樹脂 |
エポキシ樹脂 | EP | 熱硬化 | 150〜200℃ | 熱硬化性樹脂 |
フラン樹脂、フラン-ホルムアルデヒド樹脂 | FF | 熱硬化 | 200℃前後 | 熱硬化性樹脂 |
アセチルセルロース、酢酸セルロース | CA | 230℃ | − | 熱可塑性樹脂、繊維素系 |
ニトロセルロース、硝酸セルロース | CN | 171℃ | − | 熱可塑性樹脂、繊維素系 |
プロピオン酸セルロース | CP | 190℃付近 | − | 熱可塑性樹脂、繊維素系 |
エチルセルロース | EC | 135〜240℃ | - | 熱可塑性樹脂、繊維素系 |
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