湿式と乾式で研削、研磨加工はどう変わりますか。
湿式研削(研磨)とは、水や切削油などを使いながら加工する方法で、反対に乾式研削(研磨)はこうしたものを使わない加工になります。どちらも実施可能な状況ならば、湿式研削のほうが砥石の性能は向上しますし、加工対象へのダメージも少なくてすみますので、迷わず湿式を選ぶべきですが、現場などでの現地加工が必要なケースや、加工対象の性質上、液体がかかるとまずい状況や、廃液の処理や循環設備などがない状況では乾式を使うことになるかと思います。湿式がなぜ研磨や研削で有利に働くのかといえば、それは研削液の作用から一目瞭然です。水や切削油などの加工中に研削点にかける液体には、「冷却」「潤滑性向上」「切り屑の付着を防ぐ・流す」などの効果があります。
ダイヤモンド工具を使う場合、まず「冷却」がうまくできないと工具の損耗が激しく、場合によってはすぐに切れなくなります。加工メニューによっては、ワークと工具の接触点の温度が1000℃を超えてしまうようなこともあり、こうした高温下ではダイヤモンドは硬度が維持できません。また高温には比較的強いと言われるCBNであっても、高温下では水と反応して加水分解を起こすと言われており、いずれにせよ高温にして砥石側によいことはありません。またワークについても、あまりに高温になりすぎると文字通り「焼け」が発生してしまい、ワークにシミのようなあとが残ります。またワーク側にしても高温による材料の軟化や歪みも気になるところです。
また潤滑性の問題も重要で、砥粒とワークは滑らかであればある程、砥石は性能を発揮します。滑ってしまっては、切り込まないのではと思われがちですが、これはワークの材質によります。さらに湿式の場合、切り屑が粉塵となって周囲に飛散する度合いは乾式よりも圧倒的に少なくすみます。
乾式でまず気にしなくてはならないのは、ワークと工具の接触点の温度が高温になるという点です。回転数を工夫する、接触時間、接触面積を工夫するなどして焼付きに留意する必要があります。また、加工中に飛散する粉塵の問題もあります。ものによっては発火の危険があるため、作業環境に注意する必要があります。潤滑性、冷却ともに砥石と使用する機械だけに頼ることになりますので、何らかの形で放熱ができる機構をもった砥石を使う、高温下でも性能が劣化しないタイプの砥石を使う、乾式用に設計された砥石を使う等の対策が考えられます。
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