脆性モードと延性モードの違いについて

2010年8月14日更新

ある材料を研削加工するとき、材質や加工手法によって削れ方が変わることがあります。一般にはガラスやセラミックスなど硬くて脆い材料は、切りくずが粉になり、ガラスの例でいえば研磨した面が擦りガラスのように曇った状態になる脆性モードによる研削になります。一方で、金属のように流線形や丸まった切りくずを出す研削を延性モードと言います。

この研削モードの切り替わりは、実は材料の性質だけに依存しているわけではありません。微細加工などの分野でガラス表面の研削でも延性モードが起きていることが発表されています。砥石の先端からはダイヤモンドの砥粒などが突き出しているわけですが、この突き出しが加工対象に切り込んで研削は行われていきます。延性モードでは、この切り込み深さをなるべく浅くすることで実現します。

脆性モードではだめなのかと言われればそんなことはありません。粒度を細かくしていくことで良好な面粗度を得ることができますが、微細加工の分野などで砥粒一つ分程度の溝を表面の荒れていない直線で作る必要がある場合などには、延性モードによる加工でないと実現が困難です。脆性モードではどちらかというと、砥粒で加工対象の表面に衝撃を与えて削るため、ミクロレベルでは段々とした痕が残ります。対して延性モードは金属材料に切れ味のよいバイトで溝入れするように砥粒の走った痕に段差が出来づらい特徴を持ちます。材料の性質によってもどの程度の切り込み深さと圧力で脆性モードへ切り替わるのか異なりますが、同じ材料であってもモード自体が切り替わることがあるという点は覚えておいて損はないと思います。

スポンサーリンク

>このページ「脆性モードと延性モードの違いについて」の先頭へ

砥石Q&A一覧へ戻る

脆性モードと延性モードの違いについての関連記事とリンク

硬脆材料
延性モード
脆性モード
切り屑、切り粉
切り込み量、切り込み深さ

このサイトについて

当サイトの記事はすべて工業製品のメーカーの実務経験者が執筆しています。

砥石メーカーの製品や技術を紹介するサイトとしてはじまりましたが、加工技術・工具・研削・研磨に関わる情報から派生し、ユーザーの問い合わせに応じて鉄鋼、非鉄、貴金属、セラミックス、プラスチック、ゴム、繊維、木材、石材等製造に使用する材料・ワークの基礎知識についても掲載するようになりました。その後、技術情報に限らず、製造業で各分野の職種・仕事を進めるうえで役立つノウハウも提供しています。

製造、生産技術、設備技術、金型技術、試作、実験、製品開発、設計、環境管理、安全、品質管理、営業、貿易、経理、購買調達、資材、生産管理、在庫管理、物流など製造業に関わりのあるさまざまな仕事や調べものの一助になれば幸いです。

工業情報リンク集

工業分野のメーカーや商社を中心に、技術、規格、ものづくりに広く関わりのあるリンクを集めています。工業製品の生産に必要とされる加工技術や材料に関する知識、マーケティングから製品企画、開発、販売戦略、輸出入、物流、コスト低減、原価管理等、事業運営に必要な知識には共通項があります。

研磨、研削、砥石リンク集