銀の黒ずみの原因と落とし方
銀は元来錆びにくい貴金属ですが、黒ずみが発生してしまうことがあります。これは黒錆とも呼ばれますが、厳密には錆ではありません。表面にできた硫化銀の膜による「変色」です。これが起きる原因をたいていはっきりしています。銀が黒ずんでしまうのは、「硫化」と「塩化」が主な理由です。
銀の黒ずみの原因
硫化とは、空気中に含まれている亜硫酸ガス、硫化水素が水蒸気と反応する現象です。このようなガスなどあまりないと思われるかもしれませんが、大気汚染がひどくない地域でもこうしたガスが微量ありますので、これらと反応することで銀のアクセサリーや銀製品の表面には硫化銀の膜が生成されてしまいます。
つまり、都会の空気にさらしておくだけでも硫化銀生成による黒ずみが発生することがあるということです。
さらに、硫化は名称のとおり、硫黄との反応によっても引き起こされます。皮膚に含まれるたんぱく質にも微量に含まれますので、常時身に着けていればそれだけでも硫化の原因になります。
また、硫黄を含む温泉や入浴剤、パーマ液などに触れても同様に硫化して黒ずんでしまいます。
卵の黄身やゴム系の接着剤に含まれる加硫剤の影響でも硫化は起きます。
このように現代社会では硫化を完全に遮断することは困難です。
また硫化ではなく、銀は塩化による変色が起きることがあります。これは単に銀が塩素と反応して塩化銀の白色膜ができる現象なのですが、日の光を浴びるとこの白色膜が黒くなってしまい、硫化と同じく、黒ずみとなってしまいます。このため、塩素系の漂白剤などに触れても銀製品は黒ずみます。
銀の黒ずみの落とし方|アルミホイルと重曹を使って落とす
この硫化によって発生した黒ずみは重曹、アルミ箔、お湯を使って落とすことができます。手順と方法はとてもシンプルです。
まず、水に重曹を溶かして沸騰させます。
次に、黒ずんでしまっている銀製品をアルミホイルなどのアルミ箔でふんわり包み、この湯の中に入れます。
数分もほうって置けば、銀製品から黒ずみから消えるという具合です。
これは還元による現象で、以下の化学式で説明ができます。銀に比べればアルミ(Al)はイオンになりやすい金属ですので、硫化銀がAlイオンによって銀に還元されるという反応が起きます。
3Ag2S + 2Ae + 6H2O ⇒6Ag + 3H2S +2Ae(OH)3
硫化銀であるAg2SがAgに還元されるという化学式です。
重曹を添加するのはこの反応を促進させるためです。
もっとも、この方法で黒ずみが落とせるのは硫化による変色の場合です。塩化銀による黒ずみの場合は、この方法は使えず、研磨でみがいて表面の黒ずんだ塩化銀を削り落とすしかありません。
銀の黒ずみは防止できるか
残念ながら銀製品である以上、硫化を避けることができませんが、以下の二つの方法が実用上の黒ずみ防止方法として知られています。
めっきによって銀を保護する
めっきは耐食性を持たせることにも古くから使われてきていますが、銀と似た色調をもち、強力に銀を守ってくれるめっきとしてはロジウムめっきがあります。ロジウムはプラチナ族で決して安くはない金属ですが、これを銀にメッキすることで変色をさせずに長持ちさせることができます。ロジウムは、変色しないだけでなく、化学的にも安定しており、非常に高い硬度を持ちます。銀合金は硬質化したものでもおおむね90 HVから100 HV前後のビッカース硬度ですが、ロジウムメッキは500 HVから650 HVもの硬度を持ちますので、銀に傷がつく心配もありません。摩擦や磨耗にも当然強くなります。
ただ、ロジウムめっきは銀に直接つけることができず、銅メッキやニッケルメッキをまずは下地として銀にめっきし、その上からロジウムをめっきする形になります。
変色しにくい銀合金を用いる
銀合金には数々の種類がありますが、このなかでアルゲンティウムシルバーと呼ばれるものがあります。これは銀合金でいうSV925やAg925に相当するもので、スターリングシルバーと同じ銀の純度92.5%を含有する銀ですが、通常のスターリングシルバーが銀92.5%と銅7.5%の組成となっているのに対し、銀92.5%、銅7.5%未満、ゲルマニウム1%未満という組成になっています。これにより、銀合金でありながら変色しにくい特性を得た銀です。
銀そのものは腐食や錆びにめっぽう強い金属です。この変色の問題さえ除去できれば、宝飾用途として申し分ない貴金属の一つといえます。
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