コイル材とは

2017年5月21日更新

鋼板をロール状に丸めてある材料を「コイル材」と呼ぶことがあります。コイル材とはすなわち、薄い鋼板を紙に見立てた場合、見た目は巨大なトイレットペーパーを連想するとわかりやすいと思います。プレス加工を主体とする現場では非常に多用される用語でもあり、材料となる鋼材はたいていの場合、「コイル材」の形で鋼材を扱う商社・卸から入荷することになります。

プレス加工を行うメーカーでは、材料倉庫やストアなどにゴロゴロ転がっているものを見ることができます(実際には非常に重く、勝手に転がると非常に危険なため、安全を考慮してきちんと固定されています)。

鋼板はミリ単位の薄いものが多く、プレス加工機にいったんセットすると、鋼材は自動で供給を続け、プレス加工が次々に進んで製品が仕上がっていく仕組みになっています。このため、鋼板をトイレットペーパーのようにロールに丸めておくと管理や運用面でとても利便性が高いです。

プレスの世界では、大量生産が前提となることが多く、材料も自動供給させていくのがもっとも効率的です。このため、材料となる鋼板はコイル材の形でやり取りされ、加工機械へのセットがそのままできるようになっています。

コイル材は購入時に規格(多くはJIS規格に準拠しています)を確認して商社から購入しますが、この規格には幅があるため、鋼板を製造している大元となる高炉メーカーのロットごとに、板厚(鋼板の厚さ)には、規格の範囲で一定のバラつきがあります。この範囲をせばめる、つまりピンポイントで特定の厚さの鋼板が欲しい、ということになると当然価格が上がり、調達の難度もあがってきます。

図面などで稀にこうした板厚の範囲が考慮されずに、ピンポイントの厚さでしか機能しないようなプレス加工部品もあったりしますが、この場合は、鋼板の価格が上がるため、製造コストが大きく上がったり、場合によっては図面どおりに作ることができないことがある点にも留意する必要があります。多くの技術者は大量生産される量産についても考慮のうえ設計を行うため、このあたりの問題は比較的おきにくいですが、設計者と製造者との間での認識の違いは時に大きなトラブルとなるため、念頭に置いておく必要はあります。

自動車部品の業界では、多種多様な「金具」が自動車部品の一部または全部に使われるため、プレス加工は必須となります。プレス加工を行うメーカーは、自動車部品をカーメーカーへ直接納入するティア1(Tier 1)と呼ばれる部品メーカーから受注を受けたり、下請けとして加工を行うことも多く、この場合、材料となるコイル材を有償支給や場合によっては無償支給によって調達し、加工したものを納入する形態がよく見られます。これは、コイル材を大量に調達するメーカーのほうが、価格を安く抑えられることもあるためで、自動車メーカーでは「集購材」と呼ばれたりもします。

仕入先がコイル材の単位で材料を仕入れているような場合や自社がコイル材を加工先に支給しているような場合、量産品の打ち切りなどによって突然製品の購入をやめねばならない場合には特に注意が必要となるケースとして、専用の材料を使っているケースが考えられます。

自動車部品は、おおむね3ヶ月先までの内示情報を客先から入手し、この数字をもとに材料の手配や生産計画を立案しますが、突発的な計画変更などでこの内示情報が反故になることもあります。こうした場合、特定の部品の製造にしか使わないコイル材を20トン等買ってしまっていると、他への転用も効かず、鋼材はスクラップにするしかなくなります。コイル材によっては発注ロットが大きいものがあり、それらを購入した直後に使用しないことになると、価格はかなりしますので、相当な損失が出ることを覚悟せねばなりません。自動車部品を製造するメーカーの多くが、長期の発注計画を求めるのはこうした背景もあります。

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