面粗度が出ません。

2009年9月14日更新

面粗さが十分に出ない場合、対策としては1.砥石の仕様を変える、2.研削条件・機械条件を変えるという方法が考えられます。どちらか一方で解決できることもあれば、両方実施が必要な場合もあります。 それぞれについて、面粗度を上げたり下げたりする条件について見ていきます。

また、面粗度の規格についてはJIS規格にて定められていますが、大別すると「粗さ曲線」、「うねり曲線」、「断面曲線」の3つの切り口で三次元的に捉えることができます。このうち、面粗度を上げるといったとき、どの指標を採用するのかでも値や対策は変わってきますので、よく見極める必要があります。例えば、加工対象を断面で見たとき、その最大の谷の深さをもって面粗度とするのか、最大の山の高さとするのか、十点平均粗さなのか、といった点です。

参考:表面粗さにJIS規格はありますか。

1.面粗度に影響する砥石の仕様

粒度

ダイヤモンドホイール、CBN砥石ともに、砥石の仕様のうち最も面粗度への影響が大きいのは「粒度」です。砥粒の直径のことですが、砥石の表層からはこれらが無数に突き出していますので、この大きさが工作物への切り込みの深さに影響を与えることは容易に想像ができると思います。ただ、非常に微調整が必要な場合、粒度を変えてしまうと具合が悪いこともあります。その場合は、他の仕様を調整していくことになります。面粗度に影響する砥石の仕様という観点から見た場合、単に砥粒の大きさである「粒度」だけでなく、実際にこの砥粒がどれだけ表面から突き出しているのかというミクロ的な視点も必要です。突き出し量はボンドの種類、硬さに依存します。同じ325番でも、レジンボンドとメタルボンドでは砥粒の突き出し量が変わるので、一回の回転で削ることのできる量が厳密には異なります。

また気をつけなければならないのは、粗番手(粗い粒度)ほど、1段階変わるだけで砥粒の直径が大きく変わるという点です。400番までのメッシュサイズでも、粗と仕上げでは1段階粒度を変更したときの差が非常に大きいと言えます。

砥石の付け替え、段取り替えは面倒ですし、できれば1工程で研磨は終えたいところですが、ほとんどは粗、中仕上げ、仕上げの3工程ないしそれ以上の工程で目的とする面粗度を実現します。

工程の間隔もよい仕上げ面を得るためには重要な要素で、砥石での研磨・研削加工は工作物の表面に無数に傷をつけて、だんだんと目の細かい傷をつけていく加工になるため、粒度の間隔が空きすぎると、後工程で前の段階での傷を取りきれなかったり、損耗が異常に激しくなったりします。一方で、間隔をつめたらよいかというと、全粒度を揃えて順番に加工していくと、あまりよい結果が得られません。各粒度で、砥石が十分に仕事をしなくなるからだとも言われます。

砥粒

より切れ味の鋭いタイプの砥粒、つまり破砕性の優れた砥粒よりはブロッキーで少々破砕性の悪いほうが理論的には面粗度がよくなりますが、実際の加工では砥粒のグレードよりも「種類」のほうが影響大です。ダイヤモンド砥粒、CBN砥粒、WA砥粒、GC砥粒、A砥粒、C砥粒など、もちろんボンドあっての砥粒なので、組み合わせで検討していくことになりますが、個々の砥粒には研磨する相手に応じて相性や固有の特性があります。 砥石を後半で意図的に目詰まりさせていくような仕様のほうが面粗度には寄与できます。

ボンド

面粗度で何を狙っているのかという点とも連動しますが、例えば面粗度がよくならないのは前工程での研磨痕(微小なスクラッチ)が残っているからというのであれば、少し削り込むタイプのボンドに変えたほうがよい場合もあります。同じ粒度でもボンドの種類を変えてしまう、あるいはボンド種は同じでもその硬さを調整することでも面粗度には影響します。一般に、粒度含め他の条件がすべて同じならば、レジンボンドはあたりがソフトで、例えるなら空気の抜けたタイヤのような状態ですので、表面から突き出した砥粒が深く切り込まず、クッション性もあるので面粗度はきれいに仕上がる傾向にあります。

結合度

ボンドの硬さは、あたりの硬さ、すなわち砥粒の突き出す高さや自生作用の促進度合いに関わってきますので、面粗さにも影響してきます。面粗度を上げるためには、他の条件が同じならば硬めの砥石のほうがよいとされます。また、若干目詰まりさせることで、砥粒の突き出し高さを抑えて、浅めの切り込みで仕上げていくこともできます。

集中度

砥石の中にどれだけ砥粒が入っているかを示す指標ですが、数が多くなれば、同じ粒度でも(加工中にかかる圧力が一緒なら)、一粒のダイヤモンドが工作物へ切り込んでいく深さは浅くなります。反対に、数を減らすことでより深く切り込ませることもできます。ガラスなどの研磨では、ダイヤモンドがガラスの表面で滑る傾向があるため、この集中度を下げて切り込みを深くすることも行われています。 ただこの仕様は増やしすぎ、減らしすぎは逆効果となりますので、加工対象に応じた適度な集中度が望ましいです。

台金

バーチカルやセンタレスなど砥石の重さが加工対象への圧力と関係してくる場合は、台金の材質も面粗度に影響します。ベーク盤などの樹脂を使って台金と砥層との間にクッション性を持たせることもあります。

砥層の面積

工作物へ直接あたる面積を変えることで、同じ圧力でも、砥石の砥粒が対象へ深く切り込んでいくことになります。連続した砥層から、セグメントのチップを持つ砥石への変更することで切れ味を向上させるかわりに面粗度は多少悪化させる、あるいは幅広の砥層を用いて砥石の切り込みを抑える、などの方法が考えられます。

2.面粗度に影響する研削条件・機械条件

面粗度が問題となる中仕上げから仕上げの工程では、精度よく仕上げる加工と目詰まりや砥石の研削焼けとは紙一重の部分が多々あります。

切り込み深さ

浅いほうが面粗さはよくなりますが、浅すぎると研削焼けの原因にもなります。

周速度(回転数)

回転がはやいほうが一般には面粗度の向上に寄与すると言われますが、他のパラメータの影響が大きい要素です。

送り速度

低送りにすることで、深い切り込みをさけていきますが、度が過ぎるとすぐに研削焼けするので注意が必要です。

研削油(研削液)

より潤滑性を高め、加工面の温度を冷やしてくれるクーラントでもあります。このパラメータは意外と気にしていない方が多いのですが、液種のほか、水溶性であればメーカー推奨濃度、かける量によっても大きく面粗度や研削結果に影響しますので、検討に値します。よくある問題としては、周速や加工性状によってこの研削油が研削点に十分にかかっていないことがあります。

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