天然ダイヤモンドと合成(人造)ダイヤモンドの違いについて

2010年12月8日更新

ダイヤモンドは炭素(C)で構成されていますが、これには鉱山から採れる天然ダイヤモンドと、高温高圧下で人工的に作られる人造ダイヤモンドがあります。前者は主に指輪やネックレス、イヤリングなどの宝飾品に多用され、後者は主として研削や研磨、切削などの「加工」を行うための工業用製品として使われます。

ただ、この区分けが絶対かと言われればそうでもなく、例えば工業用途では天然ダイヤモンドを好んで使うケースもあります。加工するうえでの特性を見ると、天然ダイヤは人造ダイヤに比べ、破砕性が高いと言われています。もちろん、これは産出される鉱山やグレードにも影響されますが、破砕性がよいということは切れ味がよいこととほぼ同義です。というのも、ダイヤモンド砥石やダイヤモンドホイールなどの工具類は、中にちりばめられた砥粒としてのダイヤモンドが加工中に少しずつ欠けて鋭利な面を表層に突き出していくため、切れ味が維持できると考えられているからです。ここでいう「破砕」はダイヤモンドが粉々に砕けてしまうことではなく、ダイヤモンドの一部表面の先端が少しずつ欠けていく「微小破砕」のことです。この破砕がまったく起きなければ、砥石の表面から突き出ているダイヤの頭は擦り減った揚句、丸まってしまい、加工対象に切り込まなくなります。この辺のメカニズムは「目詰まり」「目つぶれ」「目こぼれ」とも深いかかわりがありますので、興味のある方はそちらの記事もご覧ください。

一方、人造ダイヤモンドが指輪などの宝飾品としては適さないかと言われればそんなことはありません。一部の例外を除くと一般には見分けはつきませんし、ダイヤモンドの代表的な性質でもある「現存する最強の硬度」はどちらについても顕在ですし、また熱に弱い為、火で炙れば、炭化してしまいます。宝飾品用途で天然のものが使われる背景には、ビジネス的な事情と心情的なもののほか、人造ダイヤはあまり大きなものを作るのには向いていない(コストが見合わない)ということとも関係しています。

工業用のダイヤとしては「破砕性」、つまりある方向から力が加わったときの「砕けやすさ」が品質をはかる上での一つの指標となりますが、この破砕性にも実はいろいろあります。人造ダイヤの場合、製造する際にダイヤモンドの内部に残る不純物の種類や量を変えることで、破砕の度合いをコントロールできます。これは多種多様な加工素材へ用いるとき、最適なものを選択することで威力を発揮します。

例えば、石英ガラスや石などの金属よりもはるかに硬い素材を研削するとき、破砕性の良すぎるダイヤを使うと、砥粒がワークを十分に削る前に破砕を繰り返してしまい、思うように削ることができないケースがあります。こういうケースでは、破砕性と対置する概念である「靭性」の強いダイヤを使います。靭性とは、強靭(きょうじん)の「じん」が示す通り、ねばり強く割れにくい様相を表す概念です。これら破砕性と靭性は、ダイヤの形状とも深くかかわっており、割れにくい形状というものはあります。

宝飾用のダイヤでは、何かを削ったりといった使い方はしませんので、純粋に「見た目」がどうなのかという点が重視されます。一般に知られているダイヤの価値基準としては「ダイヤモンドの4C」が知られています。

天然ダイヤモンドも人造ダイヤモンドも工業用途、宝飾用途ともに使われますが、それぞれで価値基準、選別基準が違うためそれにあわせて使い分けられているというのが実情です。

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