鍛造の加熱温度
「鉄は熱いうちに打て」の格言の通り、実際の鍛造作業でも材料の加熱は必須です。このとき問題となるのが、どの程度の加熱温度が適性なのかという点です。温度が高すぎると、材料の組成が大きく変わってしまったり、成分の一部が高温によって消失・変質してしまって、本来の目的である強靭な材料を作ることから遠ざかってしまいます。
炭素鋼であれば、加熱温度を上げすぎることで、炭素が消失してしまう危険性があります。逆に、温度が低すぎても、材料に亀裂が生じたり、ひずみ、内部応力の残留といった問題が発生する可能性があります。
また、加熱温度によって材料がどの程度やわらかくなるか、言い換えれば、鍛えた際にどの程度伸びるかという延伸度が決まってきます。
鍛造を行う際は、目的の物性を得るためにどの程度の加熱温度が必要なのか吟味し、実施の作業時には温度を一定の範囲内におさめる必要があります。
なお、下表は鍛造する際の加熱温度の目安例です。最高加熱温度とは、鍛造を開始するのに適した温度で、最低温度(仕上げ温度)は鍛造を中止する、仕上げる際の温度です。
基本的に、炭素鋼の場合は、炭素含有量の多いものほど最高温度の上げすぎには留意する必要があります。
材料名 | 最高温度(℃) | 最低温度(℃) |
---|---|---|
炭素鋼(0.1%程度の炭素量) | 1352 | 750 |
炭素鋼(0.3%程度の炭素量) | 1290 | 790 |
炭素鋼(0.5%程度の炭素量) | 1250 | 820 |
炭素鋼(0.7%程度の炭素量) | 1170 | 850 |
炭素鋼(0.9%程度の炭素量) | 1120 | 900 |
ニッケル鋼 | 1250 | 850 |
ニッケルクロム鋼 | 1250 | 800 |
クロムバナジウム鋼 | 1250 | 850 |
クロム鋼(13%Cr) | 1280 | 850 |
ステンレス鋼(18-8) | 1300 | 850 |
高速度鋼(ハイス) | 1200 | 1000 |
電気銅(電解銅) | 870 | 760 |
四六黄銅 | 790 | 620 |
アルミ青銅 | 870 | 690 |
リン青銅 | 800 | 650 |
鍛造用アルミ合金 | 450 | 360 |
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