カラーゴールドの種類|金の色には種類がある
カラーゴールドとは金を主な成分とする合金のうち、色がついたもののことで、色の違いによっていくつかの種類があります。原則、カラーゴールドの種類の違いとは、含まれている金属元素の成分とその割合が異なることになりますが、表面だけメッキして色をつけているものはカラーゴールドではありません。
カラーゴールドとは金と何が違うのか
カラーゴールドの定義は、専門的な表現を使えば、「地金本体が色相を帯びた金合金」のことを意味します。地金とは、主要な成分となる金属で、この場合では金となります。対して、この地金に添加される金属を割金といい、金合金の場合、銀と銅が添加されていることがほとんどとなります。
ゴールドは黄金色だけではない
以前は、金やゴールドといった場合、黄金色に近いものがより純度が高い、つまり価値や価格が高いとみなされるため、金の純度のそれほど高くないものを、より価値の高い黄金色に見せるために成分が工夫された金合金が開発され、今もそういった目的で金合金が用いられるケースもあります。
ただ昨今はデザインの自由度が広がることや希少性が高く、同じ価値の高い金でもユニークで独創性の高いアクセサリーやジュエリー等の宝飾品に黄金色ではなく、さまざまなバリエーションをもつカラーゴールドも使われています。
カラーゴールドというと、何か安っぽい印象を与えがちですが、金に着色したものではなく、金の成分に他の貴金属を混ぜた合金であるため、金の純度が高いものであれば価値も高いという点では他の金と変わりはありません。ただ、あとから金だけを抽出するとなった場合、カラーゴールドの種類によって添加されている元素が違いますので、ものによっては骨が折れる可能性があります。
加工にはやわらかすぎる純金|金合金で加工される理由
そもそも金を合金にする理由のひとつは、純金と呼ばれるK24、つまり99.9%以上が金となっている素材でアクセサリーやジュエリーを作ると、やわらかすぎて変形してしまったり、傷が容易についてしまったりと限られた部分にしか使えないことが一つの要因としてあります。メッキなどを使って表面を保護する方法もありますが、本体の金属となる地金自体がやわらかすぎるとこういう手作業主体となる塑性加工には支障をきたします。
純金の硬度は、ビッカース硬度(HV)で25程度ですが、アクセサリーとしての加工に適しており、日常で容易に変形しない硬度は100〜120は必要とされます。金に他の金属を混ぜた合金とすることで、これに近い硬さにすることができます。
金合金自体は、成分を工夫することで最大でビッカース硬度150〜200程度まで持っていくことができますが(種類によっては300前後まで)、基本、純度と色味のバランスで決められるため、硬さだけを基準に成分の配合が決められるわけではありませんが、金が「合金」として使われる理由の一つが、この加工性の改善にもあります。
カラーゴールドの種類
ジュエリーに使う貴金属の基準や規格を定めているCIBJO(国際貴金属宝飾品連盟)では、カラーゴールドとして6種類の表示記号を定めています。メッキや着色などで色をつけているものに「カラーゴールド」の名称をつけることはできない決まりになっています。この6種類以外にもカラーゴールドはありますが、表示記号が定められていないため、国や製造元によってまちまちの表記がなされています。
種類 | 表示記号 | 成分 |
---|---|---|
イエローゴールド | YG | 金−銀−銅 |
ピンクゴールド(ローズゴールド) | PG | 金−銀−銅−パラジウム |
グリーンゴールド | GRG | 金−銀 |
レッドゴールド | RDG | 金−銅 |
ホワイトゴールド | WG | 金−パラジウム−銀、金−ニッケル−亜鉛−銅 |
グレーゴールド | GG | 金−鉄 |
種類 | 成分 |
---|---|
パープルゴールド | 金−アルミニウム |
ブルーゴールド | 金−インジウム、金−ガリウム |
ブラックゴールド | ホワイトゴールドの表面をメッキや着色、酸化等で黒色化。もしくはグレーゴールドの表面を酸化 |
カラーゴールドの表示方法
金の純度をあらわす品位のあとに続けて上表のカラーゴールドを示す記号を続けて記載します。
たとえば、K18のイエローゴールドであれば、
- K18YG
- Au750YG
のように記載します。
同様にK18のグリーンゴールドであれば、
- K18GRG
- Au750GRG
K18のホワイトゴールドであれば、
- K18WG
- Au750WG
のようになります。
イエローゴールド
金といえばまず思い浮かぶ黄金系のゴールドです。表示記号はYGとなります。主要成分は金−銀−銅の三つの金属であり、三元合金とも呼ばれます。JIS規格では、金純度としてK9(Au375、37.5%が金)、K14(Au585、58.5%が金)、K18(Au750、75.0%が金)、K22(Au916、91.6%が金)の4種類があります。
色には金の比率だけでなく、銀と銅の成分比率がかかわってきます。もっとも、金の純度が高いものほど、美しい金色が出ます。金の純度がK14(58.5%)以下のものについては、亜鉛を添加することで、擬似的な黄金色を出すことができます。これは、銅合金である「黄銅」が生成されるためですが、金の純度が下がると錆への耐性である耐食性や加工性が悪くなることが知られています。
一般に、金の純度がK18〜K24のものが高品位金合金と呼ばれますが、これらは添加されている銀や銅の比率が低く、金の純度が高いため、腐食、酸化、硫化がほとんどおきず、長い時間が経っても劣化しません。金は錆に最も強い金属の一つですが、その性質が遺憾なく発揮されることになります。対して、銀の比率が増えてくると硫化の可能性が増え、銅の比率が増えると酸化、硫化の可能性が増加し、変色することがあります。
イエローゴールドの主要成分
- 金、銀、銅、(ニッケル)、(亜鉛)
()は微量添加されることがある元素です。
グリーンゴールド
金と銀を主要成分としたカラーゴールドで、表示記号はGRGとなります。若干緑を帯びた色合いを持つ金合金です。グリーンゴールド自体は、金−銀の合金ですが、他のカラーゴールドに比べても柔らかく、その硬さはビッカース硬度でHV 80程度までしか出ません。加工に必要な100 HVに届かず、難度の高い加工となります。成分に銀が多いほど、緑色の色調が強く出てきます。金の純度がK18であれば青緑っぽい色になり、K12では白色が濃く出てきます。
グリーンゴールドの主要成分
- 金、銀
レッドゴールド
金と銅を主要成分としています。表示記号はRDGです。銅の割合が大きいほど、赤い色が濃く出てきます。ただし金の純度がK12よりも下がると、全体的に赤銅色と呼ばれる銅自体が持っている赤色に近くなってきます。
こちらはグリーンゴールドとは逆に、硬くなってきます。時効硬化(300℃〜400℃で加熱してからゆっくり大気中で冷ます)により最大で270 HVまで硬度が上がりますが、この状態では加工ができません。溶体化処理(高温で加熱してから水で急冷して室温に戻す)を行うとHVで150程度になるため、この硬さのときに加工を行います。
レッドゴールドの主要成分
- 金、銅
ホワイトゴールド
表示記号はWGとなり、人気のあるゴールドの一つといえます。ホワイト系の貴金属ではプラチナがありますが、価格の問題等から金合金を使わざるを得ない場合でも同様の色合いを出すことが可能です。もともとはプラチナの代用品として開発されてきたという経緯もあります。
成分としては、大きく分けるとニッケル系ホワイトゴールドと、パラジウム系ホワイトゴールドの二系統があります。
ニッケル系ホワイトゴールド
別名ハードホワイゴールドとも呼び、硬めの金合金です。時効硬化のやり方によっては、ビッカース硬度(HV)300〜330近くまで上がりますので、宝飾品としては加工できなくなります。塑性加工ができるHV 240程度にして用いられますが、これには加熱後、かなりゆっくりとした速度で室温まで冷ます必要があります。
現在ではニッケルが金属アレルギーが出やすいとされることから、あまり出回ってはいません。アンティークや古いジュエリー関係ではこの系統のホワイトゴールドが使われていることがあります。主要成分としては、金、ニッケル、銅、亜鉛となります。例えば、K18であれば、金75%、ニッケル17.3%、亜鉛5.5%、銅2.2%となります。
パラジウム系ホワイトゴールド
別名ソフトホワイトゴールドと呼ばれます。現在主流となっているホワイトゴールドで、金−パラジウムの合金か、金−パラジウム−銀の合金となります。金にパラジウムを10%添加すると黄金色が薄まって白色化して見えます。これが15%以上になると明確に白色として見えます。
一方、金−パラジウムに銀を加えると硬度はHV 90程度になり、銀の高い反射率からより美しい白色に見えるとされます。金の純度が低くなるほど添加される元素も増えますが、一般には、金、パラジウム、銀をベースに、ニッケル、銅、亜鉛が成分に添加されることがあります。
ホワイトゴールドの主要成分
- ニッケル系ホワイトゴールド:金、ニッケル、亜鉛、銅
- パラジウム系ホワイトゴールド:金、パラジウム、銀、(ニッケル)、(亜鉛)、(銅)
ピンクゴールド
海外ではローズゴールドとも呼ばれるピンク色、桃色をした金合金です。表示記号はPGとなります。イエローゴールドとなる成分に、パラジウムを2〜3%添加するとピンク色になることを利用したもので、銅の比率を高くすれば赤色の強いピンクとなり硬度も増しますが、パラジウムの比率を上げれば薄いピンク色となり、合金自体の硬度も軟らかくなる傾向にあります。パラジウムを5%以上増やすと白色系の色合いが増え、ピンクゴールドとは認識しづらくなり、ホワイトゴールドの範疇になります。
標準的な金以外の成分組成としては、銅19%、銀4%、パラジウム2%となります。
ピンクゴールドの主要成分
- 金、銀、銅、パラジウム
グレーゴールド
灰白色をした金であり、主要成分は金と鉄となります。表示記号はGGです。一般に、鉄の比率は10%〜25%程度となります。耐食性の問題もあり、グレーの色味を出すのであれば、ロジウムめっきなどの貴金属系のメッキの色味を調整したものも候補としてはあるため、あまり日本では目にすることがないタイプのカラーゴールドといえます。
グレーゴールドの主要成分
- 金−鉄
パープルゴールド
パープルゴールドは金とアルミの合金により可能なカラーゴールドです。AuAl2が赤紫色の様相を呈するため、このような色を金合金で出すことができます。ただ、時間が経つと変色するため、研磨等での手入れが欠かせないという難点もあります。
標準的な組成としては金−アルミの場合、アルミの成分が28%となりK18の金合金に近い純度となります。
パープルゴールドの主要成分
- 金、アルミニウム
ブルーゴールド
グリーンゴールドでも青みを帯びた緑色を出すことができますが、さらに青色のゴールドを出したい場合は、このブルーゴールドとなります。インジウムやガリウムといった希少金属で、これらは工業用途ではなじみのある元素なのですが、一般利用は稀です。インジウムを使う場合、AuIn2という金とインジウムの合金が生成され、ガリウムを使う場合、AuGa2という化合物が生成されることで青い金となります。
- 金−インジウム:インジウムの成分が54%、K12に近い金合金
- 金−ガリウム:ガリウムの成分が41.5%、K14に近い金合金
ブルーゴールドの主要成分
- 金、インジウム
- 金、ガリウム
ブラックゴールド
ブラックゴールドは厳密にはカラーゴールドの定義には当てはまらないもので、というのもほとんどが表面を黒色に見せるためのロジウムメッキやクロムメッキ、緑青などの着色、グレーゴールドの表面を酸化させて黒色膜で覆うなどの手法で色をつけているからです。
表面の着色やメッキで色をつけているものはカラーゴールドの定義に当てはまらず、金合金の成分自体が色を帯びているものにしか当てはまらないと冒頭で述べたとおりです。カラーゴールドはどこで切断しても、色が同じであるべきものですが、こうしたメッキや表面処理によるものは切断すれば中身の色が外側で見えている色とは違いますので、一目瞭然となります。もっともブラックゴールド自体は、それと示す公式な表示記号もないため、金の純度自体しか本来は表示されないことになります。美しい黒色は他の金属で出せますし、どうしても黒色に見せる金を使いたいという場合以外にはあまり選択肢にはあがってこない方法です。
なお、ニエロとも呼ばれることがある黒金とはブラックゴールドではなく、銀、銅、鉛を成分とする銀合金の一種です。
ブラックゴールドの主要成分
- メッキの場合、ホワイトゴールドを中身に使用していることが多い。まれにグレーゴールドを用いる。
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