ダイヤモンドにコーティングをするのはなぜですか。
ダイヤモンドに金属のコーティングが施されているものがあるという話は、ダイヤモンド砥石に詳しい人ならば聞かれたことがあるかもしれません。ダイヤモンドは現在のところ、実用化されている一般的な物質としては最も硬いものですが、何に対しても強い万能の物質というわけではありません。ダイヤモンドにも弱点があります。
一言で言ってしまえば、ダイヤモンドの弱点とは「熱」と「鉄」です。さらに砥石や工具などに利用する場合には、「ぬれ性がない」「化学反応しづらい」という点もメリットだけでなくデメリットとなる面もあります。
ダイヤモンドにコーティングを施すのは、こうした弱点を補うためです。研削盤などの工作機械を用いた高速回転による加工では、ダイヤモンドを用いている工具の表面と、加工しているワークの表面は高温になります。銅やニッケル、銀、チタンなどの金属でダイヤモンドをコーティングすると、研削中の熱が金属のコーティングを伝わるため、ダイヤモンドへダイレクトに届きません。研削中は、ダイヤモンドと加工対象が接触している部分は、時に1000℃を超えることもあり、クーラントを使ってもある程度の温度上昇は防げません。こうした熱がそのままダイヤモンドに伝わってしまうと、ダイヤモンドは早々に硬さを失っていきます。一般に600℃近くから黒鉛化がはじまり、800℃を超えると炭化していきます。
また、熱を逃がすためという他、コーティングしたダイヤモンドはレジンボンドの砥石に多用されていますが、これにも理由があります。ダイヤモンド砥石は、ボンド材(結合剤)の粉末に、ダイヤモンドの粉末をまぜて焼き固めて作りますが、ダイヤモンドはボンドと反応するわけではなく、ただ機械的なグリップのみでボンドに保持されることになります。レジンとは樹脂のことですが、この物質だけではやわらかいため、ダイヤモンドをしっかりと保持しておく力に乏しく、ダイヤモンドの表面にコーティングをすることで個々のダイヤの粒の表面積を大きくし、より保持力を上げるという狙いがあります。
ダイヤモンドホイールやCBNホイールの検査票を見ると、SDCや、CBNCと書かれていることがありますが、この末尾のCがコーティングされている、という意味です。メタルボンドなどの他の種類のボンドでは、特にコーティングしたダイヤモンドを用いるメリットはないため、SDもしくはND、CBNといったノンコーテッドタイプのものが使われます。
スポンサーリンク