ボロン鋼とは|ボロン鋼の特徴、成分、強度、対応するJIS規格、SAEについて
ボロン鋼はB鋼とも表記されます。ボロンとはホウ素のことですが、これとクロムを炭素鋼に添加した鋼材がボロン鋼と呼ばれる鋼種です。鉄鋼材料に加えられる元素にはさまざまな役割がありますが、ボロンは焼入れ性の向上に寄与することで知られる元素です。基本成分としては、ボロンを0.0008%程度添加し、クロムが0.10〜0.20%(合金ボロン鋼の場合はクロム量がさらに多くなります。またベースが合金鋼なのでそれらに必要な元素を含みます)、鋼の五元素である炭素(C)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)、ほかに銅の成分などが制御されています。
ボロン鋼の特徴
具体的には、このボロンを添加することで、熱処理のうち、焼きなまし工程を省略できるようになります。鉄鋼は「成分」と「熱処理」で性質が決まりますが、熱処理には時間・費用がかかるため、いかにこの部分を省略して熱処理したものと同等の鋼材が得られるかという研究が進められてきています。
炭素量にもよりますが、鋼材は焼入れをしてこそ求める性能を発揮させることができる素材です。なかでも、ニッケル・モリブデンなどの高価な元素を添加した「合金鋼」に分類される鋼材は、焼入れによって強靭な性質を持たせることができます。一方、こうした合金鋼は焼きなましも含め、加工と熱処理にコストがはるため、使う場所を選びます。そこでこのボロン鋼の登場です。合金鋼を完全に代替するとまではいきませんが、廉価なボロンのみをわずかに添加するだけで、焼入れ性を向上させ、焼きなまし工程を省略しつつも強靭な鉄鋼材料を得ることが可能となります。
用途としては自動車部品の分野ではよく使われ、特にボルトではよく目にする鋼種です。合金鋼を使うほどのコストはかけらない部位に対して主として低合金鋼の代替鋼材として普及してきました。ボルトの強度区分10.9あたりでもボロン鋼が使われることでコストを下げることが可能です。
この鋼材を使うメリットは、冷間鍛造において真価が発揮されます。冷間鍛造はもともと熱間鍛造、切削に比べて低コストで製造可能ですが、熱処理工程のうち焼鈍(焼きなまし)を工程に挟まなければならないという手間がありました。一般に、冷間鍛造を行う場合、たとえばS45Cでは線材−球状化焼鈍−伸線−冷間鍛造といった工程となりますが、これをボロン鋼に変えた場合、線材−伸線−冷間鍛造とすることができます。コストを削減しつつ冷間鍛造が可能となります。
ボロン鋼の強度
JISでは冷間圧造用ボロン鋼の線材と線としての規格があります。強度についてはたとえば下記のような鋼種では次のように規定されています。
ボロン鋼の材料記号 | 引張強さ(N/mm2) | 絞り(%) | 硬度(HRB) |
---|---|---|---|
|
750以下 | 45以上 | 100以下 |
ボロン鋼の種類|JIS、SAE、メーカー規格
以下に規格上のボロン鋼、メーカー品等の一部を紹介いたします。
B鋼のメーカー、規格 | 材料記号 |
---|---|
新日鉄住金 |
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日新製鋼 |
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JIS規格(冷間圧造用ボロン鋼) |
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SAE規格 | 炭素ボロン鋼
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