カトラリーで使われるステンレスの種類

2021年5月2日更新

もっとも身近なステンレスともいわれるスプーンやフォーク、ナイフといったカトラリー製品に使われるステンレスの種類にはどのようなものがあるか以下に見ていきます。

まず、ステンレスには5系統の大きな種類があり、それぞれを挙げるとオーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系、二相系、析出硬化系となります。

このうち、カトラリーとして使われることのないのは、二相系(オーステナイトとフェライトの混合組織を持つ)と析出硬化系(熱処理によってきわめて高いレベルの硬度を実現したステンレス)ですので、これら以外の特徴を見ていきます。

オーステナイト系
手に入りやすいものが多く、特にSUS304は用途が広く流通性が高いことでも有名です。耐食性に優れますが、加工などで力を加えると硬化してしまう加工硬化が顕著に表れるステンレス鋼種です。低温、高温どちらにも強く、磁石にはつかない、焼入れできないといった特徴があります。
フェライト系
オーステナイトほどの耐食性はありませんが、マルテンサイトよりは耐食性に優れています。溶接性があってそこそこ加工しやすいことでも知られ、クロム含有率が多いタイプのものは、高温でも酸化しません。
ニッケルを含まないので、硫黄を含むガスに対しても高温でも腐食しない特性があります。ステンレスの弱点である塩化物(塩)に比較的強い、焼入れできない、磁石につく(磁性あり)といった特徴を持ちます。
マルテンサイト系
焼入れによって硬さを上げることができるステンレス鋼種で、錆に対する強さというよりは、高強度や高硬度が求められる用途に向いています。 硬さと引き換えに、オーステナイト系やフェライト系に比べると耐食性に劣りますので、錆には注意が必要。高級な刃物鋼としても使われます。

カトラリーに求められる性能は、一定の硬さや熱への耐性、錆にくい、腐食しにくい、使ったときに金属の味がしない(金気がない)、安全でなめらかな口当たりになるよう加工できる、高価すぎない、手入れが容易といった点が挙げられます。こうした性能を満たすことができる材質はあまりなく、ステンレスがその第一候補ともいえます。ただし、光沢や質感は洋白のようにはならない点がデメリットとも言えます。

以下に、カトラリーによく使用される具体的なステンレスを表にまとめました。なお、食器やカトラリーの分野では図面などでお馴染みのJIS規格による材料記号ではなく、18-8ステンレスのように、クロムとニッケルの比率を表示した表記方法が慣習的によく使われます。

カトラリーに使われるステンレスの種類一覧
ステンレス名称 JIS規格名称 系統 特徴
18-8ステンレス SUS304 オーステナイト系 食器やカトラリーで最も使われることが多い鋼種
18-12ステンレス SUS316 オーステナイト系 SUS304にモリブデンが添加されており海水に対しても耐食性向上。塩分に弱いステンレスとしては弱点を強化したタイプとなります。
18-10ステンレス SUS305 オーステナイト系 カトラリーの材質としては高級な部類。加工すると硬くなる性質(加工しづらくなるか、加工不能になってしまうことも)である「加工硬化」と呼ばれる現象が起きにくく、加工性を向上させたタイプ。
18-0ステンレス SUS430 フェライト系 別名18クロムステンレス。ニッケルは含まず、約18%のクロムを含有。ステンレスの中では廉価な部類。フェライト系の代表格。磁性あり
13-0ステンレス SUS410 マルテンサイト系 廉価な部類のステンレス。別名13クロムステンレス。18クロムステンレスよりも耐食性、加工性は劣るが刃物によく使われる。
   

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