SUS304とSUS303の比較と違い|強度や磁性を使った見分け方について

2016年2月15日更新

SUS304は18クロムステンレスとも呼ばれ、ステンレスの中ではもっとも流通しています。一方、SUS303はSUS304に酷似した成分であるものの、硫黄とリンという鋼材にとっては害をなす成分の含有量が意図的に上げられています。これは加工性を向上させる目的で加えられている成分です。

ステンレスは耐熱鋼や耐食鋼としてよく使われますが、大きくは5系統に分けることができ、SUS304もSUS303もオーステナイト系ステンレスに分類されるものです。どちらとも磁石にはつきませんが、加工硬化によって磁性を持つことがあります。

両者ともに引張強さや破壊強度の限界を示す耐力、伸びといった機械的性質を示すパラメータに違いはありません。

SUS304は耐食性、溶接性、機械的性質に優れるステンレスです。一方、SUS303は被削性、耐焼付性を向上させたステンレスのため、加工はしやすいものの、耐食性についてはSUS304に劣ります。また溶接においては硫黄やリンといった成分が多いほどに溶接性が悪くなる傾向にあるため、SUS304のほうが溶接はしやすいことになります。

何も触ることなく目視だけではSUS304とSUS303を見分けることはほとんどできませんが、旋盤などの加工を行った際、切りくずから推定する方法はあります。切りくずは粘っこい材料ほどつながったものになりますので、SUS304の場合は、切りくずが一本につながっていることが多いです。たいしてSUS303は切子は連続してつながらないことが多いです。また、端材などがあり、溶接してみることができるのであれば、それでも判別できることがあります。ただしこれは両者がSUS303かSUS304のいずれかだと分かっている場合です。SUS303のほうは加工性をあげるために硫黄とリンが多く入っているため、溶接性が極めて悪く、うまく溶接できません。

他の系統のステンレスであれば磁性のあるなしで、磁石を用いた見分け方が使えるケースもありますが、SUS303とSUS304の双方はともにオーステナイト系のステンレスで磁性については同じような性質を持つため、前述のように加工性や溶接性を基準に見分ける方法がひとつの方法となります。

両者の使い分けは、どの程度の加工を行うか、という点をまず見ていくのがよいでしょう。

SUS304とSUS303の比較と違い
SUS303 SUS304
耐食性はSUS303のほうが劣る 耐食性はSUS304のほうが優れる
引張強度は520MPa以上、耐力205MPa以上 引張強度は520MPa以上、耐力205MPa以上
溶接性はよくない 溶接性はよい
成分は18Cr-8Ni-高S型(SUS304に有害成分である硫黄を添加して加工しやすくした) 成分は18Cr-8Ni
非磁性のため、磁石にはつかない。(ただし、加工硬化を起こした部分だけ磁性を持つことがある) 非磁性のため、磁石にはつかない。(ただし、加工硬化を起こした部分だけ磁性を持つことがある)
リンと硫黄を添加して加工性を向上させたステンレス 硬くてねばりがあるため、加工性悪い
旋盤で削ると切子は「粉」になる 旋盤で削ると切子は連続した「帯」になる

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