ゴム寿命予測におけるアレニウスプロットでわかること
ゴムやプラスチック等の樹脂材料の分野でアレニウスプロットを使うのは、これら材料が主として温度により劣化する場合でその寿命算定のための耐久試験や劣化の進行度を試算する用途に使われる為です。この試験でわかることは、試験時には高温にして評価品の劣化を加速させ、それを通常使用される温度に置き換えて試算するため、評価試験対象となる材料やその材料を使った製品寿命を比較的短期間の試験で割り出すことができます。
仮に通常使用する温度では劣化して寿命を迎えるのに30年かかる製品であった場合、耐久試験が終わるのにも同様に30年かかってしまいますので、高温にして劣化を人為的に速めて耐久試験を行い、アレニウスプロットを使って寿命の試算を行うという意図があります。
アレニウスプロットとは、端的に言えば、アレニウスの式から導き出されるグラフ(プロット)のことです。アレニウスの式は、ある温度でどれくらい化学反応が進むかを予測する式で次の式となります。
式の記号 | 意味 |
---|---|
k: | 劣化の反応速度 |
T: | 絶対温度 |
E: | 活性化エネルギー(1 molあたり) |
R: | 気体定数 |
A: | 定数(=頻度因子。温度に無関係な定数) |
これを製品寿命やライフの算定、つまり耐久試験に使うのは、次の理由からです。
耐久試験を行う対象物の通常の使用温度が、仮に5℃〜30℃とします。これを人為的に、60℃〜100℃の温度環境におくと、特にゴムの場合、劣化の進行が速くなります。ゴムは硬度が上がってしまう=硬くなってしまうとといわゆる劣化となり、製品を作った当初のばね特性や弾力性、シール性・密閉性といった狙っていた特性を維持できなくなりますので、高温環境においてこの硬化を意図的に速めます。このときの温度を加速劣化温度ともいいますが、この加速劣化温度での劣化の結果を、今度は使用温度域に置き換えてプロットします。
この方法により、例えばゴム劣化に数十年かかるという計算が、アレニウスプロットを使って短時間で割り出すことができるということになります。
ただし、この方法だと温度による劣化は見ることができますが、その他の因子での劣化では算定が難しいことがあります。あるいは劣化反応速度に影響を及ぼす因子をどのように設定するかという難しさがあります。
寿命に影響してくる外部因子だけに絞っても、例えば、ゴム製品であれば温度の影響を大きく受けることはよく知られていますが、他に、オゾン、油、ガス、紫外線、放射線、光、溶剤、ガソリン、特定の薬品、水等へどの程度接触するかという因子によって寿命が変動します。また、機械的な摩擦や振動といったものによる機械的疲労、何らかの力がかかる等でも寿命は変動します。
また、耐久性の指標ともなる何をもって「劣化した」「寿命を迎えた」とするかの定義によっても結果には大きく差異が出ます。
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