混練と混錬の違い
混練と混錬はどちらも「こんれん」と読みます。漢字の持つ意味からは「混練」のほうが正しい表記となるのですが、この違いを説明にするには「練」と「錬」の文字の持つ意味の違いから見ていったほうがわかりやすいかと思います。パソコンの漢字変換でどちらも出てしまうことから意図せずに使っていることもあるかもしれません。
- 混練と混錬の違い|目次
混練の意味とは
まず、混練は配合ゴムを作るための「混練り(読み方:こんねり)工程」のことやその作業のことを意味します。この用語が使われるのは、ゴム製造固有の事情があります。ゴムは異なる種類のゴムをブレンド(専用の機械で練ってブレンド)したり、そのゴムに狙った特性を出させるために各種の薬剤や添加剤を練り込んで作っていきます。
ゴムそのものは他の工業材料と比べて稀有な粘弾性という性質をもつので、タイヤ、ベルト、防振ゴム、ホース、パッキン、ゴムロール、免振ゴム、ゴム靴、ゴルフボール、シーラント等様々な製品に活用されていますが、いずれも生のゴムそのものは強度や性質が弱すぎて使うことができません。
そこで配合表というゴムのブレンド設計を決めたレシピに基づいて「混練り」を行って、製品として耐えうる強度や性能を出すようにゴムをブレンドして作っていく必要があります。
以上は混練が何かということの概説となりますが、ではこれがなぜ混錬ではないのかについて見ていきます。
錬は金属をとかして不純物を取り除くという原義
錬は部首の「かねへん」からも推測できる通り、オリジナルの持つ意味は、金属をとかしてねり鍛えるというものです。部首の反対側にある「旁(つくり)」は「東」ですが、これは元は「柬」(=よりわける)という意味を持つ音符です。つまり、金属をとかして不純物を除去する意味をもつのが、この錬のオリジナルの意味です。
精錬や錬鉄、錬金術といった熟語からもそのイメージが継承されていることが分かります。ただし、そこから転じて、錬自体にも、ねりきたえてよいものにする、ねりあげるという意味も持ちます。このため、錬磨、錬成、修錬といった熟語にも使われます。
問題になるのはこの後者のほうの意味で、鍛練と鍛錬のように、錬と練のどちらも使える熟語が多数存在していることです。
逆に「錬」のほうがしっくりくる熟語には、以下のようなものがあります。以下広辞苑の定義を見ていきます。金属を想起されるものか、どちらかというと文語調や古い用語に多いように思います。
用語 | 読み方 | 意味 |
---|---|---|
体錬 | たいれん | 身体を錬成して強健にすること。 |
精錬 | せいれん | 1.粗金属の純度を高め精製する工程。2.よくねりきたえること。 |
百錬 | ひゃくれん | 金属をいくたびもねって純度を高めること。 |
練は繰り返し手をかけて質をよくすること
一方、いとへんを持つ練るのほうは、くり返し手をかけて質をよくする、きたえるという意味を持ちます。漢字の成り立ち自体は錬と似ており、生糸を煮て不純物を除去する意味からきています。部首の反対にある「旁(つくり)」が音符「柬」(=よりわける)という意味を持つ点も同じです。
原義では生糸からの不純物を取り除くという背景がありましたが、その部分が今では抜け落ち、質をあげるためにきたえる、よくするという意味になっています。
錬と互換性のある熟語も多いですが、練習、練磨、訓練、試練、精練など、今日では練を用いる熟語のほうが多くなっています。
ゴムを練るという具合に、技術分野でも練りの用語としては今日では一般的にこちらのほうが使われるようになっています。
熟語が技術用語の一種であることから、混練と混錬の用法がどちらでもよい、いわゆる互換性のあるものかどうかの定義は辞典類には掲載されていません。ただし、上述の漢字の意味や混練で行っている内容を踏まえると、混錬を使うケースというのは稀であるということが言えると思います。ゴム業界の大半でも、「混練」というのが正式な表記として採用されています。専門用語集や技術書でも混練が採用されていることから、混練を使うほうが良いかと思います。
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