否決と否認、差戻しは何が違うのか
否決(読み方:ひけつ)と否認(読み方:ひにん)の違いは一般の用語と、会社内の決裁システムやワークフローでの用語と意味が異なるので注意を要します。ここではビジネス用語として、稟議や社内決裁を得る場合に使われる意味を掘り下げていきます。
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何に対して承認するのか
否認は差戻しの一種か、決裁権を持たない担当者が申請者の内容に否の判断をして上伸する場合に用いるアクションのひとつなのですが、各企業の社内規程や慣習で使われ方が千差万別ですので、一度所管部門に確認したほうが良い事項です。
例えば、最終的な決裁権者に至るまでの中間の承認を行う各担当も決裁権限があるなら、否決や差戻しの否認を行うことができます。
つまり、稟議中の回覧にて、各回覧者がどのような権限を持っているかでも意味が異なるということになります。簡単にまとめると、下表のようになります。
一般に稟議書については、自分のひとつの前の承認者の意見に対してではなく、申請者の内容に対してYESかNOかの判断を下すことになります。したがって、申請者の案件を通すのであれば、承認となります。反対に、決裁権を持つ担当が通さないと結論付けるのであれば否決となります。
否決の定義
まず、否決(読み方:ひけつ)というのは最終的に決裁権を持つ役職者が、申請されてきた案件に対して「否」と決定することです。 辞書的な意味では、例えば広辞苑では「会議に出た議案を、認められないと議決すること」とありますが、ビジネスで使用する場合、意味が異なってきますので留意が必要です。会議ではなくとも否という決裁をワークフローや稟議書の回覧中に権限を持つ者が最終的に行う意思決定のことです。
例えば、ある取引先との新規取引開始の案件を申請しており、「否決」とされれば、その取引先との売買はできないということで社内的に結論が出た、ということになります。つまり、否となった要因が払拭されるといった新たな状況変化でもない限り、再申請も原則できません。
最終決裁者が行う「承認決裁」の反対の意味、ということになります。議会では可決という用語が使われますが、会社内の稟議や承認申請プロセスでは多数決で行わないものがほとんどですので、最終決裁者の判断として、申請者の稟議・申請内容を認める判断である「承認」を行うか、認めない判断である「否決」を行うと、その案件の結論がYESまたはNOという形で結論付けられるという性質があります。
下図の例では、申請者と決裁者の間に、もう一人承認者がいます。仮に、決裁者が部長として、課長が承認者であり、課長が申請者の内容をOKとして部長にまわしている状態とも見ることができます。部長が承認といえば、申請者の案件はYESと結論付けられ、否決といえばNOと結論付けられるということになります。課長と部長とで意見が違う場合は、部長は課長や申請者への差戻しも可能です。
否認の定義
一方、否認や却下といった場合は、申請した内容に問題があるので決裁者やその承認者の前段階までに承認された内容もいったんすべて白紙に戻して申請者に返却するという意味があります。ただし、この場合は再申請ができる状態で、前述の例でいえば新規取引先との取引開始の申請に対して、社内的に「否」という結論はまだ出ていない、ということになります。
また、冒頭で述べた通り、否認の判断を行う担当者(承認者)が決裁権を持たない場合、申請者が「この会社と新規取引させてください」という申請内容に対して、否認するということは「反対の意見を付けて」決裁権者へまわす、という動きになります。この場合の否認は、差戻とは意味が異なってきます。申請者の稟議内容にNOをつけて次へまわす、という意味になります。
図で示すと以下のケースになります。
決裁権を持つものが否決ではなく否認を使う場合は、否という決裁や結論ではないが、一旦再申請するかもう一度よく検討してほしいというような場合にも使われますが、否認と否決を区別せずに運用している組織や、異なる意味付けをしている企業もあります。
否決と区別して運用している場合は、最終的な結論ではないのですが、いったん申請のプロセスは終了させ、今までの議論・中間での承認内容はすべて白紙にはなりますが、再申請が可能という違いがあります。
一般には、否認とは「否とみとめること。承認しないこと」を意味するのですが、ビジネス用語のうち、ことワークフローや稟議書や何らかの決裁を仰ぐ申請を行う場合はこのように意味が異なることがあります。
差戻しの定義
さらに、否認と却下は「差戻し」との違いはよくわかりにくいのですが、否認も却下も差戻しの一部を構成することがあります。
差戻しとは、決裁者やその承認者の前段階までに承認された内容は状況により保持したまま、問題のある個所の修正や再確認を依頼するために、自分より前のフローにいる任意の相手に、案件を戻すことです。
この場合は、申請プロセスも生きている状態の為、差戻を受けた相手は問題個所を修正するなり、追記コメントを入力するなりにしてそのまま再度申請することが期待されます。つまり、差戻の判断を行った承認者や決裁者は何らかの不備があるので、申請のプロセスは継続したまま、訂正して出しなおすように、という意思表示をしているということになります。
否認、否決、差戻しは、申請プロセスが終了か継続か、最終的な結論か否か(再申請ができるものか否か)という違いで使い分けられている用語となります。
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